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愛犬が命にかかわる病気になったら…「延命治療」の考え方を獣医師が解説

もしも愛犬が命にかかわるつらい病気になってしまったときに、愛犬にとって、飼い主さんにとって最良な治療とはなんでしょうか?

緩和治療なのか、延命治療なのか、それとも安楽死なのかーーその選択は、飼い主さんが決めることです。

この記事では、犬の延命治療について、いぬのきもち獣医師相談室の先生が解説します。さらに、安楽死のについても考えてみましょう

延命治療とは?

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一般に、延命治療とは、


「重篤な病気や怪我などの影響により、延命のための治療をしない場合には命を維持できず、その後短期間で亡くなってしまうことが確実な状況の際に、その病気や怪我の根治ではなく、ただ命を保つ目的で実施される治療」

ということを指します。
具体的には、呼吸を補助する機器や気管チューブを使用した「人工呼吸」、チューブや胃瘻などを用いた口を経由しない「栄養補給」などが挙げられます。
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また、病気の影響による体調の悪化に伴う脱水症状や、慢性腎障害の際に実施する定期的な「皮下点滴」、自分からは食餌を食べなくなってしまった動物に対する「経口給餌(食餌を口に入れて食べさせる)」についても、延命治療のひとつとする考え方もあるようです。

延命治療のよくあるケース

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通常、延命治療を選択するのは「それをしなければ命が維持できなくなる」と判断されるような状況のときです。

延命治療の例1:慢性の内科疾患、進行してしまったがん

よくある例としては、慢性の内科疾患既に進行したがんなど、根治を目指した直接の治療が困難な病気のときが挙げられます。

そのような病気の際には、その病気の影響で少しずつ全身の体調が悪化していきます。

その際に、なるべく体がラクな状態で穏やかに自宅で過ごせるようにするために、定期的な皮下点滴やチューブ栄養、経口給餌などの延命治療を選択することがあります。

延命治療の例2:腎障害

また、腎障害のように脱水が起こりやすい病気の際には、定期的な皮下点滴を実施することで腎障害の急激な進行や悪化を避け、ある程度安定した体調を長期間保つことができる場合があります。

延命治療のメリット

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延命治療のメリットは、体調の完全な回復は見込めず、今後は徐々に体調の悪化が進行していくことが確実な動物に対して、ある程度可能な範囲ではあるものの、自宅で穏やかに過ごすための時間を確保できる点です。

また、腎障害などの疾患における皮下点滴のように、病気の回復は望めないまでも、症状の急激な進行や体調の悪化を緩和することが可能な場合もあります。

延命治療のデメリット

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延命治療のデメリットとしては、その動物が延命を望んでいるかどうかわからない状況で実施するため、その動物にとって最善の治療と言い切れないことが挙げられます。

また、飼い主さんがその選択をしなければならないことによる精神的な負担、および費用の面などでの金銭的な負担が生じる場合もある点が挙げられます。

延命治療は、希望のない治療ではない

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延命治療は、治る見込みのない動物に対する「希望のない治療」のように感じる飼い主さんも、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。しかし、そうではないのです。

病気であっても、飼い主さんと大切な時間を作るために

まず、たとえ治る見込みのない病気になったとしても、動物はそのことを理屈で認識することはできません。

そのため、病気の影響で体調が悪くても、大好きな飼い主さんにたくさん撫でてもらったり、優しい言葉をかけてもらったり、時にはおやつをもらったりすることが「嬉しい」「楽しい」と感じることには変わりはありません。

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もちろん体調が悪い分、見た目の反応が悪いことはあるかもしれませんが、愛犬が飼い主さんに対して愛情を求める気持ちそのものが変化することはありません。

延命治療は、愛犬が病気の状況ではあっても、可能な範囲ラクな体調で飼い主さんと一緒にいられる大切な時間を作るための「手助け」のような治療と考えていただくと、わかりやすいのではないでしょうか。

延命治療と併用して「緩和ケア」を行うことで、愛犬と飼い主さんが充実した時間を過ごせることも

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延命治療が必要な状況になったら、そのまま何もせずに看取るというのも、もちろんひとつの選択肢ではあります。

元々の病気の進行がかなり厳しく、既に明日をも知れないほど体調が悪化している状況であれば、積極的な延命治療は愛犬も望まないかもしれません。

しかし、慢性の内科疾患や治りにくいタイプのがんなど、ある程度時間をかけて進行する病気の際には、愛犬の体が弱って死に至るその過程が、想定している以上に長期間に及ぶこともあります。

そしてその間、飼い主さんとしても、何もしないでただ見守ることが大変な心労を伴う状況に陥ることもあります。

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延命治療には、「いずれは愛犬が亡くなってしまうことがわかっている状況であっても、その限られた期間を、可能な限り愛犬の体がラクな状態で自宅で穏やかに過ごせるようにする治療」としての側面があります。

そしてさらに、このような延命治療と、積極的な投薬などによって痛みやつらさを取り除く「緩和ケア」を併用することで、命の期限がある程度区切られた状況の愛犬にとって、より穏やかに、愛情をたくさん注いでもらえる充実した時間を過ごすことが可能になるケースもあります。

これらのことを心の片隅に留めておいていただき、その上で、愛犬との生活をより楽しく、充実したものにしていただければと思います。

安楽死を考える場合、かかりつけの獣医師の見解を聞いておこう

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延命治療を考えたときに、その比較の考え方として「安楽死」があります。

これは、動物が苦しまないように死を迎えるようにする対応のことで、獣医師による投薬によって実施されます。愛玩動物の場合、飼い主さんの希望に応じて安楽死を選択することができます。

ただし、獣医師として安楽死を実施するかどうかは個々の先生によって見解が異なるため、かかりつけの先生の考えなどを事前に確認をしておくとよいでしょう。

安楽死は、愛犬が回復の見込みのない病気やけがなどによって、飼い主さんと一緒にいられる喜びよりも体調のつらさのほうが勝ると思われる状況になったときに、愛犬の苦しみを終わりにするために飼い主さんが選べる選択肢のひとつです。

安楽死は、延命治療とは対極にあるような印象を受けるかもしれませんが、どちらも「愛犬が飼い主さんの愛情に満ちた充実した生涯を送る上で、もしかしたら必要になるかもしれない選択肢のひとつ」であるといえるでしょう。

(監修:いぬのきもち・ねこのきもち獣医師相談室 担当獣医師)
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
取材・文/sorami
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