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withコロナ時代の防災 「愛犬も一緒に家族避難訓練」で避難生活シミュレーション
地域社会とペット産業をつなげるコンサルティングやセミナーを行っている株式会社ジーパウの代表取締役であり、動物福祉活動家&防災士として、全国の避難所や仮設住宅でペットを飼っている人の支援活動を続けている成田司先生に、withコロナ時代の本当に役に立つ備えを教えてもらいました。
犬の飼い主が最も気にしているのは「避難用グッズ」と「避難方法」
そこで、成田先生が多くの飼い主さんに推奨しているのが、「愛犬も一緒に家族避難訓練」です。それに必要な準備と、避難訓練の方法を教えてもらいました。
【準備1】住む地域の「災害リスク」と「避難場所」を把握することが第一歩
「ハザードマップは地震、水害、土砂災害など、災害の種類で分かれているので、全てのハザードマップをチェックし、自分の住んでいるところがどのような被害の可能性が大きいか、どこに避難所や避難施設があるかなどを確認してください」(成田先生)
災害が起こった際、行政からの情報は避難所に集まります。その意味からも、避難所の場所を確認しておくことはとても大切なのだそうです。
また、家から避難所まで、どこを通って行くかもマップでチェックしておくべきポイント。いつも使っている橋が災害で崩れてしまった時にどうするか、家族に足が悪いお年寄りがいる場合はどうやって連れて行くか、瓦礫などで犬が足をケガしないようにどう対策をするかなど、それぞれの地域、家族構成に応じた避難方法を考えてみましょう。
【準備2】「防災袋」は2タイプ用意するのが効果的
1つは、災害が起こった時に必要最小限の物だけ持って逃げる“1次防災袋”、もう1つは、避難後に取りに戻って当座の生活をするための“2次防災袋”です。どちらも基本はありますが、こうでなければいけないという決まりはありません。家庭での避難訓練を通して、家族に最適なものを選んで備えてください。
1次防災袋は、まず人間用のグッズをしっかり用意し、そこに犬用グッズを追加します。犬のお散歩バッグには、うんち袋やウエットティッシュ、水などが常備されているので、それをそのまま利用すると便利です。緊急時に持って避難するものなので、片手で持てる大きさのバッグ1つにまとめましょう。
例えば、家族4人(父、母、子ども2人)+犬の場合は、お母さんの1次防災袋に犬用グッズを追加し、お父さんの1次防災袋に子ども2人分のグッズを追加するなどしておくと良いでしょう」(成田先生)
それぞれ、用意するものは以下です。
【1次防災袋に入れておくもの】
・スマホと充電器などの通信機器(電源が切れた時のために電話番号のメモ)
・1~2日間、一時的にしのげる程度の食料・水
・新型コロナウイルス対策として、マスク、除菌ウエットティッシュなど
【1次防災袋に追加する犬用グッズ】
・首輪・リード、ゴム製おもちゃ、
・トイレシーツ、ウンチ袋
・ウェットティッシュ、常備薬・お薬手帳
【2次防災袋に入れておくもの】
・下着、タオル、防寒着などの季節の衣類
・ガスコンロ、ライトなどの生活用品
・石鹸、ゴミ袋、簡易トイレなどの衛生用品
・新型コロナウイルス対策として、マスク、除菌スプレーなど
【2次防災袋に追加する犬用グッズ】
・タオル、歯みがきガム、クレート、防災マットなど、その他必要なもの
飼い主さんが日常的に使っているバッグは必要最低限の物が入っているので、1次防災袋に適しているとのこと。毎日帰宅後、そこに水や携行食などを加えて置いておけば1次防災袋の完成です。玄関や枕元など、避難する際にすぐ持ち出せる場所に置いておきましょう。
2次防災袋はコンテナや旅行用のハードキャリーバッグなどが、頑丈で容量も大きく便利。後から取りに行くことを想定して、外から入りやすく、壊れない、埋まらない場所に保管しましょう。室内だけでなく、ガレージや物置なども有効な場合があります。
【避難訓練1】おうちキャンプで自宅避難をシミュレーション
「おうちキャンプ」はその名の通り、家族全員で家でキャンプをする方法で、在宅避難のシミュレーションにもなります。
ルールは1つだけで、丸1日、電気のブレーカーを落とし、水道・ガスの元栓をしめて、1次避難袋と2次避難袋の中の物だけで生活すること。犬がケージやクレートの中で落ち着いて長く過ごせるか、いつもと違う状況だとどんな様子になるかなどもチェックしましょう。ストレスを軽減するため、いつも通りの時間に散歩をしたり、遊びタイムをもうけるとよいでしょう。
これを、季節や時間を変えて実施し、生活するために何が足りないか、必要な準備は何かなどを家族で話し合ってみてください。
犬のケージは家の中の「潰れない」「倒れてこない」場所に!
倒れた家具などがドアや窓を塞いで逃げ遅れるケースも多いので、家具は倒れることを想定し、導線をふさがないよう配置することも必要です。
「地震から身を守るためにも、家の中の“潰れない” “倒れてこない”場所を知っておくことも大切。犬のケージやクレートをそういう場所に設置しておくと、留守中などの備えとなりますし、被災後に家で世話ができる可能性も高まります」(成田先生)
災害時のさまざまな環境に犬が適応できるように、普段から“社会化トレーニング”をしておくことがとても重要だと成田先生は言います。
どんな状況でも飼い主が呼べば戻ってくる“呼び戻し”や、“落ち着いて待てる”ようにトレーニングすること。飼い主以外の人間の存在や自宅以外での宿泊、他の犬や猫に慣らしておくことなどが挙げられます。
また、ケージやクレートなどで落ち着いて生活できるよう、普段から慣らしておくことも必要です。
犬にも得意不得意があり、トレーニング方法は犬の個性によって異なるので、専門家の意見を聞いたり、専門家のトレーニングを受けることも選択肢に入れておきましょう。
なお、犬が逃げ出したり、はぐれてしまった時のために、マイクロチップや鑑札、迷子札をつけておくなどの対策もしておくと安心です。
【避難訓練2】避難所ピクニックで避難所生活を想定してみる
避難所に着いたら、そこで備蓄品を使って食事もしてみましょう。避難所での生活に何が必要かなども、これによって見えてきます。
「公園に着いたら、犬を動き回らせるのではなく、一箇所で落ち着いて過ごすことを体験させましょう。時間を決めてお散歩をするなど、避難所を想定した生活を送ってみてください。
最近はマッチやライターを使ったことがない若者が増えています。可能であれば、キャンプで火を扱う訓練をしておくのも手。また、災害後に最も使える連絡手段は公衆電話なので、子供たちに公衆電話を使う練習もさせておくと良いですね」(成田先生)
車中避難って安全なの?
災害の状況や季節、車の準備状況、犬の様子などに合わせ、臨機応変に選ぶのが良いですね。
家族がバラバラの場合にどこに集合するか、どうやって連絡を取り合うかも決めておきたいポイント。例えば、「避難所のこの木の下に、1時間ごとに会えるまで集合」などと決め、それも防災ノートに記入しておきましょう。
また、犬とはぐれてしまったり、犬をどこかに預けなければいけない時のために、愛犬の正確な情報を説明できるよう備えておくことも大切とのこと。防災ノートには犬に関する詳しい情報(※外見的な特徴から予防接種歴、飼育上の注意点、継続中の治療や薬、既往症まで)や、緊急連絡先一覧などをメモしておき、1次防災袋に入れておくのがおすすめです。
いざという時のためにできることは、予想以上にたくさんありますね。1つひとつ準備をして、災害とwithコロナ、両方に備えたいですね。
監修/成田 司先生
防災士・動物福祉活動家。
東日本大震災以降、ペット業界・団体の災害担当者として、環境省・地域行政と連携し、発災地域のペットと飼育者の支援活動に従事する。
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