ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成25年8月21日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
ペットホテルの管理がずさんで、脱走した愛犬が交通事故死
外に続く2枚のドアを開けっぱなしにしていた
事件が起きたのは、8月半ば。飼い主のAさん夫妻は、愛犬を5日間の約束でペットホテルに預け、1万5000円あまりを支払いました。しかし、預けてから3日目、ペットホテルの従業員のBさんは、Aさんの愛犬をケージから出して店内の掃除を行っていたとき、店の外に続くドアを2枚、開けたままにしてしまっていました。
Aさんの愛犬は、開いたドアを抜けて店外に脱走。運が悪いことに、ペットホテルから少し離れた道路で、車にひかれ死亡してしまいました。悲しんだAさん夫妻は、精神的な苦痛への慰謝料などを求め、ペットホテルを裁判で訴えました。
愛犬の葬儀費用のほかに、四十九日の法要代も認めた
大切にしていた愛犬を手厚く葬ったAさん夫妻。葬儀費用のほかに、四十九日の法要も行い、裁判でその費用も損害として主張します。裁判所は、愛犬の葬儀費用も、四十九日の法要にかかった費用も、ペットホテル側が犬を死亡させてしまったことが原因で発生した損害だと認めました。一方で、慰謝料については、飼い主さんの請求した100万円は高額すぎるとして、夫妻それぞれに11万円の支払いをペットホテル側に命じました。
判決は……葬儀費用等と慰謝料の支払いが命じられた!
裁判には、従業員Bさんは出席したものの、ともに被告として訴えられていたペットホテルの経営者は参加しませんでした。ペットホテル側の誠意に欠ける対応が目立つ今回の事件で、飼い主さんの落ち度は少ないと言えそうです。しかし、愛犬を悲しい事故の被害者にしないためにも、愛犬をペットホテルに預ける際は、充分な数の従業員がいるか、愛犬が逃げ出さないように管理はしているかなど、しっかり見きわめてから利用しましょう。
参考/『いぬのきもち』2015年11月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣