近年、頻発している地震。いつ、どこで大地震が起きても不思議ではありません。万が一のそのとき、備えておくと役立つ「もの」と「こと」とは、何なのでしょうか?
今回は、北海道胆振東部地震を体験した2組の飼い主さんの生の声をお届けします。この機会に、家族と愛犬の命を守るための備えを見直しましょう。
実録1:サークルが激しい揺れと落下物から愛犬を守ってくれました
2018年9月6日の深夜3時7分、北海道胆振(いぶり)東部地震が発生。就寝時に震度6弱の激しい揺れに襲われ「不安や緊張から足がつってすぐに動けず、最悪の状況まで考えました」とTさんはあの日を振り返ります。愛犬は生後3カ月とまだ幼く、Tさんが駆け寄ったときはケージの中でパニック状態だったといいます。
ひとりで寝られるトレーニング中だったことが幸いだった
「ただ、サークルの中でひとりで寝られるようにトレーニング中だったことが救いでした。自由に動き回っていたら、落下物や家具の下敷きになっていたかもしれないと考えると、頑丈な囲いがあって本当によかったです」(Tさん)
幸いケガはなかったものの、愛犬はひとりで寝られなくなり、余震のたびにテーブルの下で小さくなっておびえるようになってしまったそう。
飼い主が冷静になることも学びました
避難所には知らない人やほかの犬がいて、愛犬のストレスになると考え、自宅にとどまることに。
「愛犬を安心させるために、飼い主が冷静にならなくてはいけないことを学びました」(Tさん)
実録2:ガラスや食器が割れたため、足元の安全を最優先しました
「緊急地震速報のアラームが鳴った直後に大きな揺れが長く続き、旦那が子ども部屋に駆けつけ、私が愛犬たちの無事を確認しました」(Yさん)
2頭の愛犬はそれぞれケージとクレートの中にいて比較的落ち着いており、2匹の猫たちはパニックになって2階の部屋の家具の隙間に入りこんでいたそう。
割れた写真立てやグラスを愛犬たちが踏まないよう、足元の安全を第一に確認しました。
「停電していましたが、幸い充電式掃除機があったため、割れ物の片づけができました。停電時はコードレスの充電式掃除機が役立つことを実感したので、常に充電しておくようにしています」(Yさん)
蓄電池で明かりが確保できてよかった
その後、太陽光で充電してあった蓄電器を使い、非常時に電源が入るキッチンまわりの電気
をつけてさらに安全を確認したそう。
「引っ越して1年もたたないうちの震災でしたが、『大丈夫だった?』の声かけや食品のおす
そ分けなど、ご近所の方たちのやさしさを感じられ、子どもたちも安心できたと思います」(Yさん)
このほか、愛犬連れでのキャンプ経験があったことで、子どもたちも「不自由を楽しむ」ことに慣れていたことが結果的に役立ったと振り返ってくださいました。
「犬との同行避難ができても、犬と人がいっしょにいられない避難所はまだ多いのが現実。子犬に限らず、犬にとっては在宅避難のほうが落ち着けます」(防災士・ペット防災せたがやネットワーク代表理事 浜田あゆり先生)
備蓄や物の落下防止対策といった、自宅内の安全を確保できる対策の一つ一つが大切です。この機会に足りていない「もの」と「こと」を、ぜひ見直してみてください。
参考/「いぬのきもち」2021年9月号『震災から愛犬と私を救ったモノとコト』(監修:防災士・ペット防災せたがやネットワーク代表 浜田あゆり先生)
写真提供/Tさん(実録1)、Yさん(実録2)
文/佐藤英美