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考えてみるべきは専門家?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.33

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は、犬に詳しい専門家の人たちが、「しつけ」に関しては本当に正しいことを言っているかどうかはわからない、というちょっとビックリなお話。なぜそのような事態が生じているのでしょうか(編集部)

私が家庭犬のためのしつけ方教室、Can ! Do ! Pet Dog Schoolと立ち上げたのは1999年です。
その頃の思い出話はいろいろとありますが、今回はそのひとつを。
今も昔もいつものペースと異なり、急に問い合わせが増えることがあります。メールが普及していなかった当時、もっぱらの手段は電話でした。
きっかけはテレビです。
いえいえ、テレビで紹介された商品の問い合わせが増える、みたいないい意味でのお話ではありません。
話はその逆です。

テレビの通りにやったら、噛みつかれた

何をきっかけに問い合わせが増えたのか。
みなさんが一様に口にしていたのは、「テレビでやっていた通りにやったら、本気で噛みつかれるようになってしまった」というものです。
室内で飼われる犬が日本で過半数を超えたのは、2003年からです。
1999年からしばらくは、いわば番犬の時代からコンパニオン・ドッグ的な飼い方が主流になっていく、過渡期です。
JAHAの家庭犬しつけインストラクターは1997年から世に出てはいたのですが、全国でも40人いるかどうか。まだまだ、犬のトレーニングの専門家といえば、警察犬の訓練士という時代。
当時、問題のある犬をいい子にするといった趣旨の番組には、訓練士が主として出演していたのです。

問題行動が劇的に変わる方法を見せてください

番組側の意向は、撮影時間内で問題行動が劇的に変わる魔法のような方法です。
犬の問題は飼い主の問題です。
飼い主との今までの関係で、目の前の問題が起きている。問題を解決するためには、それなりの時間を要する。
見た目にすぐよくなったように見える手法は、「罰」を与えることなのですが、罰には難しい条件や弊害があり、虐待にもつながる。根本的な解決にはマイナスとなります。
見た目によくなるように見えても、根本的な解決にならない。結果、前よりひどくなったり、もっと深刻な問題が生じることもある。
命令に従う(服従する)作業犬の育成のために、訓練士たちは不可欠。ただ、家族として迎え入れられた犬(コンパニオン・ドッグ)が目指すのは共生。目的が違えば、その目的を達成するための手段は異なる

よく紹介されていた体罰

仰向けに押さえつける、マズルをつかむ(現在では環境省もやるべきではないとアナウンスしている叱り方・当コラムVol.5参照のこと)、首根っこをつかんで持ち上げる。
当時はテレビでもよく紹介されていました。
もちろん、現在ではそうした番組は皆無に近くなりましたが(残念ながらゼロではありませんが……)、いわゆる昔から犬に詳しいとされている人たちに、体罰を行うように指導されることは今でもあります。
以下はつい先日受けた相談です。
内容は、「一般的なペットショップで子犬を手に入れ、飼い始めたら興奮する、甘噛みをする。そこで、その犬種の専門家(ブリーダー兼ペットショップを営んでいる人物)に相談したら、<仰向けに押さえて、キャンキャン鳴き叫んでも離さないように><噛みついてくるときはマズルをつかんで、これもキャンキャン鳴いても離さないように>とアドバイスされた。言われた通りにやろうと試みたが、改善がみられそうにない。このまま続けていいのだろうか」というもの。
いやはや困ったものです。
しつけに関して言っていることを鵜呑みにせず一度考えてみるべき相手は、ショップ店員、ブリーダー、獣医さんといったいわゆる昔から犬に詳しいと思われている人たちと、昔から何頭も犬を飼っているという自称犬に詳しい人たち、なのかもしれませんね。
実は、その人のアドバイスに耳を傾けるべきか否か。それを確かめる魔法のワードがあるのです。
さて、その魔法のワードとは……。
これは次回のお楽しみということにいたしましょう。
「犬はオオカミと同じで、強いものに従う。だから体罰を持ってしても飼い主が強いことを伝える必要がある」。当時信じられていたことは、現在の犬の研究では否定されている
文/西川文二
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!柴犬ぐらし』(西東社)など。愛犬はダップくん(14才)、鉄三郎くん(10才)ともにオス/ミックス。
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