愛犬をひとつのパーツに注目して観察したことはありますか? パーツに注目すると、ふだんは気づかなかった動きや感情に気づけることも。今回は、「耳」と「口」の機能や、そこにあらわれる犬の感情について、獣医学博士の増田宏司先生に教えていただきました。
【耳】顔のパーツのなかで、いちばん感情が表れやすい!
犬の耳はさまざまな方向に動かすことができ、広い範囲の音を聞き取ります。左右の耳をそれぞれ違う方向に向けて音をもれなくキャッチしようとする様子もよく見られます。犬は人よりも約6倍も聴力があると考えられ、とくに人には聞こえない周波数音を聞き取れるのが大きな特徴です。
耳の筋肉が発達しているため自由自在に動く
自由に耳を動かせる、犬ならではの気持ちアピール
犬は耳の倒れ具合によって感じた気持ちの大きさを表します。飼い主さんになでられ、耳を完全に倒すときは「どうぞ触ってください」という信頼を表しています。一方で、恐怖を感じたときに「降参」のサインで耳を倒すことも。どちらの感情で倒しているのか、犬の表情や体勢で見きわめましょう。
ふつう
立ち耳タイプの犬は、ふだんは真上へ向かって耳を立てている
少し倒れる
耳が少し倒れた状態。表情が明るくて、しっぽを振っていれば、喜んでいるサイン。うなったり、犬歯を見せる場合は怒っているとき
全部倒れる
飼い主さんとのスキンシップのときに耳が全部倒れるのはリラックスしている証拠。しっぽを丸めて口を閉じているときは「降参」を意味している
耳の動きを見て気持ちをチェックしよう
イラスト/iso sayaka
物の好き嫌いに応じて耳が傾くことも多くあります。好きなおもちゃを見せたときはピンと立ったり、苦手なお手入れ道具には耳と耳の間を狭めたり。いろいろなものを見せて、愛犬の耳がどんな動きになるかチェック!
【口】口角を上げた“スマイル”は、人への共感力から生まれた!?
犬の舌は、味を感じる「味蕾(みらい)細胞」が人に比べて約5分の1しかありません。感じるのは酸味、塩(辛)味、甘味などの味といわれています。犬は人との生活で肉食性から雑食性へ変化。ただ、味蕾細胞は犬が2000個程度なのに対し、人は約9000個と差があります。
人間のように複雑な味覚はない
犬は人と同じことをしようとする動物
犬は人との暮らしで、“共感力”をみがいてきたといわれています。たとえば、飼い主がくつろいだポーズでいると、愛犬も体勢をリラックスすることがありますが、これも犬の共感力のひとつ。犬が口角を上げて笑っているような表情をとるときは、きっと飼い主さんも楽しそうな笑顔を浮かべているはずです。
飼い主さんが楽しそうなら、愛犬も口角が上がりやすい
笑いかけてみて表情の変化に注目しよう
イラスト/iso sayaka
愛犬がふだんどおりの表情をしているときに、飼い主さんが思いっきり笑顔を浮かべて目を合わせてみましょう。信頼している飼い主さんの笑顔を見て愛犬も楽しい気分に共感しはじめ、次第に表情を変えていくはずですよ。
いかがでしたか? 「犬は感情表現が豊かでストレート。いろいろなパーツを使って、自分の気持ちをアピールしてきます。これからも、愛犬の気持ちの動きに注目しながら、観察すると楽しいですよ」(増田先生)。
お話を伺った先生/獣医師、獣医学博士 増田宏司先生
参考/「いぬのきもち」2022年8月号『犬の自由研究にトライ!』
写真/佐藤正之、尾﨑たまき
イラスト/iso sayaka
文/西野 泉(ウィル)