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犬の「分離不安」寂しがり屋との違いは?原因や対処法も

犬の心の病気のひとつ「分離不安(分離不安症)」。今回は、犬の「分離不安」の原因や症状、なりやすい犬の特徴について解説します。自宅でできる対処法や治療法、予防法についてもご紹介しますので、あわせて参考にしてみてくださいね。

荒木 陽一 先生

 獣医師
 プリモ動物病院 練馬院長

 東京農工大学農学部獣医学科(現 共同獣医学科)卒業

●資格:獣医師

●所属:日本獣医がん学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)、救急診療、腫瘍科

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「分離不安」ってどんな病気? 原因やなりやすい犬の特徴とは?

「分離不安」とは、飼い主さんがそばから離れると、犬が病的なまでに不安を感じて、そそうや吠え続ける、物を壊すなどの問題行動を起こす“心の病気”のことです。
ではなぜ、犬は「分離不安」になってしまうのでしょうか。以下のような原因が考えられます。

「分離不安」を引き起こす原因

  • 引っ越しや家族構成の変化、留守番時間の増加など、生活環境が変わった

  • 散歩時間や飼い主さんとのコミュニケーションが不足している

  • 留守番中に恐怖体験をした(地震や雷、大きな物音など)

  • 虐待や放棄された経験がある(保護犬など)

  • 母犬やきょうだい犬と過ごす時間が不十分だった

  • 加齢により感覚機能が衰えた/認知症の疑いがある など

「分離不安」になりやすい犬の特徴とは

室内犬

室内飼いの犬は、飼い主さんとの関係が密接になりがち。そのため、少しでも飼い主さんがそばを離れると、「もう帰ってこないのでは」と不安を感じてしまうことがあるようです。特に、常に飼い主さんが視界にいるような環境だと、犬は「分離不安」になりやすくなるといわれています。

1~2才、7才以降の犬

犬が心身ともに成熟するといわれる1~2才ごろは、「分離不安」に注意したい時期とされています。犬が1頭で過ごす時間を徐々につくるなど、自立心を芽生えさせて予防しましょう。また、耳が遠くなったり、視力が低下し始めたりする7才以降も注意が必要です。
とはいえ、室内犬が増える昨今、「分離不安」予備軍は多いと考えられます。年齢や体格、性別に関係なく、どんな犬でも「分離不安」になる可能性があるといえるでしょう。

「寂しがり屋」との違いとは

「分離不安」と「寂しがり屋」の犬の大きな違いは、飼い主さんの姿が見えなくなって30分後くらいの様子にあらわれる傾向があります。

「分離不安」の犬は、飼い主さんの姿が見えなくなってすぐに不安な気持ちになり、この不安な気持ちは30分後くらいにピークを迎えるとされています。一方、「寂しがり屋」の犬の場合は、飼い主さんが出かけるときに吠えていても、その後すぐにおとなしくなり、飼い主さんの帰宅を察知してまた吠えるというパターンが多いようです。

そのため、留守中の様子をビデオカメラなどに撮ってチェックする場合は、最初の30分に注目してみてください。このタイミングで以下のような様子が見られる場合は、単なる「寂しがり屋」ではなく、「分離不安」になっている可能性が考えられます。

犬の「分離不安」の主な症状とは?

「分離不安」の主な症状(1)留守番中の問題行動

吠え続ける

飼い主さんといるときにはめったに吠えない犬が、留守番中に吠え続けているようなら「分離不安」を疑いましょう。ただし、留守番中だけでなく、ふだんから外の物音に吠える場合は、警戒心によるもので「分離不安」の症状とは考えにくいです。

そそう

いつもはトイレで排泄するのに、留守番時だけそそうするケースは要注意。しかし、いつもより長く留守番をさせたときのそそうなら、トイレシーツの汚れや我慢できなかったことが原因かもしれません。

物を壊す

留守番中に限って破壊行動が見られる場合も「分離不安」を疑いましょう。ただし、ゴム製のおもちゃなど、“噛んでいいもの”を与えて留守番させたときに破壊行動がない場合は、単なるイタズラが原因のケースも。

「分離不安」の主な症状(2)体調の変化

下痢をする

留守番前にしたウンチは適度な硬さだったのに、帰宅後に犬が下痢をしていたら、「分離不安」かもしれません。不安や緊張を感じると、犬もストレスによる下痢の症状が出ることがあります。

嘔吐

「分離不安」の症状がひどいと、不安な気持ちから嘔吐することがあります。これは、飼い主さんがいない寂しさによるストレスが原因でしょう。

震える

犬は不安を感じて震えることがあります。飼い主さんの外出の気配を感じた犬が震えていたら、「分離不安」のおそれが。留守番中の様子は、その場にいないとわからないので、ビデオカメラなどで撮影しておくとよいでしょう。

硬直する

不安な気持ちから筋肉が収縮し、体が硬くなることもあります。なかには、飼い主さんが外出する気配を感じただけで、体をこわばらせる犬も。

足元をなめる

不安な気持ちを解消しようと、自分の足先をしきりになめる犬もいます。帰宅時に犬の足を触って、ぬれたり湿ったりしている場合は要注意です。

用意したフードをまったく食べない

フードやおやつを用意して外出したのに、帰宅してみると一切手をつけていない場合は、不安な気持ちが強く、食べる気になれなかったのが原因かもしれません。ただし、単におなかが空いていない場合や、ほかの病気が原因のケースも考えられます。

犬が「分離不安」になったときの対処法とは?

体調不良の症状はなく、軽度の「分離不安」の場合は、飼い主さんが対応を工夫することで克服できることもあります。

短い時間から1頭で過ごさせる

軽度の「分離不安」の場合、飼い主さんの外出と不在に犬が慣れるように、留守番の練習を地道に行いましょう。

留守番の練習法

  1. 飼い主さんがドアを閉め、部屋に犬を1頭だけにします。最初は5秒、10秒と短い時間でOKです。

  2. 犬が1頭でも問題なくいられる間に、ドアを開けて犬と対面してください。

  3. 徐々に時間を延ばし、犬だけでいることに慣れさせましょう。
犬から離れるときも、帰ってきて接するときも声かけなどはせず、当たり前のように静かに対応するのがポイントです。

留守番中に寂しくならないよう工夫する

外出する際は、犬が大好きなおもちゃを用意してあげましょう。また、ラジオやテレビをつけておいたり、飼い主さんのニオイがついた洋服や毛布などを与えたりして、犬が寂しくならないように工夫してあげてください。

※おもちゃや洋服を与える場合は、誤飲・誤食の心配のないものを与えてください。

サプリメントやリラックス音楽を取り入れる

サプリメント

「分離不安」の自宅での対処法として、犬用のサプリメントを取り入れる飼い主さんもいるようです。カゼインやカノコソウ、テアニン、ギャバ(GABA)などが、精神を安定させる効果が期待できるといわれています。

リラックス音楽

人が聴いても犬が聴いてもリラックスできるといわれている周波数「528Hz」。この周波数を含む音楽を犬に聴かせて留守番させている飼い主さんも少なくないようです。犬用のCDとしても販売されているので、気になるかたはチェックしてみるとよいでしょう。

犬の「分離不安」の治療法とは?

椅子に隠れるダルメシアン
Image Source/gettyimages
犬の「分離不安」のうち、体調に異変が見られる場合は、飼い主さんの力だけでは解決できない段階になっていることがほとんどです。行動学や問題行動に詳しい獣医師がいる動物病院を受診することをおすすめします。

では、犬が「分離不安」になると、どのような治療が行われるのでしょうか。

行動療法

行動療法とは、犬が起こしてしまう問題行動を、動物行動学と獣医療の両面から診察して治療する方法のことで、獣医師と飼い主さんが二人三脚で行います。

ただし、犬の問題行動の原因を探し、治療法を提案するのが獣医師の役割で、治療そのものを実践するのは飼い主さん自身です。「分離不安」の場合は、犬が1頭になっても問題行動を起こさなくなる練習などが行われます。

なお、この行動療法は、後述する薬物療法と併用して、または、薬物療法の前に行われるのが一般的です。

薬物療法

「分離不安」の薬物治療では、不安な気持ちを軽減する効果が期待できる「塩酸クロミプラミン」などの精神安定剤が処方されることがあります。また、様子見で回復することもありますが、吐き気がひどい場合は制吐剤などが処方されるケースも。

犬の「分離不安」を予防する方法とは?

犬の「分離不安」は飼い主さんが接し方に工夫すれば、ある程度予防することもできます。

在宅中でも愛犬をかまわない時間をつくる

飼い主さんが用事をしているときなどは、犬にかまわないようにします。見ない・触らない・声をかけない時間を意識的につくり、1頭でも落ち着いていられる犬にしましょう。

また、ゴム製のおもちゃの中におやつを詰めたり、塗り込んだりして与えるのもおすすめ。これを繰り返すことで、「1頭で遊んでいても楽しい」と犬に教えることができるでしょう。

指示しつけ「マテ」で離れる練習をする

「マテ」の指示を出して離れることも、「分離不安」の予防法のひとつです。最初は1歩離れる程度にし、徐々に離れる距離を延ばしていくのがコツです。

愛犬の心の健康のためにも適度な距離感を保つことが大切

シニアボーダーコリーの犬で、里親の家で、神経の表情でカメラを見て救出した。採用されました!
Photography by Adri/gettyimages
犬の飼い方の変化から、飼い主さんが愛犬に依存しすぎてしまい「分離不安」を引き起こす例が増えているようです。愛犬の心の健康を願うなら、“常に抱っこしている”“いつも体を触っている”などの接し方を見直し、適度な距離感を保つようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2008年8月号『もしかして分離不安かも?』(監修:武内ゆかり先生)
監修/荒木陽一先生(プリモ動物病院 練馬院長)
文/ハセベサチコ
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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