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愛犬がパテラになったらどうする? 「手術を検討すべき」ケースとは

“パテラ”を病名だと思っている飼い主さんも多いですが、じつはパテラは膝蓋骨(ひざのお皿)を指す言葉。この膝蓋骨がはずれるのが「膝蓋骨脱臼」という病気です。今回は、手術という選択肢について、獣医師の森 淳和先生に教えていただきました。

ひざのお皿がはずれてひざが伸ばせなくなる

ひざのお皿(膝蓋骨)は、大腿骨と脛骨をつなぐ膝関節にある骨です。ひざの屈伸に不可欠で、とくに伸ばす際に、大腿骨の前面にある筋肉のパワーを脛骨に伝え、地面を蹴る力に変える役割があります。膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨がはずれてひざが伸ばせなくなり、歩きにくくなる病気。内側にはずれる内方脱臼と、外側にはずれる外方脱臼があり、圧倒的に内方脱臼が多いです。

何気ない生活の中でも起こる

膝蓋骨脱臼は、抱っこからの落下、足を滑らせて転倒などの事故やケガにより、膝関節に外から強い力が加わって起こすこともあります。しかし、いつもと変わらない日常の中で起きることもあると知っておきましょう。とくに、遺伝的な要因によって起こしやすい犬種は、ふだんどおりの散歩やドッグランでの遊びの最中でも、起こしてしまうことも。
イラスト/オーツノコ
イラスト/オーツノコ

根本的な治療は外科手術。様子見をしている間に自然に治ることはまずない

膝蓋骨をはずれないようにして、歩きやすくするには、外科手術で対応するしかありません。一般的に膝蓋骨のはずれやすさを判定するグレードで、2以上の犬が手術の適応になることもあります。しかし、同じグレードでもあらわれる症状や頻度に違いがあり、一律に手術が適用されるわけではありません。状態によっては、様子を見ながら経過観察することも。ひざに負担をかけない生活を心がけることで、症状の頻度を減らせることもあります。しかし、治ったわけではないので、定期的な通院で経過観察を続けましょう。

定期的な通院で経過観察するケース

・症状が軽く、あらわれる回数が少ない
・O脚やX脚を伴わない無症状
・痛みがない
・犬自らがはずれないように工夫して生活している
 (寝起きに後ろ足をぐーっと伸ばす、散歩中に後ろ足を蹴り上げる など)
イラスト/オーツノコ
イラスト/オーツノコ

手術を検討すべきケース

・症状が軽くても、頻回に起こる
・中程度以上の症状が続いている
・ひざが伸ばせない
・痛みがある
・O脚やX脚になっている
・グレード4の判定をされた

グレード1=通常は正しい位置にある。手で膝蓋骨を簡単にはずせて、手を離すと正しい位置に戻る。
グレード2=ひざを曲げ伸ばしするだけで、簡単に膝蓋骨がはずれる。自然にはずれる、戻るを繰り返す。
グレード3=膝蓋骨は常にはずれたまま。手で押すと正しい位置に戻るが、手を離すとまたはずれる。
グレード4=膝蓋骨は常にはずれたまま。手で押しても正しい位置に戻らない。

膝蓋骨脱臼の手術は高難度。手術は専門の施設で受けるのが◎

「ひざのお皿の溝を深くすればいいだけだろう」と手術を簡単に考えている飼い主さんが多いと森先生。
実際には、膝蓋骨がはずれることによって、骨の変形、大腿四頭筋の萎縮などが起きていたり、膝蓋骨まわりの組織が弱くなっていたりするため、ひざだけの手術にとどまりません。特殊な器具を使用することもある難易度の高い手術なのです。整形外科に精通している動物病院で行うと再発率も低く、術後にリハビリが必要になったときも対応してもらえて安心です。

軽度の対応や予防のために“ひざにやさしい生活”が大事!

●適正体重をキープする
 →肥満はひざに負担をかけ発症リスクを高める
体を支えながら、ひざの曲げ伸ばしをする膝関節には、大きな負荷がかかります。肥満になると、足をひねったときにひざにかかる力が倍増したり、O脚になりやすくなったりするため、適正体重をキープするのは膝蓋骨脱臼とつきあうにも予防にも大事なことです。

●適切な運動をさせる
 →ひざまわりの筋肉が支えになってはずれにくくなる効果も
「ひざのお皿がはずれないように運動を控えよう」と考えたくなりますが、それはちょっと待って! 逆に運動して筋肉がしっかり発達すると、筋肉が支えになって膝蓋骨がはずれにくくなる効果が期待できます。「小型犬でも、散歩などで体を動かし、筋肉を育てることが大事ですよ」と森先生。

●マットを敷くなど滑らない床にする
 →フローリングなどの滑りやすい床は発症のきっかけになりやすい
フローリングのようなツルツルした床は、滑りやすく、歩くだけでひざに負荷がかかります。滑りやすい環境で生活しているだけで、いつの間にか膝蓋骨脱臼になっていたということも起こるほどです。滑りにくいマットを敷くなど、足が滑らない環境を整えて。
愛犬が膝蓋骨脱臼と診断されたら、納得できるまで説明を受けたうえで、手術を検討してみてください。
お話を伺った先生/獣医師 森 淳和先生
参考/「いぬのきもち」2013年10月号『“パテラ”がわかる!』
イラスト/オーツノコ
文/伊藤亜希子
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