犬がストレスを感じたときや、相手を落ち着かせようとするときにみせる「カーミングシグナル」を知っていますか?カーミングシグナルは、犬の「イヤですサイン」ともいわれています。そんなカーミングシグナルについて、獣医師の菊池亜都子先生に教えていただきました。
カーミングシグナルってなに?
人が恐怖を感じたときや、緊張したときに、手をぐっと握ったり、頭をかいたりすることがありますが、犬がするそのようなしぐさを「カーミングシグナル」と呼びます。
犬は、ストレスを感じている自分や、ほかの犬や人の気持ちを落ち着かせようとするときにカーミングシグナルをみせるため、カーミングシグナルは犬の「イヤですサイン」ともいえるでしょう。
カーミングシグナルにはどんなものがあるの?
日常生活でみられやすい「イヤですサイン」をご紹介します。
状況によって違う意味をもつことがあるため、愛犬の表情や体全体をよく観察し、そのときの状況とあわせて総合的に判断するようにしましょう。ひとつのサインだけにとらわれないようにすることが大切です。
体をブルブルと振る
抱っこやお手入れなど、嫌なことを我慢した直後に「やっと終わった」という気持ちから体を振ります。緊張で硬直した体をほぐす意味も。
体をかく
長時間のトレーニング中や、飼い主さんの指示が理解できずに困惑しているときに行います。前足をなめたり、かじったりすることも。
しっぽを振る
怒っている飼い主さんなどに対して、自分を無邪気にみせ、落ち着いてほしいと伝えています。
オスワリをする
ストレスを感じると、冷静になるためにオスワリすることがあります。また、警戒されている犬に対してオスワリすることで「攻撃しないから攻撃しないでね」と伝えている場合も。
フセをする
立場が上位の犬が、緊張状態の下位の犬に攻撃しないことを伝えたり、複数の犬で遊んでいるときに、一番余裕のある犬がほかの犬を落ち着かせたりするためにフセをすることがあります。
地面のニオイをかぐ
苦手な犬がいたときや、トレーニング中に地面をかぐのは、ストレスを感じているかもしれません。「ニオイをかいでいるからかまわないでほしい」と相手に伝え、その場を切り抜けようとしています。
間に割って入る
人や犬の距離が近いと、「ケンカが始まるかも」と感じ、間に入ってなだめようとします。人同士がケンカしているときに間に入るのは、「ケンカしないで」というサインかもしれません。
あくびをする
犬自身が冷静になるための行動です。動物病院やお手入れなどの際によくみられます。こわばった表情筋をリラックスさせている場合も。
おなかをみせる
犬にとって、おなかは急所です。急所をあえてみせることで「攻撃しないで」と下手に出て、自分と相手の緊張状態をやわらげたいと思っています。
舌をペロッと出す
舌を出したり、鼻や口のあたりをペロッとなめたりするのは、苦手な状況で自分を落ち着かせるためにしている行動です。
目をそらす
目をじっとみることは、攻撃の意思表示になるため、初対面や苦手な人や犬に対しては、目をそらして敵意がないことを伝えます。
頭を低くして腰を上げる
犬に対して走りながらこの姿勢をとるのは遊びに誘っていますが、この姿勢のまま固まって相手をみているときは「遊びたいけどちょっと不安」という気持ちの表れです。
弧を描きながら近づく
相手にまっすぐ近づくのは「攻撃する」という気持ちの表れに。そのため、初めての犬や人に対しては攻撃するつもりがないことを伝えるために、弧を描きながら近づきます。
半目になる
目を細めることで、苦手な相手に「私も注目しないから、あなたも注目しないで」と伝えています。嫌いなお手入れなどを我慢するときにこの表情になることも。
背中を向ける
脅威を感じる相手や、興奮しすぎている相手に「私は関係ないですよ」「落ち着いて」と伝えています。人から犬に対しても有効なので、犬に落ち着いてほしいときにやってみましょう。
固まる・ゆっくり動く
初対面の犬などに対し、すばやく動くと相手を警戒させるおそれがあるので、相手を刺激しないようゆっくりと動いたり固まったりして、攻撃しないことを伝えています。
オシッコをする
人が緊張でトイレが近くなるのと同様に、犬も緊張するとオシッコがしたくなります。このサインはとくにストレスが強いときに出やすいです。
「イヤですサイン」を知る3つのメリット
不要なストレスを回避
「イヤですサイン」を知ることで、与えなくていいストレスを避けることができるでしょう。
愛犬との絆がアップ
愛犬のストレスに気づき、避けてあげることで愛犬の飼い主さんへの信頼度が高まるため、今までよりも絆がアップするでしょう。
人でも応用できるかも?!
背中を向けたり、目をそらしたりなど、カーミングシグナルの中には、飼い主さんも使えるサインが多いです。愛犬に「落ち着いて」と伝えることができるので、興奮しすぎたときに行うことで、愛犬を冷静にできるかもしれません。
カーミングシグナルは状況とあわせて見極めることが大切です。愛犬の出すサインを見逃さないようによく観察し、より絆を深めていきましょう。
お話を伺った先生/菊池亜都子先生(獣医師)
参考/「いぬのきもち」2019年9月号『愛犬の気持ちを知るヒントになる!愛犬の意外な“イヤですサイン”に気づこう!』
文/山村晴美
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。