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保護犬と受刑者が関わる更生プログラム「プロジェクト・プーチ」とは?
心に傷を負った保護犬のトレーニングを介して、青少年の自立支援を行う「NPO法人キドックス」を立ち上げた、上山琴美さんの活動を紹介します。
1回目の記事|保護犬のケアを介して若者の自立を支援する取り組み
アメリカで行われている更生プログラムを知る

大学で教育学、心理学を学び、ボランティアで非行や引きこもりなどの悩みを抱える青少年の支援活動に参加していた上山さんは、テレビで「プロジェクト・プーチ」というアメリカで行われている更生プログラムを知ります。
これは、矯正施設の受刑者たちが飼い主に放棄された犬を救い、新しい家族に譲渡できるようになるまでトレーニングをするという更生プログラムで、上山さんは「これを日本でも実現できれば、悩みを抱える若者と、保護犬の両方を助けることができる!」と思ったそうです。
その夢を実現すべく、上山さんは2010年からアルバイトをしながら、キドックス設立準備を始め、2012年にはついに現在の場所にキドックスファームを開所するに至りました。
念願だったオレゴン州の青少年矯正施設を視察

「『プロジェクト・プーチ』について作家の今西乃子さんが書かれた本があり、それは私のバイブルのような本でした。キドックスファームを開所してから、あるきっかけで今西さんに連絡を取ることができ、プロジェクト・プーチの創設者を紹介してもらえることになったんです」
2013年、上山さんはキドックスの設立スタッフ2名とともに、アメリカ・オレゴン州のマクラーレン青少年矯正施設を視察する夢をかなえました。
「この矯正施設で行われている『プロジェクト・プーチ』は、犬を介して少年の更生を促すプログラムのなかでも、再犯率がもっとも低く、学ぶところがとても多かったです」と上山さん。矯正施設を訪れた際、プログラム設立者のジョアン・ドルトンさんにも会うことができ、貴重なアドバイスの数々も得られたそうです。
「ジョアンが言っていたのは『単純に犬の世話をするだけでは意味がない。世話をする少年と犬との適合を見きわめ、ハードルの高すぎないほどよい目標を、ひとつひとつ少年たちにクリアさせることが大切』ということです。キドックスのプログラムを作るうえでこれは大変役立っています」
キドックスでの1日のスケジュール

キドックスの「シェルター部」でのプログラムは朝10時から開始。
若者たちは、まず朝礼でその日のスケジュールを確認し、犬たちのコンディションを見てから午前の散歩へ。その後、犬舎の掃除を丁寧に行ってから、犬のお手入れをして犬たちとふれあい、フセ、マテなどの基本的なしつけを行います。一連のプログラムが終わると、犬たち待望のゴハンの時間に。どの犬も辛抱強くじっと待っているのが印象的でした。
午後のプログラムは曜日によって異なり、毎週火曜日は、プロのドッグトレーナーによる講座があります。
次回は、キドックスの「シェルター部」について、さらに詳しく紹介します。
※各情報は2019年10月30日現在の情報です
出典/「いぬのきもち」2020年2月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/尾﨑たまき
取材・文/袴 もな
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