犬と暮らす
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【獣医師監修】子犬のしつけ方~トイレ・噛みグセ・外へのならし方など徹底解説
1. 愛犬のしつけの重要性とは?
犬と人がお互い幸せに暮らすために必要
元々犬という生き物は、長い時間をかけて人間との関わりに喜びを感じながら、共同生活を送れるように適応した生き物です。もちろん、全速力で走り回ったり、好きなところで排泄をしたり、集団で獲物を追ったり狩りをしたりするなどの本能的な行動や習性が全く失われている訳ではありませんが、その本能と同じか、場合によってはそれ以上に、人間の傍で過ごす事で得られる喜びや満足感、そして何よりも人間からの愛情を強く求める気質が備わっています。
一般に多くの飼い犬は特定の飼い主さんのもと、大勢の人間やその他の生き物で構成された社会で、ある程度関わりながら一生を過ごします。それは、近隣住民の方々、お散歩コースで出会う人やよその犬、道路を走る車、公園や道路など公共の施設、ドッグランのような犬も入れる娯楽施設などです。飼い主が「愛犬により多くの経験をさせてやりたい」と願うほど、愛犬と社会とのかかわりはより密接になるでしょう。そしてそれに応じて、愛犬に対する「しつけ」も、より重要になっていきます。
犬にとっての「しつけ」とは?
※以前のしつけは無理強いや体罰に近い方法も多々使われていたようですが、現在の家庭犬のしつけでは、無理強いや体罰は推奨されず、主に犬の好奇心や褒めてほしい欲求などをうまく満たすようなトレーニングに代わってきています。
そして、犬自身にとって「しつけ」は、大好きな飼い主さんに褒めてもらえる習慣や振舞い方を学ぶ機会であり、また周囲の他の人間や、よその飼い犬などと楽しく関わる方法を経験する大切な機会です。そのため、愛犬を楽しませながら「しつけ」のトレーニングができれば、犬にとっても高い満足感を得られる楽しいコミュニケーションとしての役割も期待できるでしょう。
愛犬が、飼い主さんと共に社会の様々な環境に接してたくさんの経験を楽しめるように、そして飼い主さんと共に生涯穏やかな生活を送れるように、愛情ある世話の一環として適切な「しつけ」をしてあげてください。
しつけはいつ頃から始めるのがベスト?
2. 犬のしつけの基本的な考え方とは?
犬の「行動を学習する仕組み」を利用して、トレーニングを行う
動物は、自身の行動や経験によって得られた結果から、それ以後その行動を繰り返すかどうかを学習します。例えば、特定の行動や経験によって有益で楽しい結果が得られれば、以後はその行動を繰り返すようになります。逆に、無益もしくは不愉快な結果が得られると、その行動を避けるようになります。もちろん、実際の動物の行動は、この仕組みに加えて、周囲の状況、その動物の本能的な行動や個々の性格など、ほかの様々な要素が組み合わさって変化をしますが、学習の仕組みの基本はとても解りやすいものかと思います。
現在は、家庭犬のしつけにおいても、もともと動物が持っている「行動を学習する仕組み」に沿って、しつけたい行動を無理なくトレーニングする方法が一般に受け入れられるようになってきました。それは、犬が受ける特定の刺激や犬自身の特定の行動に対して、それぞれに対する決まった経験を飼い主さんが意図的に用意することで、犬の学習を強化し促すような方法です。
「楽しい」と「つまらない」を使い分けてトレーニングする
一方、人の手足を甘噛みするなどの好ましくない行動に対しては、犬がその行動をとりにくくなるような環境の改善や工夫をします。その行動を犬がとった際には、優しい声かけをしない、しばらく無視をするなどその犬が「つまらない」と感じるような不愉快な結果を飼い主が用意することで、犬がより好ましい行動を好んでとるように促すという対応になります。また、ここで体罰や厳しい声掛けをすると、犬に恐怖心を与える事があるので、それらは慎みましょう。
犬の自発的な行動だけでなく、「お座り」、「待て」などの積極的なしつけのトレーニングを犬に繰り返し教え、それに応じて犬が正しく対応できたら、必ず犬が「楽しい」と感じるような嬉しい経験をさせ、人間の指示に従って犬がその行動をとれるように促すことも可能です。
犬は人間との関わりに喜びを感じながら、共同生活を送れるように適応した生き物である一方で、人間からの愛情を強く求める気質も持っています。積極的な遊びや散歩などで、犬が人間に「愛情をかけてほしい」、「かまってほしい」と思う気持ちを可能な範囲できちんと満たしながら、それと並行する形で、個々の犬の性格に合わせてほめ方や対応などに工夫をしながらしつけのトレーニングを進めていくことで、愛犬との絆をより深める事も可能になるでしょう。
ご褒美を効果的に使う
ただし、多くの犬にとっては、より本能的に「嬉しい」、「楽しい」と感じやすい刺激が食に関わる事である傾向があります。そのため、多くのしつけトレーニングでは、より魅力的なご褒美として、おやつなどの食べ物が用いられがちです。しかしおやつは、成長期の子犬や、食事制限が必要な犬には使用できなかったり、与えすぎて太ってしまうなどのデメリットがあります。そのため、ご褒美として使用するのは、通常の食餌として使用しているドライフードなどの方が使いやすい場合もあるでしょう。
ご褒美をあげるタイミングは、コマンド(指示)に従った行動や、適切な場所での排泄など、犬が人間にとって好ましい行動をした直後にしましょう。そして、食べものをご褒美にする場合には、同時にたくさん褒めたり、なでたりなど積極的に接してあげること。これらのことに配慮しながらより効果的なしつけトレーニングを実施することで、愛犬との絆を一層深められるようになると思います。
3. まずはここから「ケージレスト」
「ケージレスト」のトレーニングから始めましょう
まず子犬を休息させる場所として、温度管理がしやすく、人があまり頻繁に傍を通らない場所、例えばリビングや寝室の入り口から離れた奥の方などにケージを設置します。窓際は温度変化が大きいので避けましょう。
次に、そのケージをバスタオルなどで覆って、刺激が少なく落ち着きやすい環境になるように整えます。そして、家に連れてきたばかりの時期~10日間くらいの、特に体調管理に配慮が必要な期間は、子犬をそのケージの中のみで過ごさせるようにしましょう。
積極的な触れ合いを持つのは、給餌や排せつ物の片付けの際などの、ごく短時間のみにするよう意識し、それ以外のタイミングでむやみに鳴いたり騒いだりなどの自己主張をしても、それに応じてかまったり声をかけたりしないようにまずは心がけましょう。
このような対応は、一見すると子犬にとてもかわいそうなことをしているように感じるかもしれません。ですが「人間との生活の中では、要求にこたえてもらえないタイミングもある」という現実を、新しい環境での生活の最初の時期から子犬に経験させられれば、結果的には子犬を混乱させないでスムーズにそのルールを伝える事がしやすくなります。
この、環境変化による子犬への影響に配慮した最初の期間を経過した後には、愛犬への対応やしつけのトレーニングは次の段階に入ります。愛犬とたくさん触れ合いながら、これからずっと人間と楽しく暮らせるように、ぜひ身に着けてほしい基本的な習慣や好ましい行動を、積極的に教えていきましょう。
4. 子犬のしつけ~室内編~
1. ハウスのしつけ方
ここではクレートや丈夫なキャリー、小型のケージなど、犬の「ハウス」のトレーニングの方法をご紹介したいと思います。ハウスのトレーニングの際には、事前の準備として、用意した「ハウス」に犬を十分慣らしておくことが大事です。では、クレートを「ハウス」として用意したとしましょう。
まずはそのクレートを、犬が日常過ごす室内の、なるべく静かで人が通らない場所に置きます。犬が十分クレートに慣れるまでの間は、中に飼い主やその犬自身の匂いのついたタオル、フリースなどを入れておく方が受け入れやすい傾向があります。なお、この時、クレートの扉は空けたままにして、犬が自由に出入りできるようにしておきましょう。好奇心旺盛な犬の場合、クレートの設置後、しばらくすると近づいて外側の匂いを嗅いだり、入り口から中の様子を伺うなど好奇心を示す素振りがみられます。そのような素振りを示したら、クレートの中の入り口に近い所に、少量のフードやおやつなどを置いて与えたり、クレートの中におもちゃを置いてそれを取ってこさせたりなど、「クレートは楽しい事がある場所」と、好印象を持つように促します。
一方、慎重な犬の場合だと、すぐにはクレートに近寄らない事もあるでしょう。そのような場合には、犬を無理にはクレートに近づけずに、まずはそのクレートの周囲で遊んでやったり、クレートの傍に呼び寄せてからごほうびを与えるなど、クレートがそこに在る事そのものから慣らすよう、段階を踏む方が良いでしょう。
数日後、犬がクレートを恐れずに自由にクレートに出入りできるようになったら、引き続きクレートに慣らす事と並行して、「ハウス」の指示の練習をします。
「ハウス」の指示も、このやり方に沿って実施します。まず、犬に「ハウス」と声かけをし、間を空けずにフードなどで誘いながら犬をクレートまで誘導します。そして、フードをそのままクレートの中に入れ、犬もクレートに入るように促し、うまくクレートに入ったらそのタイミングで「いいこ」「Good」などの肯定の言葉を犬に掛け、褒めましょう。なおこの時も、扉は開けたままで練習をします。
犬を、「ハウス」のコマンドでクレートにスムーズに誘導できるようになったら、次は犬が中にいる状態で扉を閉めて、しばらくの間クレートの中に留まらせるように促します。犬にとって受け入れやすい方法としては、クレートの中である程度時間をかけて遊べるような、中にフードやおやつを入れられるタイプの知育おもちゃなどを利用するとよいでしょう。扉を閉め、知育おもちゃに集中している間はその場から少し離れて様子を見て、おもちゃで遊び終わる頃に「よし」「OK」などの声掛けと共に再び扉を開け、犬をクレートの外に出します。
このクレート(ハウス)に入れる時間は、トレーニングの状況と犬の様子を見ながら徐々に長くしてみましょう。
なお、クレートから出した後は、クレートに居させた時間の長さに応じて、5分~20分程度、引っ張りっこ遊びなど体力を使う遊びをして発散させてやるとよいでしょう。この発散させる遊びは、トレーニングの初期で、またクレートに入れる時間が非常に短い間は、さほど長時間でなくてもかまいません。犬自身に「クレートから出たら遊んでもらえる」と覚えさせ、それを習慣づける事で、後々クレート内で過ごす時間がある程度長くなった際に、発散不足から起こりがちなクレート内での無茶ないたずらや要求吠えなどをさせにくくする効果が期待できます。
あとはこの手順を繰り返してトレーニングをしますが、あまり立て続けにトレーニングをすると犬が集中できなくなる場合もあるので、注意しましょう。無理のないトレーニングで、犬が穏やかに「ハウス」で過ごせるように慣らしてあげてください。
2. トイレのしつけ方
犬が決められた場所で排泄できるようにしつけをする事を「トイレトレーニング」と言います。このトイレトレーニングをするチャンスは「犬が実際に排泄をしようとするタイミング」に限られます。そのため、実際のトレーニングを始める前に、あらかじめしつけをしやすい環境が整っている方が、チャンスを逃さずにしつけをしやすくなります。
排泄をきちんとペットシーツの上でさせる(失敗をなるべくさせない)練習が必要のため、トイレトレーニングの際にはトイレシーツを用意した場所に犬を一定時間留まらせる必要が生じます。ですので、トイレトレーニングの際には、「トイレの周囲がサークルやケージできちんと囲まれている環境」がとても重要です。サークルやケージでトイレを囲む際には、トイレの周囲があまり空かない程度の広さにする方が、トレーニングをしやすい傾向があります。
日常的に寝床などとして使用しているケージやサークルをトイレトレーニングに併用する場合は、トイレと、トイレ以外の生活区域の間にあらかじめ柵や扉が設置されているような仕様のケージを利用するか、もしくはケージ内が一時的にそれに近い仕様になるよう工夫をしてみるとよいでしょう。事前の準備を整えたら、実際のトイレトレーニングを始めましょう。
まずは、「決められたトイレで排泄すると、褒めてもらえていい事がある」ことを、犬にしっかり印象付けましょう。
(1)犬が排泄をしようとする様子を見かけたら、抱っこで速やかにトイレに犬を連れて行き、囲いの中に入れます。
一般的に、犬が排泄をしようとする際には、その直前に床の匂いをしきりに嗅いだり、くるくると回りながらお尻を落ち着ける場所を探す素振りをするなど、特有の行動がみられます。この「排泄のサイン」に気づいたら、速やかに用意したトイレスペースに抱っこで犬を入れましょう。この時、犬を歩かせてトイレまで誘導する必要はありません。むしろこの段階では、排泄のサインを見つけた後に最短時間でトイレに連れて行き、「粗相をさせないで、適切な場所で排泄をさせる事」を最優先します。
(2)犬が排泄をするまで、そのまま静かに待ちましょう。
もしも、犬が人間に気を取られて排泄に集中しないようなら、その場から少し離れたところに移動し、静かに待ちましょう。
(3)犬が排泄し終わったら、「いいこ」「good」など、肯定の声掛けをしながらごほうびを与えて犬を褒めましょう。
この時、もしもシーツからはみ出して排泄するなど完璧にうまくいかなかったとしても、やはり同様に褒めるようにします。これは、「決められた場所で排泄するといい事がある」と犬に印象付ける事を最優先するためです。
シーツからはみ出るなどの失敗が続く際には、トイレ周りの囲みの大きさが大きすぎていないか、トイレシーツのサイズが小さすぎないかなど、トイレの環境や仕様を改善する対応をしましょう。また、トイレトレーニングとは別に、トイレ以外の場所で粗相をした際には、決して叱らずに犬を遠ざけてから、静かに片づけをするように心がけましょう。これは、叱ることで犬が、「排泄そのものを叱られた」と勘違いし、人に対しておびえたり、攻撃的に振舞ったり、人の手の届かないような場所で排泄するようになってしまったり、室内での排泄を避けて我慢してしまうなどの習慣が身についたりするからです。また、片付けの際にじゃれついたり声をかけられたりしないようにしましょう。粗相に関連したことでは犬を楽しませないようにする対応につながります。
トイレでの排泄は楽しく、それ以外の場所での排泄は楽しくないと、犬に無理なく印象付ける事が大事です。
ここまでが、トイレトレーニングの第一段階です。飼い主が、犬の「排泄のサイン」にきちんと気づき、一連の対応がスムーズにできるようになったら、次の段階に進みます。
ここでは、「自分の足でトイレまで歩いていき、排泄する事」を教えます。
(1)犬をトイレの少し手前で床に下ろし、トイレまで歩かせてから囲いの中に入れ、囲いを閉じます。
第一段階と異なるのは、犬を歩かせてトイレに入れる点です。ただし、始めから何mもの距離を歩かせようとすると、途中で排泄から気が逸れて遊び始めてしまう場合があるので、始めはトイレの手前で下して、少しだけ歩いてトイレに入る事から始めましょう。その後は様子を見ながら歩く距離を徐々に長くしていきます。なお、このタイミングでは、まだトイレの周りの囲いは取らないで練習します。
対応の(2)および(3)は、第一段階と同様です。
「排泄のサイン」を見つけた後は、速やかにトイレまで犬を誘導し、その後すぐに犬がトイレで排泄するようになったら、トレーニングの最後の段階に入ります。
この最後の段階では、「トイレが囲まれていなくても、トイレと定められたその場所で排泄をすること」を目標とします。
(1)犬が排泄をしようとする様子を見かけたら、トイレまで歩かせて誘導します。囲いの中に入れ、囲いを閉じずに開けたままで排泄をさせます。「排泄のサイン」でトイレまで誘導し、囲いを開けたままで排泄できるようになったら、そこから先は常にトイレの囲みは一部分開けておきます。こうすることで、そこから先は、犬が排泄をしたいタイミングで、自分でトイレに入る事が出来るような環境になります。
また、トレーニングがここまで進んだら、トイレの周りを囲っているものを少しずつ取り除くことも可能です。ただしその際には、一度にすべてを取り除かないようにするほうが良いでしょう。なぜなら、急にすべて取り除いてしまうと、トイレをうまく認識できなくなることがあるためです。環境の変化はあまり急激ではなく、徐々に変化させる方が無難です。
この段階でも、(2)および(3)は、第一段階と同様です。
なお、トイレトレーニングが終了し、犬が自分の意志でトイレに行って排泄できるようになってからも、犬が排泄し終わったら、「いいこ」「good」など、肯定の声掛けをしながらごほうびを与えて犬を褒めるという対応をおろそかにしないでください。なぜなら、トイレトレーニングは、犬自身の「決められたトイレで排泄すると褒めてもらえていい事がある」という信頼の気持ちの上に成り立つトレーニングだからです。犬のその気持ちを満たす事をやめてしまえば、犬にとっては正しい場所で排泄する理由もなくなります。
トイレトレーニングに限らず、犬が自分の意志ではなく人間にしつけられた習慣や行動は「できて当たり前」ではありません。犬の信頼に応え、やる気を伸ばす声かけを心がける事で、より心地よい共同生活を送れるようになるでしょう。
5.子犬のしつけ~屋外編~
1. アイコンタクトのしつけ方
ただし、本来成犬にとって「正面から相手と視線を合わせる」という行為は、争いにつながるような強い緊張や恐怖を本能的に感じさせる行動でもあります。そのため、愛犬以外の犬に、むやみにアイコンタクトを求めたり、トレーニングができている犬に対しても、無意味に長時間じっと見つめるなど、犬を不安がらせる可能性のある対応は避けましょう。
アイコンタクトのトレーニングは、無理なく1秒程度、飼い主さnと愛犬がお互いの顔を正面から見る練習をする事から始め、うまくできたたくさん褒めながらごほうびを与えるなど「飼い主さんと目を合わせると、嬉しい事がある」という経験を繰り返し積むことから始めます。
(1)まず、飼い主さんがフードやおやつなど匂いがするものを愛犬の前で手のひらに乗せ、それをしっかり握り込みます。
(2)飼い主さんは立ったまま身をかがめて、手を開かずにその中のものの匂いを愛犬に軽く嗅がせ、興味を促します。
(3)姿勢を伸ばし、その握った手を顎の下に近づけながら犬の名前(もしくは、アイコンタクト用に決めたコマンド)を犬に言います。
犬はフードが入った手に興味を示しているので、その手が顎のところに近づくと、自然と顔が上向きになり飼い主様の顔を見上げる形になります。
(4)犬が見上げた視線が飼い主の目線とあったら、「いいこ」「Good」など、肯定の声掛けと共に手の中のフードを犬に与えながら褒めましょう。なお、褒めている間は無理に視線を合わさず自然な状態を保ちます。
折に触れてこのトレーニングを繰り返し行う事で、犬は飼い主さんと視線を合わせる事を嫌がらなくなり、「視線を合わせると楽しい事がある」と理解する傾向があります。特に、名前を呼んだ時にすぐに顔を見上げる位に視線を合わせる事に慣れてきたら、「お座り」、「待て」などのほかのコマンドを出している際に、アイコンタクトを意識してみるのもよいでしょう。
2. 犬を外の環境に慣れさせる
犬を家族として迎えた際に、まず最優先されるのはその犬の体調管理と、新しい生活環境に慣らすことです。では、その次には何が必要になるでしょう? トイレのしつけや、「おいで」、「待て」などのコマンドのトレーニングでしょうか? もちろんそれらはとても重要ですが、同じように大切なしつけのトレーニングがあります。それは、「外の環境に慣らすこと」です。
外に慣らすと言っても、犬をいきなり「散歩」に連れ出すことでは決してありません。散歩の前の段階として、室内では経験できない屋外の風や光、匂い、音などの刺激に対して、犬が自然に馴染めるように、無理なく慣れさせるためのトレーニングです。
迎えた犬の月齢にもよりますが、一般には、犬が家に来てから数日~半月程度で室内の生活環境にある程度慣れ、健康状態も安定します。それを確認の上で、次は屋外の環境に慣らす準備を始めましょう。
始めは、一日に数回、室内で遊ばせているタイミングを見計らって5分~10分程度窓を開け、室内に風を入れたり、窓の外の物音が自然に室内に聞こえる状況にし、その際の犬の様子を観察しましょう。もしも住まいの周辺の気候や環境の影響で、短時間でも窓を開けておく事が難しいようなら、これらは可能な範囲で実施されるとよいでしょう。屋外から室内に届く刺激に対して、過剰に興奮したり、過剰におびえたりする様子が見られなくなるまで、このトレーニングを実施します。
ここまでのトレーニングができたら、次は犬を抱っこして、一日に数回、一回5分程度から、屋外の環境に接する時間を持ちましょう。初めは、窓や玄関から出てすぐの場所や自宅の庭などで練習し、慣れてきたら外に居る時間を延ばして、家の周囲やお散歩コースを抱っこで散歩してみるのもよいでしょう。
なおここでは、地面に下ろして歩かせたりなどの散歩のトレーニングまでは実施しません。あくまでも、健康面に配慮をしつつ、犬の気持ちが落ち着いた状態で外の環境を経験することに集中します。ただし、抱っこであっても屋外に連れ出すのであれば、やはりリードと首輪、もしくはハーネスをきちんと身に着ける方が安心です。外に慣らすトレーニングを始めたくらいの時期から、室内でリードと首輪、ハーネスに慣らす練習を並行して実施するほうが良いでしょう。
ここまでできるようになったら、実際の散歩のトレーニングに入る準備がきちんと整った状況です。社会化期やワクチン接種の状況などの健康状態を考慮の上で、ほど良いタイミングから少しずつ本格的なお散歩を始めてあげてください。
3. 子犬を人や犬に慣れさせる
家族以外のよその人や犬に、愛犬を出会わせて慣らすことは、愛犬がストレスの少ない楽しい日々を過ごすためにも、とても重要なトレーニングのひとつです。このトレーニングに特に取り組みやすい時期は、子犬の「社会化期」と呼ばれる生後約2ヶ月齢~4か月齢くらいとされています。それは、この社会化期の時期の子犬は警戒心よりも好奇心が強く、新しい生活習慣やトレーニングなども、比較的受け入れやすい傾向があるためです。
ですが、しつけトレーニングの開始については、絶対にこの時期でなければいけないという事でもありません。また、この時期であっても、個々の犬の性格によってトレーニングの対応には工夫が必要な事もあるでしょう。その犬自身がもともと持っている性格にも十分配慮し、その上で、無理なく可能な範囲で早い時期から、人や犬に愛犬を出会わせるトレーニングに挑戦してみると良いでしょう。
まず、よその人や犬に愛犬が慣れるためには、実際に愛犬がよその人や犬を目にする機会を持つことから始めます。お散歩コースや公園などで、少し離れたところから、よその人や犬を目にする練習をしてみましょう。この時の愛犬の様子を注意深く観察し、それを踏まえて実際のトレーニングの内容を考えます。
もし、愛犬自身が、少し離れた場所にいる人や犬に対して、自分から近寄りたがったり、好奇心があるような素振りを見せるなら、人や犬に慣らすトレーニングは比較的しやすいと言えるでしょう。ただし、ここで気を付けたいのは、その離れた人や犬に対して、「愛犬が過剰に興奮しすぎていないかどうか」ということです。もしも興奮があまり激しいようなら、まずは遠くで慣らしたり、その興奮を鎮めるためのしつけや工夫を優先しなければならない場合もあります。愛犬の様子をよく観察しながら判断しましょう。
よその人や犬にさらに近距離で出会う練習をするためには、その相手にも協力をしていただきます。相手に愛犬を近づけてよいかをまず確認をし、許可を得てから近づけるなど節度のある対応を心がけましょう。
この際、相手に近づくにつれて愛犬が緊張したり、興奮して吠えたりするようであれば、それ以上は近づけずに一旦その場に止まります。「マテ」、「スワレ」などの指示しつけをで犬を落ち着かせるか、その場を離れて犬を落ち着かせ、再度仕切りなおしましょう。
一方、愛犬自身がその離れた人や犬に対して自分からは近寄りたがらず、嫌がったり、怖がったりする様子が見られたら、人や犬に慣らすためのトレーニングには十分時間をかけてあげる必要があると言えるでしょう。愛犬が嫌がらない程度の距離を相手と取りながら、「お座り」、「待て」などの指示しつけで、愛犬の注意を飼い主に向ける練習を繰り返したり、飼い主の友人などトレーニングに協力的な方に手伝ってもらって、ご褒美などを併用しながら家族以外の人に近づく練習をするなど、時間をかけて少しずつならす努力をしましょう。なお、知らないものに対して嫌がったり怖がったりしがちな性格の犬を、抱っこしたままその対象に強制的に近づける事は薦めません。この対応によって、その犬が心理的に負担を感じ、それによって先々のトレーニングを更に難しくしてしまう可能性があるためです。
また最近では、パピークラス(子犬の為のトレーニング講習会)や、犬の為の幼稚園などのような一時預かり施設、複数の方が同時に参加するタイプのしつけ教室など、よその人や犬に接するトレーニングを経験する機会は、以前よりも増えてきている傾向があると思います。愛犬の性格に合わせて、このような有料サービスを上手に活用するのも良いでしょう。犬自身の積極性や気持ちにも十分配慮しながら、よその人や犬と楽しく関われるよう、出会いの経験をさせてあげてください。
6.子犬のしつけ~問題行動編~
1.噛みぐせ
一口に「犬が噛む」と言っても、その噛み方や原因は様々です。ここでは特に、成長期の子犬にみられる「甘噛み」や「噛み癖」についての基本的な対応について取り上げます。
一般に、子犬の頃には口を使った遊びを好みます。興味を持ったおもちゃなどを繰り返しかじったりするだけでなく、子犬同士で遊ぶ際にも、互いに相手の犬を噛んだり、噛まれたりするような行動が多くみられます。子犬はこのような遊びを通じて、強く噛まれたら痛いことや、強く噛んだら相手の犬が遊びをやめてしまったり、喧嘩になってしまったりなど「楽しく遊び続けられないこと」を経験し学習します。
成長期の子犬に対する噛み癖のしつけについても、子犬が経験から学習する過程を応用して実施するのが基本です。それをもっとも簡単に言い表したものが、「子犬が甘噛みをしたら、叱って無視をする」という対応です。これについては、もしかしたらすでにご存知の方も多いかもしれませんね。では、具体的にどのように叱り、そしてどのように無視をするのかについて、さらに細かく考えてみましょう。
甘噛みに限らず、叱ることの目的は、「子犬に今している行動を一瞬中断させ、子犬の注意を一時的に飼い主に向けさせること」のみです。してはいけないことを子犬に完全にやめさせるのは、子犬を叱った後に無視をするなど、子犬の学習を促すような一連の経験をさせることが不可欠です。
実際に叱る際には、
・子犬が、甘噛みなど、してはいけないことをした直後に、
・ごく短い言葉で一言だけ、
・子犬の注意を飼い主に向けるための合図を出す
という感覚で行うと、犬に伝わりやすい傾向があります。
事前の準備として、コマンド(指示)と同様に「イケナイ」、「ダメ」、「NO」など、叱る際に使う言葉をあらかじめ決めておいたり、言い方も厳しくまじめな声で言えるように準備をしておく方が、よりスムーズに叱れるでしょう。また、過剰に怒鳴るのは、子犬が怖がって学習が進まなくなる場合があるので薦めません。
叱られた子犬が、甘噛みなどの好ましくない行動をやめたら、速やかに無視をし始めます。実際の無視の方法としては、その場で無視したり、子犬の傍を離れたり、子犬を一時的にケージに戻したりなど方法は様々ありますが、大事なことは、
・再度噛まれるような状況を避けて
・子犬の方を一切見ないで、声もかけないで
・子犬が落ち着くまで数分放っておく
という感覚で行うと、犬に伝わりやすい傾向があります。
なお、無視している間は、睨んだり小言を言ったり、子犬がかまってもらっていると勘違いするような対応はすべてしないよう心掛け、子犬が興奮している間は一切かまわないように心がけましょう。これらの対応を繰り返す事で、子犬は「甘噛みしたら遊んでもらえなくなる」という事を経験により学習します。
ごく幼い子犬にとっては、噛んでもよいおもちゃなどを噛んで遊んだり、人間とたくさん遊んで発散することは、しつけと同じくらい大切です。子犬に対して、噛んでもよいおもちゃをきちんと用意し、それを噛んだら褒めてあげたり、同じおもちゃを交互に複数使ってボール投げ遊びをしたり、長いおもちゃで引っ張りっこ遊びをするなど、甘噛みをされにくい工夫をしながら十分発散させるよう意識しましょう。発散不足から生じるような激しい甘噛みについてはその頻度を減らせる場合もあります。子犬の発散したい気持ちを十分満たしながら、子犬に理解しやすい方法で「してもよい事」、「してはいけない事」の学習を促すとよいでしょう。
なお、子犬の甘噛みではない噛み癖として、本能的な衝動に関わる極めて攻撃的な噛みつき行動や、または強い恐怖やパニックなどによる突然の噛みつき行動などがみられる事例もあります。もしも、愛犬の噛み付き行動が基本的な甘噛みのしつけのトレーニングでは改善されないようなら、専門のドッグトレーナーや行動療法の専門医などにも相談をして、より愛犬に適した対応の検討や、トレーニングの指導などを受ける事をお勧めします。
2.無駄吠え
犬の無駄吠えとは、具体的にどのような状況を指すのでしょうか? 一般的には、人間との生活において適さない、あるいは迷惑になるタイミングで犬が吠えることを「無駄吠え」と表現します。ですが本来、犬が吠える際には、その犬なりに、明確な理由があることがほとんどです。つまり、人間が「無駄吠え」と判断するような困った吠え癖の行動も、犬の側からすれば決して無駄に吠えている訳ではないというのが実際の状況といえるでしょう。
このことは、無駄吠えのしつけトレーニングをする際のヒントになることがありますので、心に留めておくとよいでしょう。なぜなら、犬が吠える行動そのものに対する対応だけでなく、その吠える理由の部分まで考えを広げることが、無駄吠えに対するしつけトレーニングを、より良い方向に進めていきやすくなるためです。
犬が無駄吠えをしやすい状況としては、
・早朝にケージの中から出してほしいタイミング
・室内にいる際のドアホンや来客
・家の傍を通る車や子供の声などの音の刺激
などが挙げられるかと思います。
早朝の吠えについては、ケージから出してほしい「要求」の行動の一種であることが多いです。通常、犬のしつけトレーニングにおいて、犬の要求に対する基本の対応は、「声をかけない、一切相手をしないで無視をする」という方法です。早朝の無駄吠えが「要求」の吠えの可能性が高いと判断したら、吠えている間は無視をしましょう。
ですが、実際には、その対応だけでは改善が見られないケースも決して少なくありません。そんな時に思い出していただきたいのが、「無駄吠えは、人間にとっては理解しにくい困った吠え癖。でも、犬には吠えるだけの理由がある」という考え方です。
「要求」の吠えの背景にある「吠える理由」が、単なる犬のわがままではない別な理由である可能性について考えてみましょう。
ケージから出してほしいという要求の背景として、
・空腹や排泄などの生理現象による刺激
・早朝の特定の刺激、例えば新聞配達の音などで目が覚めてしまうなどの環境の要因
・もともと運動不足で十分発散出来ていない
・そもそもの要求吠えが起こりやすい生活スタイルになってしまっている
などの要因が関わっていることもあるでしょう。
もしも、そのような理由について思い当たる部分があれば、それらを可能な範囲で改善することで、結果的に無駄吠えに対するしつけトレーニング(この場合は無視をする対応)の効果を大きくすることが期待できるかもしれません。
室内にいる際のドアホンや来客、家の傍を通る車や子供の声などの音の刺激に対する無駄吠えは、強い警戒心から生じている事が多いです。通常、犬のしつけトレーニングにおいて、警戒心が高まっている犬に対する人の基本の対応は「警戒心を持つ対象から速やかに距離を取り、犬が落ち着くよう静かな場所へ誘導する」という方法になります。つまり、刺激に対する無駄吠えが、警戒による吠えの可能性が高いと判断したら、吠え始めるタイミングで犬を呼び戻したり、おもちゃや美味しい食べ物など「警戒するべき刺激以上に魅力的なもの」で誘導し、刺激の届きにくい静かな部屋や、毛布などを掛けて音を遮りやすくしたクレートなどに誘導し、犬が落ち着きやすい環境に移動させるなどの対応がまず必要です。
そして先ほどと同様、無駄吠えを減らすための更なる工夫として、犬が警戒する刺激に対して慣らす工夫をしたり、刺激が少なくなるよう環境を整えましょう。それらを可能な範囲で改善することで、「警戒」による無駄吠えをやめさせることができるでしょう。
刺激に対して慣らす実際の方法としては、警戒する音を録音し、それを犬が遊んでいるときなど、別のことに集中しているタイミングを見計らって小さな音で繰り返し再生するなどの方法があります。
また、環境を整える対応としては、音量の調節や遮音が可能か考えたり、ケージの位置を音が届きにくい場所に変えたり、クレートトレーニングを併用して、音を遮れる隠れ場所として利用したりなどの方法を足してみるのもひとつでしょう。
なお、現実的には、無駄吠えそのものへの対応や、その吠える本当の理由に対して、すべて完璧に対応するのは非常に困難かもしれません。ですが、多少なりとも、現在よりも環境や状況が改善ができないかしっかり考え、できる範囲で工夫や努力をしてみることも大切です。
愛犬が無駄吠えをしてしまう状況の理解や、その際の愛犬の心理を可能な範囲で推し量りながら、無駄吠えを改善できるようしつけのトレーニングに取り組んでいただければと思います。
7. 留守番のしつけ方
可愛い愛犬を家庭に迎えたら、できる限り一緒に過ごしたいと願うのはどの飼い主も同じ気持ちかと思います。ですが現実的には、犬に留守番をさせなければならない状況も多々あるでしょう。犬になるべくストレスをかけないように留守番をさせるためには、適切な準備をした上で、トレーニングを事前にしておく事が大切です。
(1)留守番に適した環境を用意する
なお、ケージの広さとしては、十分な大きさのベッドとトイレおよび、その間にトイレと同じくらいの空きスペースを確保できる程度の広さであることが好ましいです。ケージ内があまり狭すぎると、留守中に排泄の粗相をしたり、犬のストレスになる事があるので配慮しましょう。
(2)用意した環境で、犬一匹だけで過ごさせる時間を持つ
犬を留守番させる場所に入れた後、実際に飼い主が傍を離れている時間は、始めは1~2分程度のごく短時間から始めるようにしましょう。犬が不安がったり、落ちつかない素振りになる前に戻るのがコツです。戻ったら、その環境から犬を出し、褒めてあげましょう。このようなトレーニングを、一日に1回~数回程度、間を空けて実施します。
(3)犬一匹で過ごす事に慣れてきたら、飼い主が実際に短時間の外出をしてみましょう
なお、(2)や(3)のトレーニングの期間や、その後の数時間のお留守番ができるようになってからも、ケージなどの留守番のための環境から犬を出してあげた後には、引き続き10分程度遊んであげたり、お散歩に連れていってあげるなど、発散をする時間を設けると、留守番に伴うストレスが軽減できる効果が期待できます。
いざという時に、犬にとっても、また飼い主にとってもストレスが少なくお留守番がさせられるよう、日々の生活の中で少しずつステップアップするようなトレーニングを心がけましょう。
子犬のしつけは根気よく。上手にできたらいっぱい褒めてあげよう
愛犬が上手に指示どおりにこなせたら、思い切り褒めてあげましょう。愛犬の「嬉しい、楽しい」という感情の動きを、うまく引き出しながら進めてください。
文/紺道ゆあん
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と一部写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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