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【獣医師監修】犬の熱中症~原因と症状、対策、予防法、治療法について解説|いぬのきもち
人と同じように、犬も熱中症にかかります。室内のみならず、散歩時も危険。なぜなら犬は体高が低いため、人よりも地面に近く、高い温度の中を歩いているからです。犬の熱中症は短時間で命に関わることもあるので予防は必須。いざというときのために、応急処置も覚えておきましょう。
この記事の監修

石田 陽子 先生
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
●経歴:ぬのかわ犬猫病院本院副院長/ぬのかわ犬猫病院中田分院院長 など
●資格:獣医師
●所属:日本小動物歯科研究会/比較歯科学研究会/日本獣医動物行動研究会
犬の熱中症の症状は?

犬の熱中症は短時間で進行します。たった数分気付くのが送れるだけで手遅れになることも。愛犬が熱中症にかかったときにいち早く気づけるよう、犬の様子の変化について覚えておきましょう。
程度別 熱中症の症状
軽度~中度 | ・元気がない、ぐったりしている ・食欲不振 ・呼吸が荒い・大量のよだれ ・悪心、嘔吐 ・下痢 |
---|---|
重度 | ・高体温(40℃以上) ・ふらつき ・けいれん ・意識障害 |
重度の熱中症の場合、急性腎不全、播種性血管内凝固、脳障害などが起こる恐れがあり、それによる後遺症のリスクも。後遺症とは具体的に、慢性腎不全、肝障害、脳障害からの神経症状(発作やふらつきなど)があげられます。
犬の熱中症の原因は?

犬が熱中症なりやすい理由
犬は全身が被毛でおおわれているほか、発汗部位は肉球などに限られています。このため人のように汗をかいて体表を冷やし、熱を下げることはできません。汗をかくかわりに口を開けて呼吸(パンティング呼吸)し、唾液を蒸発させることにより体にこもった熱を外に逃がして熱を下げています。
パンティング呼吸がうまくいかない場合、体内に熱がこもり熱中症を発症してしまうのです。犬が熱中症になるリスクとしては以下のものがあげられます。
リスク① 環境によるもの
□ 高温、多湿な環境
高温下はもちろん、湿度が高いと唾液が蒸発しづらくパンティング呼吸がうまく機能しないため、熱中症のリスクが上がります。犬は人よりも体高が低く地面に近いので、人が感じるより暑い環境にいることを忘れずに。
□ 屋外飼育
犬舎の中は換気が悪く熱がこもりやすい環境です。避暑できるスペースを用意し、猛暑日には室内に避難させましょう。
□ 空調を使用していない室内や車内
閉め切った空間では、気温も湿度も急上昇します。愛犬を留守番させる際は、必ず冷房をかけて外出しましょう。また、真夏の車内は冷房を切ると、わずか15分で熱中症の危険レベルに達します。「ほんの数分だから」と犬を車内に置いて出るのは絶対にやめましょう。
リスク② 犬自身によるもの
□ 短頭種(パグやフレンチブルなど)
□ 肥満
□ 老犬・子犬
□ 持病(心臓病、腎臓病、呼吸器系の病気)がある
暑さが影響して息が上がったり呼吸が苦しくなったりする病気の犬はとくに熱中症になりやすく注意が必要です。
□ ダークな色の被毛
黒色やこげ茶などの暗い色の被毛を持つ犬種は、太陽の熱を集めやすく熱がこもりやすいと考えられます。
□ 寒冷地原産の犬種(シベリアン・ハスキーなど)
シベリアン・ハスキーなどの寒い地域で暮らしていた犬は、体毛が厚いため身体に熱がこもりやすく、熱中症になりやすいといえます。
□ 足の短い犬種(ダックスフンドやコーギーなど)
ダックスフンドやコーギーは体高がとくに低いため、地面の熱の影響を受けやすいです。
犬が熱中症になってしまったときの対処法

具体的な応急処置の方法は?
熱中症になった場合の応急処置は、まずは涼しいところに愛犬を移動させます。涼しい場所に移動しても落ち着かない場合は、シャワーやペットボトルなどで水をかけて犬の身体を冷やしましょう。保冷剤などを使用する場合は首・脇・後ろ足の付け根(内股)にあてると効率的に冷やせます。氷水などを使用しても構いませんが、その際は体温が38度を下回らないよう冷やし過ぎにも気をつけて。また、応急処置は犬の意識があるか、ないかで方法が異なるので、それぞれのケースを覚えておくといいでしょう。
□ 犬の意識がはっきりしている場合
飲み込みができる場合は、少しずつ水を飲ませても。ただし愛犬の状態によっては誤嚥(ごえん)や下痢、嘔吐などの原因にもなります。飲ませるときは少しずつ口に含ませ、飲める状態かどうかを確認しましょう。
□ 犬の意識がない場合
保冷材などで体を冷やしながらすぐに近隣の動物病院へ。この場合、処置が早いほど回復率が上がります。受診する際は事前に電話で名前・犬種・症状・到着時間の目安などを伝えておくと、病院側もスムーズに対応でき円滑に処置ができるでしょう。
症状が落ち着いても当日中に病院へ!
応急処置で状態が回復した場合でも、内臓などにダメージが残っていて、後から症状が悪化することが。愛犬の様子が落ち着いた場合でも、必ず当日中に受診しましょう。
犬の熱中症の予防方法と対策に役立つグッズ

先述したように犬の熱中症はわずか数分で症状が悪化するので、何よりも熱中症への対策が肝心です。対策方法は大きく分けて3つ。どれも重要なことなので必ず守りましょう。
室内にいるときの対策
室内にいる際、お留守番させる際には、下記の対策があります。
□ 室温を26℃に保つ
冷房などを使って室温は26℃、湿度50%程度を目安に保つようにして。犬は人よりも暑さに弱いので、人の基準で判断しないようにしましょう。
□ カーテンなどで遮光する
□ 冷却パッドなどを敷き、涼める場所を作る
□ 水入れを数か所に置き、常に飲める状態にする
□ クレートを直射日光の当たらない涼しい場所に移動させる
散歩に行くときの対策
□ 早朝や夜など、日の当たらない時間に行う
□ 愛犬が歩く前に地面に触れて温度を確かめる
日が落ちていても地面(とくにアスファルト)が熱い場合があります。
□ クールグッズを使用する
首に巻く保冷材や冷却効果のある洋服、手持ちの扇風機など、さまざまな機能をもった犬用のクールグッズを利用するのも一案です。とくに被毛の黒い犬は白色など光を反射する色の服を着せた方が良いでしょう。
□ 適度な休憩、水分補給を心掛ける
愛犬が元気そうでもこまめに休憩・水分補給を行いましょう。凍らせたペットボトルは、冷たい水を飲ませたり身体を冷やしたりするのに効果的です。毎回のお散歩に持参できるよう冷凍庫で作り置きしておくといいでしょう。
□ 体調の優れない日の散歩は控える
食欲が落ちているなど、犬の体調が悪い日は熱中症リスクが高まります。真夏の散歩は体力を使うので愛犬が散歩に行きたそうでも無理はせずに散歩を控えるようにしましょう。
毛足の長い犬の対策
□ 適度に毛を短くカットしてあげる
毛足の長い犬は、暑い時期は適度に短くカットすることにより身体に熱がこもりにくくなります。シャンプーなどもしやすくなるので検討してみてもいいかもしれません。ただし、犬種によっては短く刈った後に毛が伸びなくなることがまれにありますので、獣医師やトリマーに相談してから行いましょう。
愛犬が快適に過ごせる環境作りを心がけて!
熱中症というと「真夏に限られたこと」と捉えがちですが、4~6月の春先から初夏にかけても熱中症になるリスクはあります。体が暑さに慣れていなくて、暑さに耐えられるほどの準備がととのっていないことが大きな原因です。人には快適な温度でも、犬にとっては「暑い」こともありますし、年々平均気温も上がってきています。愛犬を熱中症にさせないように飼い主さんが充分気を付けるようにして下さい。
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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