犬と暮らす
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【獣医師監修】犬の骨折の症状と治療法、手術やリハビリケアについて解説
犬の骨にヒビが入ったり折れることを「骨折」といい、犬の骨折の治療には、ギプス固定やプレート、ピンなどを使った外科手術が行われます。この記事では、愛犬が歩けなくなった、痛がるといった骨折の疑いがある場合の対処方法や手術後に犬を安静にさせる方法、リハビリについて専門医の獣医師が解説します。
今井 巡 先生
相模原プリモ動物医療センター第2病院院長
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業
●資格:獣医師
●所属:日本大学動物病院整形外科専科
手術実施症例:各種骨折症例、頸部椎間板ヘルニア(ベントラルスロット)、腰部椎間板ヘルニア、椎体固定他
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)、整形外科、神経外科
犬が骨折する原因
怪我や事故によるトラブル
骨が折れやすい状態だった
犬の骨折と捻挫、脱臼の違いは?
捻挫は、骨と骨の間にある関節を支えている靭帯や関節包などの軟部組織、軟骨が損傷した状態で、骨以外の部分の異常を指します。
脱臼は、関節を構成する骨同士の位置関係がずれてしまう状態のことをいいます。
それぞれの状態によって治療方法は異なるため、動物病院での正しい治療が必要です。
犬の骨折が起こりやすい場所
しかし、最近では室内で飼育されている小型犬が多くなり、高いところからの落下や飛び降りた際の前肢(橈骨尺骨)の骨折が多い傾向があります。
犬の骨折の症状
このため、愛犬が歩けるか歩けないかで判断するのではなく、骨折の疑いがある場合は、まず動物病院を受診することが大切です。
骨折の疑いがある際の救急対応
安静にさせる
このため、犬の骨折が疑われる場合、まずはケージやキャリーにそっと入れて犬が落ち着くのを待ちましょう。
愛犬を落ち着かせている間に、かかりつけの動物病院に電話をして状況を説明し、なるべく体を動かさないようにキャリーに入れたまま動物病院へ連れて行くことが大切です。
犬が歩けない場合(犬をキャリーに入れることができない場合)
このとき、骨折部位をなるべく動かさないように、犬が痛みを感じている側を上にして、骨折をしている部分に体重がかからないように注意してください。
犬の骨折の検査と診断
レントゲン検査と処置
また、骨の折れ方や部位によっては特殊な手術が必要で、かかりつけ医が対応できないという場合も考えられます。こういった場合では、骨折部位が動かないように処置を施してから(不動化)、緊急対応が可能な動物病院に搬送するケースもあります。
犬の骨折の種類と治療
- 若木骨折(骨の一部に亀裂が入って曲がるものの完全に折れていない骨折で、まだ骨に弾力性のある幼齢犬猫に起こる)
- 亀裂骨折(骨に亀裂やヒビが入った状態の骨折)
- 剥離骨折(靭帯や筋肉、腱が急激に収縮することに伴って、骨がはがれ落ちてしまう骨折)
- 開放骨折(骨折した際に皮膚が破れて骨が外に露出する状態で、雑菌による感染症を引き起こすリスクが懸念される)
- 横骨折(骨の短軸に対して30度未満の角度で骨を横断する骨折で、棒を折る様に折れる)
- 斜骨折(骨の短軸に対して30度以上の角度で骨を横断する骨折で、変形につながりやすい)
- らせん骨折(骨折線が骨の長軸に対して螺旋状になっている状態で、治療がしにくい症状であるケースが多い)
- 粉砕骨折/複雑骨折(骨が粉々に砕けた状態で、それぞれの骨折線は互いに連続することはない、また外見が変形することもある)
- 病的骨折(骨にできるがんなどにより骨が弱くなり起こる骨折)
- 圧迫骨折(骨の一部が圧迫されて起こる骨折)
などがありますが、骨折の種類や程度によって治療法は異なります。
骨折治療は、骨折が起こってからできるだけ速やかにはじめることが大切です。
犬が骨折をした場合、何も治療を行わないと、骨がくっつかなくなりぶらぶらしたままの状態になったり(偽関節)、痛みや跛行などの後遺症が出たり、曲がったまま骨がくっついてしまう(変形癒合)などのリスクが生じることがあります。
このため、一見軽症ですぐに治りそうな骨折であっても、ギプス固定や外科手術での適切な治療を受けることをおすすめします。
ギプス固定
手術
手術では、ステンレスやチタンなどのプレートを入れてスクリューで固定する「プレート固定法」や皮膚の上からピンを挿入して固定する「創外固定法」、骨髄にピンを挿入して固定する「髄内ピン法」などがあります。
プレート固定法は再手術を行うこともある
この理由として、プレートは骨折しているときは負重に耐えたり、骨折部を安定化させるために重要な役割を担いますが、骨折が治って骨がくっついた後は、負荷がプレートばかりにかかって骨に負荷がかからなくなると骨が細くなってくるため、再度骨折してしまうリスクが生じることがあるからです。
ただし、必ずしもプレートやスクリューが悪さをするわけではありませんが、判断のためには術後しばらくの間は定期的なチェックが必要になります。
ホームケアとリハビリ
食事やトイレ、散歩での注意点
また、ギプスやテーピングを噛まないようにエリザベスカラーを使用したり、犬の動きを制限して落ち着いて過ごさせるために、獣医師の指示に従いながらケージの中で過ごさせるケージレストが行われることがあります。
食事は、犬が無理な体勢にならないように食事台を設置したり、食べやすいものを与えるとよいでしょう。
トイレは、できるだけ床が滑らないように環境を整えたり、体を支えてあげるケアが必要になる場合もあります。ギプスなどでトイレの体勢が作れないような場合は、おむつの使用も検討してあげましょう。
リハビリテーション
また、疼痛が強い場合や熱感がある場合は、手術部を保冷剤(コールドパック)などで冷やしたり、関節の可動域が制限されている場合はホットパックなどで温めたり、ストレッチングをするなどして歩行の改善を促します。
特に手術後は再度骨折してしまうリスクもあるため、リハビリはかかりつけの獣医師の指示に従って行ってください。
犬の骨折予防
また、交通事故を防ぐためにも、お散歩中はリードを短く持って歩いたり「マテ」などの基本的なしつけを行い、飼い主さんの指示に従うようにすることも大事です。
文/maki
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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