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【獣医師が解説】犬のリンパ腫、その症状から治療費、食事まで

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リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化する病気。犬の腫瘍のなかではもっとも発生率が高いといわれています。血液のがんの一種ですが、全身を循環しているリンパ球が腫瘍化するので、実際には全身に腫瘍細胞が広がり、リンパ節や消化器、皮膚など様々な部位で主要性の病変がみられます。このため、治療はそれらの病変部に対する治療だけでなく、全身の治療として抗がん剤を用いた治療も併行して行うのが一般的です。ここでは、そんなリンパ腫の症状から治療方法までを詳しく解説します。

横たわるゴールデン・レトリーバー

複数のリンパ節が同時に腫れて大きくなると疑いあり

犬の体には各所にリンパ節という器官があります。リンパ節は、リンパ液が流れるリンパ管の途中にある小さな“こぶ”のような形の器官で、体の表面に近いところ(体表リンパ節)だけでなく、体の中の深いところ(深部リンパ節)にも数多く存在します。細菌、ウイルス、腫瘍細胞などがないかどうかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持っていて、感染や炎症などで免疫系が刺激を受けると、一時的に腫れて大きくなる反応がみられます。

リンパ腫を発症するとこれらのリンパ節が正常な範囲を超えて腫れて大きくなったり、体中の複数のリンパ節が同時に腫れるなどの異常がみられます。首回りのリンパ節が腫れた場合、喉や食道、気管を圧迫するので、呼吸器系の症状を併発したり、食欲がなくなったりすることがありますが、多くの場合、症状がかなり進むまでそれ以外の目立った症状が出ずに経過することも多く注意が必要です。

リンパ節は体内各所にあるので、発症した場所によってさまざまな症状が現れます。犬でよく見られるのが、全身の体表のリンパ節の腫れが起こる、多中心型と呼ばれるタイプのリンパ腫です。

7才以上のシニア犬は要注意

見上げるバセット・ハウンド

リンパ腫は、もっともよく見られる造血系腫瘍(血液のがん)でもあります。造血系とは血液を作る骨髄や血液を構成する赤血球や白血球などの血球成分のことで、腫瘍とは何らかのきっかけで本来の正しい機能を果たさなくなり、異常な速度で頻度で分裂を繰り返すように変化してしまった細胞が過剰に増殖したものを表す言葉です。腫瘍の細胞が一か所にとどまらず、浸潤(周りの正常な組織にくい込むように増殖すること)や転移(体の別な場所に腫瘍の細胞が血流などで運ばれ、そこでまたその細胞が増殖して腫瘍の新たな病変部を作ること)を起こす場合には、悪性の腫瘍と判断します。造血系腫瘍も悪性の腫瘍です。また、悪性の腫瘍のことをがんと呼ぶことから、造血系の腫瘍を「血液のがん」と言うこともあります。

犬のリンパ腫は、7才以上のシニア犬から発症しやすくなるといわれています。リンパ腫に、腫瘍化したリンパ球の影響でリンパ節が腫れ、痛みや全身性の発熱、食欲不振、虚弱を伴ったりする他、腫瘍化したリンパ球が皮膚や消化器、腎臓などのリンパ節以外の臓器にも浸潤し、悪影響を及ぼします。進行すると、血球の減少や血液の凝固異常、免疫不全といった症状を引き起こして犬の体を弱らせていきます。

治療の中心は抗がん剤の投与

リンパ球の腫瘍には、リンパ腫のほかにリンパ性白血病があります。リンパ性白血病は骨髄の中でリンパ球が作られる際に何らかの異常でそれが腫瘍化したもので、主に骨髄や血液の中に腫瘍細胞が多く浸潤します。リンパ腫は様々な種類に分化したリンパ球や分化前の幼若なリンパ球が腫瘍化したものでリンパ節や組織、臓器への浸潤がみられ、病変部が塊状の腫瘍になりやすい傾向があります。ただ、同じリンパ球系の細胞が腫瘍の原因となるはどちらも同じです。

このため、リンパ腫の治療の中心は、リンパ性白血病と同じく抗がん剤の投与です。ただ、抗がん剤は強い副作用をもつものもあるので、どんなタイプのリンパ腫がどこでどのくらい発生しているのか、全身の状態はどうなのか、内臓の機能はどうなのかといった要素を全体的に診察して判断し、抗がん剤投与以外の治療方法とも合わせて検討します。ちなみに犬のリンパ腫は、無治療での生存期間が約1カ月とされるのに対して、抗がん剤治療を行うことで余命が約1年、4~5頭に1頭の割合で2年以上に延長するケースもあるようです。

気になるのが治療費の問題ですが、抗がん剤の種類、犬の体重、投与の頻度などによって大きく異なります。月に数万円以上かかる場合も珍しくありません。詳しくは担当の獣医師と相談して、どのような方針で治療を行うのかと合わせて相談してみてください。

また、がんを患うと様々な栄養素の代謝の変化が起こるので、食べているのにやせてくるというがん性悪液質が起こります。がん細胞はブドウ糖をエネルギー源とするので、低糖質、低炭水化物、高品質な脂肪とタンパク質の食事が望ましいです。ただし犬用サプリメントを与えたり、手作り食を与える場合は、抗がん剤の作用を弱めてしまうこともあるので、担当の獣医師に相談してください。

毎日のスキンシップで早期発見

飼い主と愛犬

現在のところ、リンパ腫には決定的な治療方法がまだありません。また、効果的な予防方法もないのが現状です。このため、飼い主さんにできることは早期発見。診断は腫れたリンパ節や皮膚や体内にできた腫瘤から細胞を取って検査を行います。より詳しい診断のために採取した細胞を専門の検査機関で検査してもらうこともあります。犬の場合、リンパ腫の発症の際に体表の複数のリンパ節が腫れることが多いため、日ごろからスキンシップをかねて愛犬の体を触る機会をつくるようにしましょう。愛犬とのスキンシップを毎日の日課にすれば「いつもと違う」と、愛犬の病気に早く気がつけるようになるはずです。

まとめ

シニア犬のほうがなりやすい病気ですが、若い犬でも発症することがあります。原因がいまだ解明されていませんが、治療の選択で大きく変わります。

治療では、抗がん剤を使用も含め、今後愛犬とどのように暮らしていくのかを改めて問われるシーンも出てくるかもしれません。病気にかかった愛犬が飼い主との楽しい生活をなるべく長く続けられるよう、しっかり考え、かかりつけの獣医師ともしっかり相談するようにしましょう。

監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/コージー根本
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。

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