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飼い主さんが気づかないうちに進行している!? 怖い内臓の病気
また、痛みや症状があらわれにくい臓器もあるため、くわしい検査を行わないと病気の発見が難しいケースもあります。さらに愛犬のちょっとした変化を「年をとって落ち着いてきたから」「食欲はあるから大丈夫」など、飼い主さんが病気の症状としてとらえられないことも。
今回は獣医師の南 直秀先生にお話をお聞きし、飼い主さんが気づきにくい内臓の病気の中から、あまり耳なじみのない5つの病気について解説します。
多発性嚢胞腎[たはつせいのうほうじん]
なんらかの原因で、腎臓の中に嚢胞(のうほう)という袋状のものが多数できる病気です。この嚢胞には液体が入っているため、たくさんできると腎臓に負担がかかり、機能が低下して、慢性腎障害の症状が見られることも。初期は無症状のことが多く、症状がなくとも腎臓をエコー検査で診てもらおうと思う飼い主さんも少ないため、見逃しがちに。
・おなかが腫れている
・たくさん水を飲む
・食欲がない
・オシッコの量が多い
など
・すべての犬
胆嚢粘液嚢腫[たんのうねんえきのうしゅ]
胆嚢は肝臓の隣にある臓器で、肝臓の中でつくられた胆汁をためておく働きがあります。この胆汁がなんらかの原因でベトベトした泥状になり、胆嚢の壁に張りつくのが胆嚢粘液嚢腫です。成犬期~シニア犬期で発症し、進行すると嘔吐や黄疸などの症状が見られますが、初期はほぼ無症状で、血液検査だけでは見つけられません。
重症になると
・歯ぐきが黄色い
・食欲がなくなる
・白目が黄色っぽくなる
・よく嘔吐する
など
・ミニチュア・シュナウザー
・シェットランド・シープドッグ
・ビーグル
・ポメラニアン
など
甲状腺機能低下症[こうじょうせんきのうていかしょう]
ホルモンを分泌して全身の新陳代謝を促進するのが甲状腺ですが、なんらかの原因でこのホルモンの分泌量が低下してしまうのが甲状腺機能低下症です。発症すると元気がなくなったり、抜け毛など被毛に異常が見られたりすることも。「成犬になって落ち着きが出た」など、症状を間違えてとらえがちな病気です。
・元気がない
・以前よりおとなしくなった
・寒がりになる
・散歩を嫌がる
・顔つきが寂しそうになる
など
・ゴールデン・レトリーバー
・シェットランド・シープドッグ
・シベリアン・ハスキー
・柴
など
膀胱ポリープ[ぼうこうぽりーぷ]
膀胱はオシッコをためておき、排出する臓器です。この内部にできもの(ポリープ)が発生すると、オシッコするときに詰まったり、粘膜が炎症を起こすことも。重症化すると命にかかわる場合もあります。とくに尿道付近のポリープは見つけにくく、「愛犬のオシッコはいつもこうだから」と見誤ると、気づくのが遅れがちに。
・頻繁にトイレに行く
・オシッコを出しづらそうにする
・オシッコに血が混じる
・トイレが長い
など
・ビーグル
・スコティッシュ・テリア
・ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
・シェットランド・シープドッグ
など
免疫介在性血小板減少症[めんえきかいざいせいけっしょうばんげんしょうしょう]
なんらかの原因で免疫機能に異常が起こり、自らの血小板を破壊する病気です。血小板は血液中に存在し、出血したときなどに血液を固める働きがありますが、これが破壊されるため、出血が止まらなかったり、内出血が見られることがあります。出血しないと異常に気づきにくく、投薬治療を行いますが、完治は難しい場合も。
・皮膚に紫斑(しはん)が出る
・ウンチに血が混じる
・オシッコに血が混じる
・鼻血
・歯ぐきから血が出る
など
・マルチーズ
・シー・ズー
・トイ・プードル
など、とくにメス
参考/「いぬのきもち」2019年2月号『年代別 飼い主さんが気づきにくい犬の病気』(監修:東京動物医療センター 副院長 南 直秀先生)
症例写真提供/南 直秀先生
文/sato
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