大型犬に多い病気「股関節形成不全」　悪化を防ぐためにすべきことは

散歩中に愛犬が変な歩き方をしたり、階段の上り下りなどを嫌がったりすることないですか？　もしかしたらそれ、「股関節形成不全」という病気かもしれません。今回は、犬の股関節形成不全の特徴や、悪化を防ぐ方法について、獣医師の山口伸也先生に伺いました。

股関節形成不全はどんな病気？

股関節形成不全は、成長とともに、骨盤と大腿骨（太ももの骨）をつなぐ股関節にゆるみが出て不安定になり、歩行異常や痛みが起こる病気です。股関節形成不全の原因ははっきりと解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因が考えられています。

この病気は大型犬に多いのですが、環境要因のひとつに体重の増加があり、成長期の急激な体重増加が発症因子とされています。また、大型犬以外に、トイ・プードルやポメラニアン、柴犬といった犬種にも見られます。

股関節形成不全は治療を適切に行えばうまくつきあっていけるため、腰を振って歩く、散歩中に座りこむなどの異変に気づいたら、なるべく早く病院を受診しましょう。

股関節形成不全の症状

股関節形成不全は、若齢期と中高齢期に症状が出やすいといわれています。それぞれ飼い主さんが気づきやすい症状として、以下が挙げられます。

若齢型の症状

腰を振って歩く（モンローウォーク）
ウサギ跳びのように左右の後ろ足が同時に出る
散歩の途中で座り込む
歩くのを嫌がる
階段の上り下りを嫌がる
滑りやすいところを避けて通る
立ち上がりや歩き始めにふらつく　など

中高齢型の症状

立ち上がりや歩き始めにふらつく
立ち上がるときに力強さがない
散歩に行くとすぐに座り込む
歩くのを嫌がる
階段などの上り下りを嫌がる
滑りやすいところを避けて通る　など

股関節形成不全の診断・治療方法とは

股関節形成不全の診断・検査方法

犬種や年齢、飼い主さんからの聞き取り、股関節のゆるみや痛みを診断する触診などから股関節形成不全が疑われれば、エックス線検査を行います。エックス線画像でゆるみが判明すれば、確定診断になります。

しかし、生後4カ月ごろや軽症例だと判断できないことも。その場合は、資格をもった専門医が特殊な方法で撮影し、外部機関に正確な診断を依頼することもあります。

股関節形成不全の治療方法

股関節形成不全の治療は、保存療法（内科療法）と外科療法（手術）の2つがあります。

保存療法は、痛み止めの投与や体重の管理などを行い、症状をコントロールします。痛みをおさえ、うまくつきあっていけるケースが多いですが、治ったわけではないため、徐々に進行して変形性関節症を発症することもあります。

一方、手術には股関節を温存する手術と、痛みを取り除くための救済的手術があります。犬の年齢や股関節の状態などにより、適切な治療法を選択します。

股関節形成不全の悪化を防ぐために重要なことは？

カーペットの上に座っている子犬 — Zheka-Boss/gettyimages

股関節形成不全は遺伝的な要因が大きいとされているため、予防が難しい病気です。しかし、発症には体重も関係しているため、体重管理は悪化を防ぐために重要です。とくに、成長期の急激な体重増加がよくないので、数日に1回は体重を量って増えすぎを防ぎましょう。

また、激しい運動や滑りやすい床も悪化因子なので、適度な運動や床を滑りにくくする工夫も行うようにしてください。

股関節形成不全は、加齢とともに再び症状があらわれることもあるため、適切な治療と悪化防止策を行って、上手につきあっていくことが大切です。早期発見・早期治療のためにも、日ごろから愛犬の歩き方などをよく観察するようにしましょう。

お話を伺った先生／山口伸也（YPC東京動物整形外科病院院長獣医師獣医学博士日本獣医生命科学大学外科学教室大学院特別研究生 Penn-HIP認定医）
取材協力／赤木浩之先生（YPC東京動物整形外科病院外科部長。獣医師。獣医学博士。日本獣医生命科学大学外科学教室大学院特別研究生）
参考／「いぬのきもち」2024年2月号『愛犬といつまでも楽しく過ごすために知っておきたい！犬の現代病ファイル Vol.57股関節形成不全』
文／宮下早希
※記事と写真に関連性がない場合もあります。