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散歩中の犬の排泄を、習性とマナーの両面から考える|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.121

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
前回、外で排泄したがらない犬もいるという話をしました。それに関連して「そもそも犬は外で排泄したほうがいいの? させたほうがいいの?」という疑問が浮かぶ飼い主さんがいるかも。そこで今回は、犬の習性とマナーの面から、外での排泄について考えます(編集部)。

室内飼いの犬の割合が、外飼いの犬のそれを上回ったのは、2003年のことです。
不動産バブル崩壊後、物件の大きな付加価値として、ペット可物件が注目され、ペット可の集合住宅が増えていったからです。
今でこそ珍しくもないので、「ペット可」情報は、不動産広告のどこかに小さく記されている程度ですが、当時は一番のセールスポイントはココ!的な扱いで、大きく目立つ形で記されていたものです。
しかも、バブル崩壊後の産業構造の変化に伴い、工場などを閉鎖しその跡地に何百世帯と入るペット可のマンションが建つ。そういったことが、川崎など東京周辺部でブーム的に起きていった。
そこである問題が持ち上がる。
それは犬の排泄に対する苦情です。

想像を超える数の犬が同じ場所に排泄する

ペット可という物件で、その数割が犬を飼い始める、あるいはすでに飼っている人たちが引っ越して来る。
犬には散歩がつきもの。散歩には排泄がつきもの。
そして多くの飼い主が行う犬の散歩は、公園や河原に行って帰って来るといったスタイル。
同じマンションから出た犬たちは、似たようなコースをたどって帰って来る。犬たちは他犬が排泄した場所に好んで排泄をしたがる。
何百世帯の犬たち、その何割かが同じ場所で排泄したらどうなるか。
それが他人の家の塀であれば、その家の所有者は当然苦情を申し立てる。
それが公園の植え込みであれば、草花は枯れていく。
排泄の匂いも当然、苦情となっていく。

排泄は散歩でさせないで、というお願いを

当時、川崎市だったと記憶していますが、「排泄とお散歩は分けて」というお願いをし始めました。
そうしたアナウンスをオフィシャルに出していない行政も、気持ちは同じです。
それから数年しないうちに、犬の排泄が、街灯などの鉄の支柱や電信柱の鉄筋の錆びの進行を早める、といったことも問題になりました。
住民の生活を支える、社会インフラにも影響を与えるわけです。
そうなのですね、行政サイドとしては、外で排泄してくれないほうがありがたいのです。
「外で排泄をしない」という飼い主の悩みは実は、行政サイドからは「ありがたい」、ということなのです。
もっとも、多くの犬は外に慣れてくる(外での警戒心が減っていく)と、外で排泄を行うようになっていきます。
たとえ排泄を家で済ませたとしても、他犬の犬の排泄の匂いに誘発されてする外での排泄はゼロにはできない。それが自然ともいえるのです。
ウンチは拾って持ち帰る、オシッコは水をかける。本誌でもおなじみのマナー
Can! Do! Pet Dog School

匂い嗅ぎにはつき合わない

外で排泄をしない理由が、外に慣れずに警戒をしているからというのであれば、犬がかわいそうです。
とはいえ、外に慣れ犬が外で排泄ができるようになるのも、行政にとっては好ましいことではない。
外で排泄しないのは飼い主の悩み、外での排泄は行政の悩み。
この相反する2つの悩みの落とし所をどこかに見つけるしかありません。

私の教室では、他人の迷惑にならないところで、排泄をさせるよう話をしています。
排泄は匂い嗅ぎに結びついていますから、犬の匂い嗅ぎにはつき合わない。
匂い嗅ぎは排泄だけではなく、拾い食いの要因にもなっていますから、排泄をしても他人の迷惑にならない、変な物が落ちていないところで、犬の匂い嗅ぎにつき合う。
散歩の中で数カ所、こうした匂い嗅ぎOKポイントを設けるようにすると、犬の排泄はコントロールできるようになっていきます。

マーキングも同様です。させるままにさせれば、次から次へとしたい場所で何十回と排泄を繰り返す。でも、匂い嗅ぎOKの場所と、そうでない場所を飼い主が決めると、犬はやがてそれを理解し勝手なマーキングはしなくなる。
飼い主次第でどうにでもなる。まぁ、そういうことなのです。
道の両端は、排泄を誘発する匂いがそこかしこに。よって、両端からは離れて歩く。匂い嗅ぎは、排泄が迷惑にならない場所で存分に
Can! Do! Pet Dog School
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。
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