もしも愛犬が命にかかわるような大きな病気を患ってしまったら、飼い主さんはどうしますか? 病気の治療を受けるという選択肢とともに、「緩和治療」という治療があることを知っているでしょうか?
この記事では、いぬのきもち獣医師相談室の先生が「犬の緩和治療」について解説します。
緩和治療とは?
2002年に、WHOが「人の緩和治療の定義」を次のように改定しました。
「緩和治療とは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理的・社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、適切な評価と治療を行うことによって、苦痛の予防と緩和を行うことで、クオリティ・オブ・ライフ(QOL 生活の質)を改善するアプローチである」
人において、緩和治療とは治療不可能な末期医療の最期を迎えるときに行うというイメージがありましたが、近年では診断時から治療と並行して行われるべきものとされています。
緩和治療が行われるのは、どんな病気のとき?
日本で緩和治療を行う対象疾患は、特にがんを中心に発展しています。犬における緩和治療でも、がんやその他さまざまな病気に伴う苦痛を、可能な限りやわらげてあげることを目指しています。
その治療法も、病気の種類と症状によってさまざま。激しい痛みには「鎮痛剤」を使用したり、がんの治療による副作用をおさえるための治療(たとえば、吐き気が強ければ「吐き気止め」の使用など)をしたり、免疫療法などもあげられるでしょう。
緩和治療のメリット
緩和治療は、病気に伴うさまざまな苦痛を可能な限り軽減することで、愛犬が「そのコらしい」生活を送ることができる、すなわちクオリティ・オブ・ライフ(QOL 生活の質)を保つことがメリットといえるでしょう。
また、人のがんにおいては、早期から緩和治療を受けることで生存期間が長くなったとの論文もあります(動物における報告はまだありません)。
緩和治療のデメリット
一方で、獣医療ではまだ人のように緩和治療についての認識がそれほど広まっていないことや、費用の面などの問題点があることが、デメリットといえるでしょう。
愛犬の緩和治療を考える飼い主さんに、獣医師から伝えたいこと
緩和治療は、動物のQOLを改善することを目指します。愛犬の「そのコらしい生活」を最も理解しているのは、ご家族の方々です。
愛犬をどのようにサポートできるかをご家族だけで悩んで抱え込まずに、病院の獣医師やスタッフとしっかりと話し合って、今後の治療方針を決めていくことが大切だと思います。
(監修:いぬのきもち・ねこのきもち獣医師相談室 担当獣医師)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/sorami