犬にはさまざまな個性があり、性格を簡易的に分類することはできません。今回は、犬種・環境要因(抱っこの仕方など)・性別による性格の違いや変化についてご紹介しながら、犬の性格が変わりやすい6つのターニングポイントについて人の年齢に換算しながら解説します。
犬種による性格の違い|大人しいといわれているのは?
犬の性格は、人に寄り添うことができ、賢く、従順で朗らかなイメージが一般的でしょう。しかし、そのイメージには「他の動物に比べて」という前置きがつきます。なぜなら、犬にも個性があり、1頭1頭性格が違うから。神経質で常に警戒を怠らない犬もいれば、人が大好きで誰にでもなつく犬、自由気ままで自己主張の強い犬もいます。そして総括的な性格は、犬種によって分けることもできます。
「犬を飼おう!」と思ったとき、どんな犬が自分に合うかを考え、インターネットなどで「飼いやすい犬種」を検索した経験はありませんか?検索キーワードで上位にくるのは「大人しい犬」。最近では住宅事情などを考え、「吠えない・手間がかからない・運動量が少なくて済む犬」を求めている方が多いようです。では、その要求にこたえられるであろう犬種はなんでしょうか。「いぬのきもち」WEBのランキングで見ると、以下の3犬種が上位に挙がっていました。
1位:シーズー
2位:柴犬
3位:キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
この3犬種は比較的、欲求吠えが少なく優しく穏やかな性質を持ち合わせており、1人の時間も安心して過ごせる性格をしています。しかし、先述したように犬の性格は1頭1頭違います。「同じ犬種なのに、あそこの犬は大人しい」「うちの犬は穏やかだが、近所の家の犬はやんちゃ」ということもあり得るのです。
それは、持ち合わせている性質のほか、育て方や環境、しつけの質、抱っこの仕方でも犬の性格が違ってくるから。そして、女子犬や男子犬でも違いがあることを理解しておきましょう。次項からは、そういった環境的・生得的要因と犬の性格について解説していきます。
育て方や環境、抱っこの仕方でも性格は変わってくる
育った環境や飼い主さんとのふれ合い方によって形成される性格を「後天的性格」といいます。たとえば、犬が育つ環境で大きく分かれるのが、室内飼いと屋外飼いです。室内で飼われている犬は外からの刺激が少なく、生活の大部分を飼い主さんに見守られているため、内向的で臆病になりやすいといわれています。反対に屋外で飼われている場合は、ノラ猫や近所の人、自動車などいろいろなものを見て育つため、物怖じしない犬が多いでしょう。
その他、飼い主さんとのふれ合い方でも性格に違いが出てきます。しつけをほとんどされなかったり、イタズラしても怒られずに甘やかされたりして育った場合は、欲求を通すために攻撃的になる犬もいます。しつけと称した体罰を加えられたり、激しい夫婦・親子ケンカを見たりしているうちに、警戒心が強く神経質になる犬もいるでしょう。
抱っこの仕方で性格が変わる!
抱っこの仕方でも犬の性格が変わる、といわれていることをご存知でしょうか?小型犬や中型犬などは人が抱えやすいため、移動の際やスキンシップを取りたいときについ抱っこをしてしまいます。抱っこ自体はNG行動ではありませんが、抱っこの仕方によっては、愛犬をわがままな性格にしてしまうことがあります。
基本的な抱っこの姿勢は、片手でお尻を支え、もう片方の手で胸のあたりをかかえるようにし、犬と体を密着させるようにします。ときどき両手で犬の胴を包むように抱きかかえる飼い主さんを見かけますが、その抱っこの仕方を続けると臆病で甘えん坊な性格になりやすいといわれています。
さらに飼い主さんの肩に乗せて抱いてしまうと、人を格下と認識しやすくわがままになり、しつけをしにくくなることがあります。犬を抱っこしてスキンシップをはかることはとてもいいことですが、抱っこのし過ぎや間違った方法で抱っこをしてしまうと、性格に影響を及ぼすことがあるので注意しましょう。
メス・オスでも性格は違う
性別によって性格の違いを感じることもあるでしょう。一般的な女子犬らしさ、男子犬らしさには、こんなに違いがあるのです!
メス犬らしさ
避妊手術をしているかも影響する可能性がありますが、一般的に警戒心を高める男性ホルモンの分泌が少ないメスは、天真爛漫でフレンドリーなタイプが多いようです。そして女性ホルモンの影響で、自分の子ども以外にも母性的に接します。同居犬にも優しく接するでしょう。
その一方で、危険を回避する慎重派な所もあります。子を守るための母性によるものかもしれませんね。そして要領がよくおねだり上手、男子犬と比べると表情が柔らかい印象を与えるのも女子犬の特徴です。
オス犬らしさ
勇敢な心を育てる、男性ホルモンの分泌が活発な男子犬。大好きな飼い主さんや大切な自分の居場所を守ろうと、果敢に立ち向かいます。筋肉が発達しており、エネルギーも活発に生成される男子犬は元気でやんちゃ!ときには無鉄砲になることもあるでしょう。一方で、甘えん坊で寂しがりやな一面をみせることも。去勢手術をしている場合、影響がある可能性はありますが、一度「飼い主さんに従う!」と決めたら、真っ直ぐ忠実についていく。それが、男気のある男子犬なのです。
性格が変わる6つのターニングポイント
心と体が成長するにつれて「性格が変わった!?」と感じるタイミングがあります。犬と人の年齢を比較しながらみていくと、その理由がよく分かります。犬の年齢を人の年齢に換算しながら、6つのターニングポイントについて見ていきましょう。
ターニングポイント1|4か月前後(人:8~10才)
他の犬や人に慣れさせることに適している社会化期が終わり、好奇心よりも警戒心が強まってくる時期です。今までなんにでも興味を抱いていた犬が、臆病な面をみせることがあります。
ターニングポイント2|7か月前後(人:14才前後)
体も大きく成長し、力も強くなり、性成熟を迎えます。今まで受け入れていた「オスワリ」などのコマンドを無視するなど、試し行動をすることがあります。人でいうと反抗期にあたるのかもしれませんね。
ターニングポイント3|1~1.5才(人:20才前後)
子犬期を経て、いろいろなことが分かってくる時期。人の年齢でいうと成人にあたります。イタズラをする機会も減って、徐々に落ち着いた態度をとるようになります。
ターニングポイント4|3才(人:30才前後)
肉体のピークを迎える時期です。体を動かしたい欲求が弱まって、穏やかな生活を好むようになってきます。
ターニングポイント5|6~7才(人:40才前後)
豊富な経験を持ち、まだまだ体力もある時期です。「若者には負けないぞ!」といったところですが、代謝が落ち始めることから、遊びが減ったり大人しくなったりする犬もいます。
ターニングポイント6|9~10才(人:60才前後)
感覚機能の衰えが出始める時期です。体の衰えも見られて、老化とよばれる現象が起き始めます。体の不自由さから不安感が増し、怖がりになったり神経質になったりします。
多くの飼い主が望むこと「穏やかな犬に育てたい!」
犬の飼い主さんに求められるのは、犬を自分の家族の一員と認め、愛犬と一緒に楽しく健やかに生活ができる環境作りをすること。しっかりとしつけをし、心身の健康を守りながら愛する家族として過ごすことが大切です。
「子供(犬)は親(飼い主さん)の背中を見て育つ」この言葉の通り、飼い主さんの性格によっても愛犬の性格は変わっていきます。飼い主さんと一緒に明るく朗らかに過ごしているうちに、愛犬の性格も穏やかで頼りがいのある性格の犬に育っていくでしょう。
参考/『いぬのきもち』2016年7月号「「愛犬の性格が変わった!?」にアドバイス」(監修:西川文二先生)
『いぬのきもち』2016年10月号「男子犬 女子犬 違いを活かす育て方」(監修:石田陽子先生)
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/HONTAKA
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。