犬と暮らす
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「そのコ、そのコにしっかり寄り添えるように」 7頭の保護犬たちとの日々を綴った『たまさんちのホゴイヌ』が話題に!
長年にわたって犬と猫の保護活動に携わってきたtamtam(タムタム)さんの著書『たまさんちのホゴイヌ』(世界文化社)です。tamtamさんはいぬのきもちWEB MAGAZINEでの連載も担当してくださっていました。
10月28日に出版され、早くも重版が決定するほど話題になっているんです!
初めて飼い始めた犬は、なかば飼育放棄されていた「おばあちゃん犬」。愛犬シロさんと出会い、看取るまでの日々を綴ったtamtamさんの連載。ファンの方たちも一緒に笑って泣ける、記憶に残るお話の数々に、読者のみなさんからたくさんの応援のコメントをいただいた大人気連載でした。
著書『たまさんちのホゴイヌ』出版のきっかけ
「今回出版させていただいた『たまさんちのホゴイヌ』は、SNSに投稿した漫画を集めてもらったものです。7頭のホゴイヌと、7つのテーマに沿ってお話をしています。
保護や愛護と聞くと、一般的には暗くて重たいイメージがあると思います。私はやはり彼らと一緒に生活するのが楽しいからこそ、この活動が続けられているんだと思うんです。
保護や愛護というのは、実は楽しいことも、おもしろいことも、嬉しいこともたくさんあるんだよ! ということを伝えたくて、書かせていただきました」
「SNSを始めてからすぐは、絵も文章も本当に下手で…(いまでも下手ですが)。それでも、誰かの心に届くということを知りました。
だからこそ、細かい表現や言葉に『心』がちゃんと込もっているかどうか何度も読み返したり、家族や子どもたちにも読んでもらって感想を聞いたりしながら考えています」
「絵も文章もまだまだ難しいです。なので、『どのようにして生まれたか』と聞かれると、難しいですね(笑)。やはりその都度共感して、支えてくれるフォロワーさんたちの存在のおかげで少しずつできあがっている気がしています。『もっとこうしよう!』『ここはこうじゃなくてこう!』と」
tamtamさんの保護活動への気持ち

「実は保護活動を始めようと思って始めたのではなく、5〜6年前に知り合いのトレーナーさんから『保護した子猫をしばらく預かってほしい』と頼まれて、『それなら里親さんまで探すよ〜』と…、自然な流れがきっかけでした」
「以前、私は公益財団法人の保護施設で職員として勤務しており、その後、個人として預かりボランティアをするようになった経験があったので預かりをするのに抵抗はありませんでした。そのコたちを譲渡したあとも、ちらほらと多頭飼育崩壊の手伝いや保健所でのレスキューなども受けるようになりました。現在は動物病院に勤務しています。
これまで里親さんを探すお手伝いをしてきましたが我が家に来たコは全力でお世話し、必ず幸せになれる里親さんに繋げるという一心で取り組んでいます」

「我が家のコたちと、新しい家族を探しているコたちを含め、現在は9頭のコたちと暮らしています。『多頭飼育で楽しそう!』と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、常に入れ替わり立ち替わりで、10頭以上が生活している我が家の生活は過酷です。
早朝のごはんや散歩、掃除から始まり、寝る前もトイレ掃除で終わります。お世話だけするのでは意味がないので、それぞれのコたちのメンタルケア、健康チェックも欠かせません。
よく『このコたちは保護されて幸せね』なんて声をかけてもらうのですが、実際には10頭もいたらみんなに平等に愛情を注いであげられているのかどうか、難しいと感じています。だからこそ、そのコを一心に愛してくれる新しい家族の元へ届けるまでが、私の活動だと思っています」
「保護施設で勤務していたとき、保護依頼の相談は毎日止むことがありませんでした。そのときに、いろいろと思うことがありました。
アニドネさんは日本では珍しい『中間支援組織』であり、動物福祉に対してかなり力を入れていらっしゃいます。本の売上を寄付することにしたのは、『犬や猫が人とより良い形で共存できるように考えていく必要がある』という考えを多く広めたいと考えたからです。小さな力でも一人一人、みんなでサポートできるようになればと思っています」
いぬのきもちWEB MAGAZINEでの連載を振り返る

「シロさんのお話は本当に多くの方から気にかけていただき、毎回多くのエールをいただいていました。普通のどこにでもいるような白い雑種の、どこにでもいるような老犬が、驚くほど多くの方から愛されて…これって、本当にすごいことだなぁと感じていました」
「シロさんのお話は103話あって、そのすべてが私のなかでは大切な思い出です。そのなかでも印象に残っているのは、92話〜94話はシロさんを看取るシーンをそのまま書いたお話です。生きること、死ぬこと、私の素直に感じたことをそのまま残しています。
いま見てもきっと泣いてしまうと思うのですが、多くの人に見てほしいと思っています」
「シロさんは私にとって、時として母親のような存在であり、時として手を焼く我が子のようで、時として愛らしくてたまらない恋人のようで…そんな存在でした。
シロさんが亡くなってから2年経ちますが、いまでもかけがえのない存在で、元気がないときとか落ち込みそうになったら、写真や動画を見て元気をもらうんです。
きっと人の悩みなんて、犬からしたら本当にどうでもいいことなんですよね。そんなことをいまでもシロさんから教えてもらっていて、支えられていると思います」

ファンの方々からの声で印象に残っていること

「『いま一緒に暮らしているコがものすごく愛おしく感じる』というような声が一番多い気がします。
ほかにも、実際に『保護犬を迎えました!』というお声もあれば、『犬を飼おうと思っていたけど、もう一度家族で考え直す良い機会になった』などと言ってくださる方もいました。飼うことだけが動物愛護ではないと思うので、私の発信を通じて、ひとりでも多くの方がしっかり考えてくれるきっかけになったのなら、本当に嬉しいです」
tamtamさんにとって、犬はどのような存在なのか?

「犬はすごくシンプルに“犬”という生き物です。犬は口でものをくわえ、吠えて感情を表し、マーキングのおしっこをすることもあります。
書籍にも書いていますが、“犬”は迎えた瞬間から“家族”になります。家族には家族のルールを教えなければいけません。そして私たちも、犬から多くのことを学びます。そうやって関係を築いていって、『かけがえのない家族』になっていくと思うんです」

「犬にはいろんなコがいます。一緒に生活していると、そのコの本質が見えてくるのではないかと思います。怖がり、寂しがり、甘えん坊、臆病…私にとって、それはすべて『愛される理由』に必ず繋がると思います。
“犬”を一括りにせず、そのコそのコにしっかり寄り添えるような社会を目指していきたいですね」

取材・文/凛香
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