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「若くてもかかる、 あっという間に失明」 犬がかかりやすい白内障と緑内障の話

目の病気は、愛犬のいちばん近くにいる飼い主さんがサインを見逃してしまうと、気づいたときには進行していることも。今回は、犬がかかりやすい「白内障」と「緑内障」について、獣医師の増永朗先生に教えていただきました。


【白内障】若くてもかかる可能性大!

若くてもかかる可能性がある白内障って?
若くてもかかる可能性がある白内障って?

水晶体が白く濁って目が見えにくくなる

水晶体のたんぱく質がなんらかの原因で白く濁る病気。視界はぼやけますが、光は失わないのが特徴です。シニア期に多い病気のイメージですが、犬では若くても発症しやすいです。糖尿病など他の病気と併発することも。

<老齢性白内障の特徴>
・6才以降に発症する
・進行は比較的ゆっくり
・犬種にかかわらず発症しやすい

<若年性白内障の特徴>
・6才ごろまでに発症する
・進行が比較的早い
・遺伝的にかかりやすい犬種がある(アメリカン・コッカー・スパニエル/トイ・プードル/ヨークシャー・テリア/キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル/ミニチュア・シュナウザー/柴/ゴールデン・レトリーバー)

白内障の進行度は4段階

●初発期
目の一部がうっすら白っぽくなる時期。視力はまだ落ちていないうえ、見た目にはわかりにくいので、飼い主さんが気づかないことも。
●未熟期
目の一部がはっきりと白く濁る時期。見た目の変化から気づく飼い主さんも多いが、すでに視覚障害が出始めていることが多い。
●成熟期
目全体が真っ白に濁る時期。進行が早い場合、このころに水晶体が破裂し、強い痛みを伴うぶどう膜炎を併発しやすくなる。
●過熱期
水晶体のたんぱく質が溶け、目の中に多く漏出する時期。重度のぶどう膜炎や緑内障などを併発する。手術での完治が手遅れになる場合も。

予防法はナシ 定期的な健康診断での早期発見が大切

残念ながら、現在のところ予防法はありません。かかりやすい犬種やシニア犬の飼い主さんは、明るい場所で角度を変えながら、愛犬の目が白っぽくないかをチェックしたり、目の健康診断で早期発見に努めましょう。

点眼で進行を遅らせたり、 白くなった部分を取り除く手術をする

未熟期くらいであれば点眼薬で症状を抑えます。点眼の効果がなく、物にぶつかるなど生活に支障が出る場合、白濁したたんぱく質を超音波で吸引し、人工水晶体を入れる手術を行います。難しい手術ですが、成功すれば、元どおりに見えるようになります。

【緑内障】あっという間に失明することも!?

失明の危険もある緑内障とは?
失明の危険もある緑内障とは?

眼球内に液体がたまり、眼圧が異常に高くなる

角膜などに栄養を届ける液体(房水)が隅角(目の中に栄養を与える房水を目の外に排出する場所で、眼圧の調整を行う器官)から排出されずに目の内側にたまり、最終的には失明する病気。目の奥の視神経が圧迫され片頭痛のような痛みが出たり、まばたきが多くなるなどのしぐさも出ます。急性の場合、数時間で失明することも。ぶどう膜炎などほかの病気が原因となるケースも多いです。

<なりやすい犬種>
柴/アメリカン・コッカー・スパニエル/イングリッシュ・コッカー・スパニエル/バセット・ハウンド/ボストン・テリア/シー・ズー など

緑内障の進行度は2段階

●急性期緑内障
発症してすぐの段階。充血したり、強い痛みが出て目を気にするしぐさが見られます。この段階で気づいて動物病院で受診すれば視力を維持することも可能なこともあります。

●慢性期緑内障
眼圧が高いまま時間が経過し、視力を失った段階。この時期になると緊急で治療をするというよりも、おもに痛みを緩和する治療を行います。

見た目ではわかりにくいので、定期的な眼圧検査が必要

眼圧を定期的にチェックすることが早期発見の近道です。かかりやすい犬種なら最低でも半年に1回、それ以外の犬種なら1年に1回の眼圧の測定を行いましょう。8才以上になったらより高い頻度で行うと安心です。
眼圧検査をしている犬。眼圧の測定は、眼科専門医がいる動物病院で受けるのが理想。
眼圧検査をしている犬。眼圧の測定は、眼科専門医がいる動物病院で受けるのが理想。

進行度によって3段階の治療法がある

視力の有無や眼圧のコントロールができるかどうかで治療法は変わり、おもに点眼薬を使うか手術を行うかになります。

●眼圧が安定しているとき
「点眼薬」
眼圧を下げる目薬を一日に数回さすことで、眼圧を正常に近づける治療を続けます。

●視力はあるが、眼圧に異常が見られるとき
「濾過手術」
房水の通り道に小さなパイプを入れる手術。房水が排出されるので、眼圧が上がりにくくなります。
「毛様体凝固手術」
房水の出る量を減らす手術。目にたまる房水が減るので、眼圧が上がりにくくなります。

●視力を完全に失ったとき
「眼摘出手術」
眼球を取り出す手術。見た目の変化は大きいが、痛みなどの苦痛からは解放されます。
「義眼手術」
眼球の代わりにシリコンの義眼を入れる手術。見た目の変化が小さく、目があるように見えます。
「薬物注入手術」
眼球内に薬液を入れて目の形をキープする手術。ほかの手術に比べ低価格で行えます。
「白内障」と「緑内障」、似た名前ですが、まったく違う病気ということがおわかりいただけましたか? それぞれの病気の特徴を知って、早期発見に役立ててください。
お話を伺った先生/マスナガ動物病院院長 増永 朗先生
参考/「いぬのきもち」2021年3月号『目の病気プチ事典』
症例写真/マスナガ動物病院 
写真/佐藤正之、殿村忠博、平林美紀
文/いぬのきもち編集室
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