尿石症とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった、尿路に結石ができる病気のことです。結石とは、オシッコの中のミネラル成分が結晶化し、結合してできた“石”のこと。
その石が見つかった部位によって呼び方が変わります。たとえば腎臓で見つかったら「腎結石」、尿管で見つかったら「尿管結石」、膀胱で見つかったら「膀胱結石」などです。犬の場合は、「膀胱結石」がもっとも多く、次いで「腎結石」が見られます。
今回は獣医師の野矢雅彦先生に「尿石症」について詳しく解説していただきました。
イラスト/フジマツミキ
どうして尿石症になる? その要因を解説します!
撮影/殿村忠博
結石となる成分の多くは、食事やおやつ、サプリメントに含まれるリンやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル分です。
通常は摂取したもののうち、不要なミネラル分は結晶にならずにオシッコとともに体外に出ていきます。しかし、体質や持病、ストレスなどなんらかの要因で、出るはずだったミネラル分が結晶化し、さらには結石になるのです。
尿石症になるおもな要因は、下記の5つです。
1)体質
尿石症の発症には、体質が大きくかかわっており、遺伝的に発症しやすい体質を持つ犬種もいます。ただし、食生活や病気をきっかけに体質が変わることも。
【尿石症を発症しやすい体質をもつおもな犬種】
■ミニチュア・シュナウザー
■シー・ズー
■シェットランド・シープドッグ
■ヨークシャー・テリア
■ダルメシアン
■ブルドッグ
■パピヨン
■パグ
■トイ・プードル など
2)食事
尿石症になりやすい体質の犬に、結石の成分となる物質をたくさん含んだ食事やおやつを与えると、結石をさらに大きくしてしまいます。
3)代謝異常などの病気
副腎皮質機能亢進症、糖尿病、門脈体循環シャント、高カルシウム血症などの代謝異常の病気になると、尿路に結石ができる「尿路結石」になりやすくなります。
4)精神的ストレス
ストレスが直接の原因にはなりませんが、尿石症になりやすい体質を持つ犬にとっては、ストレスが発症の引き金になることがあります。
5)細菌性膀胱炎
細菌性膀胱炎を起こすと、オシッコのpHが変化し、結石ができやすくなることがあります。とくに、ストルバイト結石(尿がアルカリ性に傾くとできやすい結石のこと)は、細菌の影響を受けて大きくなることがわかっています。
また、寒い冬は、飲水量が減ったり、外でオシッコをする犬では散歩の回数が減ったりして、膀胱にオシッコがたまっている時間が長くなりがちに。その結果、膀胱内は結晶から結石ができやすい状態になるので、今の時季はとくに注意が必要です。
尿石症になるとどんな症状が出る?
イラスト/フジマツミキ
尿石症になると、血尿が出る、オシッコが臭い、オシッコの色が濃い、といった症状が出ます。それ以外にも、排尿時に痛そうにうなる、オシッコの回数が多いなどの症状が出ることも。さらに、排尿の姿勢をしても、オシッコが出なかったり出しにくそうにしたりする場合は、結石が尿路などに詰まっているおそれがあり、キケンな状態。できるだけ早く動物病院で受診しましょう。
お話を伺った先生/ノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生
参考/いぬのきもち2021年12月号「犬の現代病ファイル」
イラスト/フジマツミキ
撮影/殿村忠博
文/melanie