愛犬がリラックスした状態で、直接体に触れられるマッサージは、異変が見つけやすいお手入れのひとつです。今回は実際にマッサージ中に愛犬の異変に気づいた飼い主さんの体験談と、病気を見つけるためのマッサージのコツについて、獣医師の石田陽子先生が解説します。
病気を見つけるためのマッサージのコツ
愛犬がゴロンとおなかを見せるなど、マッサージ中はふだん目につかない場所も見られるチャンスです。とくにおなか、わき、足の内側は見落としがちな部位なので、出来物や腫れなどがないか、手のひら全体で触れてチェックを。
また、マッサージ中は愛犬がリラックスしているので、ふだんは嫌がりやすい顔まわりも時間をかけて確認しやすくなります。「あごの小さな出来物ががんだった!」といった事例もあるので、しっかり触れてチェックしましょう。
体験談1.乳腺腫瘍
「愛犬のおなかをマッサージ中、5mmほどの出来物を発見しました。悪性の可能性は低いと言われ、様子を見ていましたが、しばらくたってから3cmほどの大きさに!あらためて受診すると、乳腺腫瘍とわかり手術しました」(大阪府 Y・Mさん)
悪性腫瘍の場合、すぐに大きくなり取り返しのつかないことになるケースもあります。とくにシニア犬はがんのリスクが高いため、出来物を見つけたら即受診が鉄則です。
体験談2.脂肪腫
「右後ろ足をマッサージしていたところ、腫れに気づきました。その後ゆっくり大きくなってきたので受診すると、良性の脂肪腫とのことでした。手術は筋肉や神経を傷つけるリスクがあると言われたため、現在はダイエットして様子を見ています」(青森県 C・Hさん)
脂肪腫は体のどこにでもできます。このケースのように体幹ではなく四肢にできる脂肪腫は、大きくなると手術が難しくなることも少なくありません。また、悪性の場合もあるため、見つけたら早めに受診しましょう。
体験談3.尿石症
「いつものようにおなかあたりを触ったら、キャン!と鳴いて痛がりました。元気がなかったのも気になっていたので受診すると、なんと尿石症とのこと!現在は療法食に切り替え、定期的に検査をしてもらっています」(東京都 M・Sさん)
尿石症が悪化し、膀胱の粘膜の炎症が強かったり、膀胱内に結石がたくさんできていたりすると、腹部に痛みが出ることもあります。触れたら鳴く、逃げる、尿量が変わったなどの変化が見られたら、獣医師に相談しましょう。
ふだんなにげなくしているお手入れは、愛犬の体にしっかりと触れるチャンスでもあり、ささいな変化に気づけるきっかけにもなります。ぜひお手入れの習慣化と一緒に、お手入れ中のチェックも習慣化して、愛犬の健康管理に役立ててくださいね。
お話を伺った先生/石田陽子先生(「石田ようこ犬と猫の歯科クリニック」院長 獣医師)
参考/「いぬのきもち」2020年10月号『飼い主さんの実体験から学ぶ! 私たち“お手入れ”でこんな病気に気づけました!』
文/田山郁
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。