この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。今回ご紹介するのは、リンパ球形質細胞性腸炎という病気にかかったジェシカちゃんとそのご家族である田中さんご一家。リンパ球形質細胞性腸炎は、慢性的な下痢や体重減少を引き起こす病気。長く原因不明の下痢が続き、最近ようやく病名が判明しました。
症状をやわらげるために薬の種類や量をコントロール
現在もジェシカちゃんは、療法食を摂りながら、定期的に動物病院で検査を受け、投薬を続けています。ただ、病名が判り、脾臓の摘出手術を受けてからは、以前よりは落ち着いた状態を維持しています。下痢を抑えつつ、投薬による副反応がなるべく出ないように薬の種類や量をコントロールすることが大切で、そのためにはジェシカちゃんの日々の体調管理が欠かせません。由江さんは、毎日のジェシカちゃんの様子、毎回の食事量、排泄の回数や状態、投薬量などを細かくチェックし、ノートに記録しています。ウンチは毎回写真に撮り、ひと目でわかるようにしています。
由江さんの几帳面なケアぶりには、母の美智子さんも、叔母の直美さんも「細かくジェシカのことを観ているし、獣医さんともよく話をして、指示されたことをきちんと守って実行していますね」と感心することしきりです。
調子がよければ、家族で散歩。食欲も旺盛
ジェシカちゃんは、体調がよければ、大豆くんと散歩へ出かけたり、日帰りのドライブへ出かけたりすることもあります。散歩は家族みんなにとってのリフレッシュタイム。「大豆もジェシカもやさしい性格の犬なのでなごみます」と直美さんたちは言います。また、ジェシカちゃんは、ときには警察犬として警察署の広報活動やイベントに「出勤」することもあります。
「生まれたときから警察犬訓練所で育てられていたから、まだ知らないことがたくさんあると思うんです。先日もお台場海浜公園へ連れていって砂浜を歩かせたら、とても喜んで……。いつかはみんなで泊りがけの旅行へ行きたいですね」(由江さん)
調子のよい日は食欲旺盛なジェシカちゃん。体重を30kgまで増やすことが目下の目標です。
「ジェシカに家庭犬の幸せを味わわせたい」
リンパ球形質細胞性腸炎は、免疫抑制剤や副腎皮質ステロイド剤が効けば長期間の症状の緩和が望めます。ただ、ジェシカちゃんの場合、副腎皮質ステロイド剤の副反応が出ることもあり、長期投与ができないため、体調に合わせて投薬の調節を行なう必要があります。ジェシカちゃんの体調や便の変化にすぐ気づけるよう、田中さんの見守りや観察はこれからも続きます。
羽田空港に緊張した面持ちで降り立ったジェシカちゃんと由江さんが初対面してから約3年。そのときのことを思い出しながら由江さんは言います。
「空港では表情も固かったジェシカもようやく家にも東京にも慣れ、私たちもジェシカと病気に慣れてきたという感じです。病気は一進一退ですが、これからもジェシカができるだけ穏やかに過ごせるようにしていきたいですね」。
出典/「いぬのきもち」2019年9月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
写真/尾﨑たまき
文/犬神マツコ