もし愛犬に子犬を産ませたいと考えているなら、犬の妊娠について知っておきましょう。ここでは妊娠の兆候から飼い主さんが押さえておきたいお世話のポイントまで解説します。
妊娠期間は63日間が基本。犬種による差はなし
犬の妊娠期間は基本的に63日。人の出産が予定日から多少前後するように、実際は前後1週間ほどの幅があります。犬の種類によって違いはありません。チワワやトイプードルのような超小型犬種でも、柴犬のような中型犬種でも妊娠期間は同じです。妊娠は、通常年に2回あるメス犬の発情期に、オス犬と交配することで始まります。
陰部からの出血(発情出血)が終わって10日間ほどは、メス犬はオス犬を受け入れるようになります。通常、交配後19日で受精卵が子宮壁に着床します。
ちなみに猫の妊娠期間も犬に近く、60~68日間程度です。
人と同じく、つわりが現れることも
妊娠した犬は、食べたものを吐いてしまったり、食欲がなくなったりするなど、人でいうつ“つわり”のような症状が出ます。この症状は2、3日ほどで治まります。妊娠後1カ月を過ぎるころから、おなかが大きくなってきます。
飼い主さんが妊娠前にしておきたいこと
まずしておきたいのは、子犬たちの将来について。無事に出産できたとき、子犬たちを誰が飼うのか、あらかじめ考えておく必要があります。飼い主として責任のあるお世話ができるのか、正しく飼ってくれる人たちに譲れる見通しがあるのか、よく検討しましょう。
もし愛犬に子犬を産ませたいと決まったら、まず動物病院に相談しましょう。遺伝的な病気を持っていないかどうか、性格的に問題がないかどうかなどを確認する必要があります。
妊娠が分かったら動物病院へ
妊娠中には動物病院で必ず検診を受けましょう。受診のタイミングや内容については獣医師に確認してください。通常、触診や超音波検査(エコー)、子犬の骨格がはっきりしてくる妊娠末期にはX線検査(レントゲン)などで胎子の状態を調べ、全身の健康状態をチェックします。
妊娠の初期は流産に注意
妊娠初期(交配から数週間)は、激しい運動は避けるようにします。ただ運動量は妊娠前と同様に必要なので、家の中に引きこもる必要はありません。
環境の変化に敏感な犬の場合、旅行に連れて行ったり来客が頻繁に訪れたりするようだと、ストレスを感じることがあります。なるべく今まで通りの落ち着いた環境で過ごせるように意識してあげましょう。
出産前になったら高栄養フードを
交配して1カ月ほどは、それほど体重は増えません。食べる量もそれまでと変わりませんが、それ以降になると徐々に体重が増えてきます。この時期にはそれまでより多くの栄養が必要になるので、出産・授乳期用のフードを与えてもよいでしょう。
犬種別に気を付けておきたい&知っておきたいこと
妊娠期間自体は犬種で違いはありませんが、出産のやり方や、生まれる子犬の数は犬種によって違いがあります。愛犬の出産を望んでいるなら、こういった情報はしっかり頭に入れておきたいところです。
超小型犬、頭が大きい犬は特に注意が必要
検診の際には、出産に当たってどうしたらいいか、指導してもらいましょう。基本的に犬は自宅で出産しますが、ブルドッグのような頭の大きな犬種や、ヨークシャー・テリア、チワワのような超小型犬種では難産が多いとされています。そのような場合、動物病院で帝王切開をするケースもありますので、検診が大切です。
大型犬のほうが子犬が多い傾向あり
一般的に、大型犬のほうが一度に生まれる頭数が多く、小型犬は少ない傾向があります。ラブラドール・レトリーバーやシベリアン・ハスキー、ダルメシアンなどは一度に8頭前後、ときに10頭以上生まれることも。
一方、ヨークシャー・テリアやミニチュア・ダックスフンドなどは2~4頭が平均的な頭数。トイ・プードルやチワワなどでは、1頭だけのときもあります。子犬の数が少ないと母犬のおなかの中で発達しすぎて難産になることがあります。
出産の立ち会い方
犬は本能的に、もっとも安心できる場所で出産したいと思っているはずです。出産場所は、愛犬がいつもいる部屋の一角に用意するとよいでしょう。安心できるよう、ケージなどで囲まれた場所にペットシーツを敷き詰めて、さらにバスタオルなどを入れるようにします。
正常な出産では陣痛が始まってから1~2時間後に最初の子犬が生まれます。飼い主さんは手を出さず、母犬にまかせるようにしましょう。ただし子犬がなかなか出てこない場合は、かかりつけの獣医師に連絡して指示を仰ぐようにしましょう。
偽妊娠って何だ?
まれにメス犬が、妊娠していなくてもしているようなそぶりをすることがあります。これは偽妊娠という症状です。乳腺が腫れたり、つわりのような症状を見せたりすることがあります。実際に母乳が出るようになるケースもみられます。
押し入れや部屋の隅といった、周囲を囲まれて安全だと思える場所にタオルやペットシーツなどを集めて、巣作りのような行動をしたり、お気に入りのおもちゃやぬいぐるみを子供の様になめてグルーミングしたりすることも。ただ、ほとんどの場合時間がたつにつれ、いつもの状態に戻ります。妊娠したようなしぐさや、体の変化が収まらない場合には、動物病院で診察を受けましょう。
まとめ
愛犬の子犬が見てみたい!という気持ちは、犬の飼い主さんなら誰でも持っているものなのかもしれません。ただし、それを実現させるにはさまざまなステップをクリアする必要があります。生まれてくる子犬を誰が育てるのか、あらかじめ決めておくのもそのひとつ。大切な命を預かる立場になることを忘れないでください。
監修/草場宏之先生(横浜戸塚プリモ動物病院院長)
文/コージー根本
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。