「大したことはないだろう」と犬のストレスを甘く見ている飼い主さん必見! 犬にありがちなストレスを人に置き換えてみると、自分のことのようにそのつらさがわかるはず。ペットドッグトレーナーで獣医師の藤本聖香先生に教えていただきました。
お手入れを一気にすべてすませようとするのは「大量の苦手な仕事を一度にやらされている」ようなもの
お手入れは拘束されるうえに恐怖を感じることもあるので苦手な犬が多いです。それなのに、飼い主の都合で長時間にわたりさまざまなお手入れを一度にされるのは苦痛でしかありません。人でいえば、終わりが見えないほどの大量の苦手な仕事を、一度にまとめてやらされているようなもの。顔面蒼白の事態です。
お手入れはひとつずつ、ごほうびも与えよう
まとめて一度にしようとせず、嫌なことは日を分けてしたほうがストレスを感じる時間が短くなります。さらに、ごほうびを与えることで「イイコト」に変換していきましょう。
突然、正面から服を着せようとするのは「いきなり袋をかぶせられる」ようなもの
犬が服を嫌がるからなどと急いで正面から服を着せようとするのは、突如目の前が真っ暗になり恐怖でしかありません。人ならいきなり袋をかぶせられるようなもの。あわてふためいてしまうでしょう。
自ら首元に頭を通すようにおやつで誘導しよう
服の首元からおやつを持った手を出して誘導し、そこに犬が自ら頭を通すようにすると、最小限のストレスで洋服を着せられます。頭を通せたらおやつを与えて、ほめてあげて。
心配な場面で「怖いね」と言うのは「寝る前に怖い話を聞かせる」ようなもの
愛犬の恐怖心に寄り添うあまり、「怖いね」などとネガティブな言葉がけをするのは、子どもに寝る前に怖い話を聞かせて怖がらせているのと同じこと。恐怖心を植えつけているようなものです。
「大丈夫」などポジティブな言葉がけと態度を示そう
犬は人の感情を敏感に察知するので、心配な場面だとしても飼い主さんはポジティブな言葉がけをしましょう。どんと構えるなど態度も意識して愛犬に不安感を与えないように心がけて。
愛犬の前でほかの犬をかわいがるのは「目の前で浮気をされる」ようなもの
海外の研究で、犬も複雑な嫉妬の感情をもつことが明らかになっています。大好きな飼い主さんがほかの犬をかわいがるところを見るのは、犬によっては目の前で浮気をされるくらいにショック。嫉妬心をいだきます。
独占欲の強い犬には絶対にしないようにしよう
嫉妬の反応は、ションボリするなど、犬によってまちまちですが、独占欲の強い犬の場合は、ほかの犬に対して攻撃行動を見せることもあるので絶対にしないようにして。
いかがでしたか? 人はストレス要因を自身で気づき回避しようとしたり、ストレスがたまってきたら解消しようとしたりするなどある程度はストレスをコントロールできますが、犬はそうはいきません。飼い主さんが犬のストレスをできるだけ軽減してあげるようにしましょう。
お話を伺った先生/英国APDT認定ペットドッグトレーナー。獣医師。「Canine Relationz」代表 藤本聖香先生
参考/「いぬのきもち」2024年10月号「じつはしんどい犬のストレス」
写真/尾﨑たまき
イラスト/コルシカ
文/いぬのきもち編集室