ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
この連載では、過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、京都地方裁判所で平成23年10月7日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは、渋谷 寛先生。
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
愛犬のシャンプー中に、車にぶつかられて裁判に!
愛犬を抱えて逃げるも、逃げ遅れて衝突された
イラスト/macco
現場は、信号のない丁字交差点を数メートル入ったところにあるAさんの自宅マンション前。Aさんは交差点に背を向ける格好でしゃがみ込み、愛犬のシャンプーをしていました。すると、自動販売機へ飲料を充填する仕事のためトラックで現場を通りかかったBさんが、交差点にバックで進入。トラックは方向転換のために切り返しをしていて、元来た道を戻ると思っていたAさんがシャンプーを続けていると、いっしょにいたCさんが「危ない!」と声を上げました。トラックが、クラクションを鳴らすこともなくバックで迫ってきたのです。
Aさんは愛犬を抱えてガレージに逃げましたが、トラックはAさんの左肩に衝突。肩や頸椎、足の関節に全治5カ月のケガを負ったAさんは、治療費や慰謝料などの損害賠償を求め、Bさんを訴えました。
シャンプーを続けていたAさんに過失はないと判断された
裁判所は、現場は幅が狭い生活道路で通り抜けができない道だったとし、Bさんがクラクションを鳴らさなかったのであればAさんが自分のところまでトラックが後退してこないと予想したのは妥当と判断。トラックが侵入した時点でその場から離れなかったAさんに過失はないと認め、すでに支払われた金額と合わせて約160万円をAさんに支払うよう、Bさんに命じました。
衝突は運転手の一方的な過失と認められた!
イラスト/macco
今回の裁判では、Aさんが公道で愛犬のシャンプーをしていたことについては問われませんでしたが、飼い主さんのマナーとしてはあまりいいことではありません。バイクや自転車、人や犬が通りかかる場所でのシャンプーは犬にとっても危険なだけでなく、近隣や通行人とのトラブルに発展するリスクも考えられます。シャンプーは自宅のお風呂場や庭など、落ち着ける場所で行いたいですね。
参考/「いぬのきもち」2017年2月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco