令和4年(2022年)6月1日に施行された動物愛護管理法の改正によって、犬や猫の販売業者等への犬や猫へのマイクロチップ装着と登録が義務づけられ、一般の飼い主さんについては装着が努力義務となりました。
いぬのきもちWEB MAGAZINEで行った、マイクロチップについてのアンケート調査では、すでに装着済みの飼い主さんも多く、関心の高さがうかがえました。
マイクロチップ装着には前向きながら、体への影響を懸念する声も
いぬのきもちWEB MAGAZINEがいぬのきもちアプリユーザー252名に行ったアンケート調査では、犬の飼い主の73%の方が「愛犬にマイクロチップを装着している」との回答がありました。
犬のマイクロチップの装着に前向きな声としては、
- 「災害の時に飼い主と証明されたいから」
- 「迷子になった時のため」
- 「飼うということに責任が伴うので、良いことだと思う」
- 「義務化した方がいいと思う」
- 「何かあった時のためには安心」
という声がありました。
また、マイクロチップの装着に不安を感じている声としては、
- 「体内に異物を入れることに不安はある」
- 「犬に違和感はないのか、装着時の痛みはどの程度か、犬は痛みを言葉で訴えられないのでどの程度か心配」
- 「痛くならないか、何年も経った後に、何か不具合や炎症などが起きないか心配です」
という、愛犬の体への影響を心配する声もありました。
マイクロチップに関する犬の飼い主さんの疑問 Q&A
マイクロチップは、一般的に犬の首の後ろあたりの皮下にインジェクターと呼ばれる注射器で埋め込まれます。アンケートでは、飼い主さんの関心の高さがうかがえる一方、愛犬への体への影響を心配する声も上がりました。そこで、犬のマイクロチップの装着と体への影響について、日本獣医師会事務局に詳しくお話しを伺いました。
Q:犬の体内にマイクロチップを装着することで、体への影響はありますか?
「チップ自体も非常に小さいもので、犬の体への影響やデメリットはありません。また、チップの耐久年数は約30年といわれていて、犬の寿命が全うされるまでの間での影響はないといわれています。」
Q:マイクロチップを犬の体に埋め込む際、痛みはどれくらいあるのでしょうか?
「マイクロチップ装着時の痛みは、一般的に混合ワクチンや狂犬病予防注射と同じ程度だといわれています。全く痛みを感じないコもいますし、痛みに弱いコは少し鳴いたりする犬もいるようです。」
Q:マイクロチップを装着した後に飼い主が気を付けることはありますか?
「マイクロチップは注射器で埋め込むため、装着後傷口が塞がり、チップが皮下に定着するまでの間は触らない方がよいです。目安として3日程度は注意しましょう。また、シャンプーや水遊びなども、装着度3日程度経ってからにしたほうがよいでしょう。犬の健康状態にもよるので、装着時に獣医師に確認してみてください。」
Q:犬の体に装着したマイクロチップが、皮下を動いていくということはありますか?
「チップを体に入れた後すぐに激しく動いたりすると、皮下に定着するまでの間に若干移動することはあるようですが、それ以降は体内を移動することはありません。」
Q:マイクロチップを埋め込んだ場所をなでても大丈夫なのでしょうか?
「犬の体をなでるなど、通常の生活では特に問題ありません。マイクロチップの装着場所は皮下なので、触ると場所がわかる場合もあります。」
Q:装着したマイクロチップが犬の体の中で破損することはありますか?
「チップ自体は生体適合性強化ガラスやポリマーで被覆されているため、触っただけで割れたりすることはありません。骨折するくらいの大きな衝撃がない限り、体の中で破損することはありません。」
――もし万が一、愛犬が骨折などの事故に遭って、マイクロチップが心配な場合は、獣医師に相談すればよいのでしょうか?
「そうですね。レントゲンを撮ればチップの場所もわかりますし、破損しているかどうかもわかります。」
Q:子犬や成犬、シニア犬とマイクロチップを装着する年齢によって健康へのリスクが変わりますか?
「犬の場合、生後2週以降の装着が推奨されています。それ以上の週齢、年齢であれば、子犬・成犬・シニア犬であっても年齢によってリスクが変わることはありません。」
Q:マイクロチップは麻酔や鎮静をかけなくても装着できますか?
「麻酔や鎮静をかけなくてももちろんそのまま装着できます。痛みに弱いコは部分麻酔をして入れる場合もあるようですが、痛みは予防注射を打つのと同じ程度とされているので、そのために麻酔を打つのはもう1回痛みを伴うことにもなります。」
Q:マイクロチップを装着すると、レントゲンやMRIの画像検査で支障がありますか?
「レントゲン検査については問題ありません。MRIについては、撮影機器によっては、チップの周りだけ少しぼやけることがありますが、チップを埋め込んだ部位を撮影する場合以外では、画像検査に支障が出ることはありません。」
Q:マイクロチップを装着することでアレルギーなどの副反応の可能性はありますか?
「マイクロチップは生体適合ガラスやポリマーで作られています。アレルギー反応があったという事例は報告されていません。」
Q:GPS機能を持ったマイクロチップはありますか?
「GPSを探知するためにはチップ自体が発信をしなければなりません。そのためには電源が必要で、電池を備えると体内に入れるチップのサイズが大きくなってしまいます。首輪につけるようなものはあるようですが、体内に埋め込むマイクロチップの機能にGPSがついているものは実際にはありません。」
Q:最後に、マイクロチップを愛犬に装着することのメリットを改めて教えてください。
「犬の体に装着されたマイクロチップには、15桁のID番号が記録されていて、それを専用のリーダーで読み取り、データベースに照会することで犬の個体識別と飼い主の登録情報を確認することができます。
室内飼いでも外飼いでも、犬がマイクロチップを装着するメリットは変わりません。例えば、災害時や不測の事態で犬が外に出てしまった場合、首輪だと外れてしまう可能性がありますが、チップは外れることがありません。
迷子は突然起こることなので、備えとして登録いただくと、愛犬が飼い主さんのもとに戻れる可能性が高まります。特に災害時の同行避難の際や一時預かりを行う場所で、マイクロチップの有無が重要になってくることもあると思います。」
いかがでしたでしょうか?
犬のマイクロチップ装着と健康への影響についてまとめました。愛犬の健康への影響に不安を感じたり気になることがある方は、参考にしてくださいね。
お話を伺った人/日本獣医師会事務局
『いぬのきもちWEB MAGINEアンケート マイクロチップに関するアンケート』(2022年5月実施)
取材・文/maki
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください