雨が降り続き、夏に向けて気温も上がっていく梅雨どきは、ばい菌や虫にとってこれ以上ないほど過ごしやすい時季でもあります。なかには犬にとって有害なものも!
とくに要注意なばい菌と虫を知って、梅雨の危険から愛犬を守りましょう。
※この記事では、犬や人に有害なばい菌(菌類やウイルス)を、便宜上「菌」とまとめてご紹介しています。
危険なばい菌は?
イラスト/Yu Tokumaru
ばい菌(細菌・真菌など)の多くはジメジメした環境を好み、温度や湿度などの条件が揃うと増殖します。食べ物の中に潜んで食中毒を引き起こしたり、犬の体内にもともといる常在菌が活発化して悪さをすることがあります。以下、危険なばい菌のなかから3つをご紹介します。
サルモネラ菌
食べ物を通じて犬の体内に入ると、腸管内で増殖し、食中毒を引き起こします。卵の殻や食肉のほか、川や下水、ゴキブリの体内に潜んでいることもあります。室温(約20℃)で活発に増殖し始め、人や犬の体温ぐらいの温度で増殖のスピードがもっとも速くなります。
犬が感染すると、下痢や血便などを引き起こし、発熱や嘔吐、脱水症状が出ることも。サルモネラ菌は数種類あり、重症化すると死に至るほど危険なものもいます。
カンピロバクター菌
サルモネラ菌と同様、食中毒を引き起こす原因となる菌で、鶏・牛などに潜み、とくに鶏の保菌率が高いといわれています。らせん状の形をしていて、両端にある鞭毛(運動器官)を使って活発に運動。少量でも感染しやすく、潜伏期間が長いのが特徴です。
犬が感染すると、下痢や嘔吐など、おもに消化器に症状が出ます。感染しても症状があらわれないことが多いですが、子犬やシニア犬など、免疫力が低下している犬では発症しやすくなります。
クロストリジウム・ディフィシル菌
犬や人のウンチに潜んでいる菌ですが、かたい種のような組織(芽胞)をもっているため耐久性が高く、消毒された病院の床やトイレでも検出されることがあります。増殖すると毒素を出し、抗生物質を使うと重篤な症状を引き起こすために危険視されています。
犬に感染すると腸内で異常繁殖し、正常な腸内細菌を攻撃して毒素を出し、なかなか治らない下痢の原因となります。悪化すると血便や腸炎を引き起こすことも。
危険な虫は?
イラスト/Yu Tokumaru
初夏に向けて日増しに気温が上がり、湿度も高まる梅雨の時季は、ジメジメを好む虫たちにとって最適な環境です。寄生虫を媒介する、毒をもっているなど、犬に危険な虫もいるため、外出時はとくに要注意です。以下、とくに危険な虫を3つご紹介します。
ノミ
ノミの卵は気温が上がると孵化するため、初夏に向けて活動が活発に。草むらややぶに潜んでいます。かまれるとアレルギー反応を起こしたり、寄生虫を媒介されることも。たとえば内部寄生虫の瓜実条虫を媒介し、感染すると下痢や軟便などが起こることがあります。
マダニ
公園や山の中、草むらなどに潜み、犬に寄生して吸血します。吸血されても痛みを感じにくく、病原菌を媒介することも。重篤な感染症も媒介されるため要注意です。とくに犬バベシア症は、感染した犬の赤血球を破壊し、完治が難しいうえに死に至ることもあります。
蚊
15℃以上になると活動しはじめ、25℃以上でさらに活発に。やぶの中や水回りのほか、部屋の中にいることも。ヒトスジシマカはフィラリアのほか、デング熱も媒介します。フィラリアは犬の肺動脈や心臓に寄生すると心臓の働きが低下し、犬が疲れやすくなったり、急性症状の引きがねに。治療が遅れると死に至ります。
危険な菌や虫から愛犬を守ろう!
イラスト/Yu Tokumaru
ばい菌や虫は、目には見えないところで愛犬の体に悪影響を与えます。虫や菌などが潜んでいそうな草むらに近づかない、駆除剤を活用する、虫よけグッズを使うなど、予防法をうまく取り入れつつ、日ごろから愛犬の健康に関心をもつことで異変にすぐ気づけるようにしましょう。
参考/愛犬との暮らしをもっと楽しむ『いぬのきもち』2020年6月号「梅雨の菌と虫注意報」(監修:斉藤動物病院院長 齊藤邦史先生)
イラスト/Yu Tokumaru
文/影山エマ