乾燥する冬場は体内の水分量が減りやすく、ひどいと脱水傾向に。これにより、痛みを伴う泌尿器系の病気のリスクが高まります。また時節柄、誤飲や誤食による消化器系の病気にも注意が必要です。
今回は、日本大学動物病院院長の枝村一弥先生に、冬に注意したい泌尿器系・消化器系の病気について教えていただきます。
犬も冬に痛みを感じやすい!
寒くて乾燥も気になる冬は、人と同じく犬も節々に痛みを感じやすい時季。痛みはストレスや別の病気の引き金になることもあるので、冬に起きやすい病気を知って予防に努めましょう。
尿石症・膀胱炎
イラスト/イデタカコ 「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
尿石症は、尿中の成分が結晶化して結石ができる病気。結石が膀胱や尿道などの粘膜を傷つけたり、結石が詰まることで痛みを感じたりします。一方の膀胱炎は、膀胱が炎症を起こしている状態で、同じく痛みを伴うことがあります。
冬は乾燥するため、体内の水分量が低下しがち。尿の量も少なくなるため、結石が流れ出にくくなる、結石が大きくなる、粘膜への刺激が増える、といった理由で尿石症や膀胱炎のリスクが高まります。
急性膵炎
急性膵炎のくわしい原因は不明な場合が多いのですが、ふだん食べ慣れないものや脂質の多いものをたくさん食べるとリ、リスクが高まるとされています。そのため、クリスマスや年末年始といったイベントに乗じて、愛犬におやつやおすそわけを与えすぎるのは危険。発症すると、お腹を丸めてうずくまるほどの激しい腹痛を伴います。
腸閉塞
イラスト/イデタカコ 「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
秋から冬に出回る柿ですが、種は胃で消化しにくいので要注意。そのまま飲み込むと腸に詰まり、腸閉塞を起こす危険があります。発症すると、あとから食べたものがそれ以上先に進まず、腸が異常に拡張して痛みを伴います。重症化すると、腸の壊死や死に至ることも。トウモロコシの芯や梅干しの種、夏は桃の種などにも注意が必要です。
消化管内異物
イラスト/イデタカコ 「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
編み物で使う毛糸や飾りなど、細長いひも状のものを誤食すると、消化管内でひもが絡まって腸を傷つけたり、腸を切断したりする危険が出てきます。当然痛みを伴い、死に至るおそれも。時節柄、かたまり肉をひもで巻いて調理することもあるかと思いますが、おいしそうなニオイのついたひもの誤食に注意してください。
ぶどう中毒
参考・写真/「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
年末年始の集まりで、ぶどうが食卓に上がることも。しかし、犬にとっては中毒を引き起こす危険な食べ物。犬が食べると下痢、嘔吐、腹痛を伴い、重症化すると命に関わる腎不全を起こすこともあります。
ぶどうはつまみやすい形状のため、子どもや来客が気軽に与えてしまうおそれも。その場にいる全員で、ぶどうは犬に与えてはダメと確認しましょう。なお、レーズンもNGなので、パンやお菓子に入っていないかチェックしてください。
ストレス性の下痢
イラスト/イデタカコ 「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
来客や外出、ペットホテルに預けられるなど、イレギュラーな状況に強いストレスを感じると、下痢を起こすことがあります。腸のぜんどう運動が変化することで、腹痛を伴うことも。あらかじめ他人やペットホテルに慣れさせておくといいでしょう。
泌尿器系の病気のほか、イベントの多い冬は誤飲・誤食による消化器系の病気も増えます。どのようなリスクがあるのかをしっかり把握し、できる限りの対策をしておきましょう。
お話を伺った先生/枝村一弥先生(日本大学動物病院院長 日本大学生物資源科学部獣医学科教授) 博士(獣医学))
参考/「いぬのきもち」2025年12月号『サインを見逃さないで!冬に気をつけたい犬の痛い!病気』
イラスト/イデタカコ
文/柏田ゆき
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。