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犬を叱るしつけは、根性論の体罰コーチと同じ!?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.19
現在の犬のしつけは、学習理論に基づいた科学的な方法が主流になっているのを知っていますか? イルカのトレーニングは、もうこれが当たり前。なのに犬の世界では、リーダー論や、体罰的なしつけがまだまだ残っています。その理由は何でしょうか(編集部)
この2つは、1980年以前スポーツは科学だ!というワードが広まる前の常識。
でも、現在は「運動中は水分補給が必要」なぜなら「細胞レベルで脱水が起き、運動のパフォーマンスが落ちる。場合によっては生命の危険もあるから」、「うさぎ跳びはやるべきではない」なぜなら「膝を痛めるリスクがある。下半身を鍛えるなら他のいい方法があるから」とされています。
「スポーツは科学だ」、これは「トレーニングは科学だ」、という意味でもあります。
さて、犬のしつけの話です。
犬のしつけは、トレーニングです。で、あれば、「犬のしつけは科学だ」ともいえます。
2000年に入って、犬のしつけは科学的に
この考えは2000年代に入り、遺伝子解析を代表とするさまざまな、科学的な研究が犬になされることで、間違いであることがわかりました。
そこで、それまでの常識は一度忘れて、犬のトレーニングや、問題行動の改善も科学的な方法論を応用していこう。そうした動きが世界的に起こります。
主役に躍り出てきたのは、学習の心理学で確立されていた理論(=学習理論)です。
学習理論は、すでにイルカのトレーニングなどで、応用されていました。
学習理論のエッセンスは、90年代までも犬のしつけに取り入れられてはいたのですが、主役というよりも脇役。「リーダー」になるために応用している、そんな感じだったのです。
リスクのない方法があるのなら、そちらを選ぶのも科学的な・・・
しかし「嫌なことに適切な強さがある、嫌なことが即座に、毎回起きる」という条件が、ひとつでも欠けると、行動の頻度は下がらない。
しかも、その環境から逃げ出そうとする、攻撃性を増す、動かなくなる、といった結果を示す個体も、出てくる。
犬であれば、飼い主を避けるようになる、噛みつくようになる、活力が失われていく。
「嫌なことを起こして行動を減らす」という方法は、そうしたリスクを抱えているということなのです。
うさぎ跳びの例でわかるように他に代わる方法があるのなら、リスクのない方法を選ぶ。これも科学的なアプローチのひとつです。
犬の困った行動に対して昔は叱る方法しか知らなかった。でも学習理論を応用すれば、叱らないでも困った行動は改善に導ける。
であれば、叱らない方法を選びましょう。
天動説vs地動説の論争ではないけれど・・・
スポーツは科学だ!
そういわれ始めて40年。スポーツの世界では、「体罰は100害あって一利なし」と結論づけられてはいるのですが、いまだに体罰は必要と口にするコーチたちがいる。
口をわし掴みにするなどして叱るのも時として必要と主張する人たちは、このスポーツにおける科学的な結論を無視する、体罰肯定論者と同じようなものです。
なんか、天動説vs地動説の話を思い浮かべてしまいますね。
過去の常識を捨てきれない人たちは、いつの時代にもいるということ。
でも心配はしていません、天動説vs地動説の論争が、やがてどうなったかはわかっていますので。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
西川文二氏 プロフィール
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