この特集では、難病や障がいをもった愛犬とその飼い主さんの、闘病や暮らしの様子をレポートします。
今回ご紹介するのは、滑脳症(かつのうしょう)によるてんかんを発症するも、日々の投薬で少しずつ安定してきたチワワのタルトくんのお話です。
家族全員が団結して病気と向き合うことに
滑脳症によるてんかんと診断されたタルトくん(オス・1才/3.7kg/チワワ/内弁慶)
診断を受けてから、相原さんは、今後タルトくんに何かあったとき、すぐに駆けこめるよう、よりアクセスが便利で休診日がなく、難病の犬にも柔軟に対応してくれるかかりつけ医を新たに探すことに。そして、『どうぶつの森総合病院』に通うことになりました。家族全員でタルトくんの病気と闘っていくことを決意するのですが……。
「タルトの日常のケアで、もっとも苦労するのは、1日3回、5種類の薬を飲ませないといけないことなんです。タルトは子犬のころから食べることにあまり興味がなく、薬をおやつにくるんでも、見向きもしなかったり、食べても薬だけ吐き出してしまうので、毎日が試行錯誤の連続でした。あるとき『これがずっと続くの?』と思ったら、どーんと落ちこんでしまって」
落ちこむ私を救ってくれたのは娘の言葉だった
相原さん夫妻は共働きでしたが、タルトくんの病気発症後は、相原さんは仕事のシフトも減らして対応してきました。そして「タルトを長期預かりしてくれる犬の施設に平日だけでも預けられたら」という考えすら相原さんのなかに浮かんだことも。
そんな追い詰められた相原さんを支えたのは夫と娘さんでした。小学6年生になった娘さんは、「私が最初に犬を飼いたいって言ったんだから、タルトのお薬もお世話も、私が責任もってやるね!」と明るく言ってくれたそう。以来、娘さんは放課後、タルトくんの投薬を担当しています。
毎日のお世話と工夫
家族全員が気をつけているのは、てんかん発作時にタルトくんがケガをしないこと。そして、1日3回の薬の時間を忘れないこと。いちばん上手に薬を飲ませるのは、小学6年生の娘さんだそう。
留守番時は必ずケージに入れて、ケージ内にはほとんど物を置かないようにする
発作でケガをしないよう、留守番は必ずケージの中で
留守番中にてんかん発作が起きてもケガをしないよう、必ずケージ内で過ごさせます。中にはベッドとトイレのみを置いて、外側に給水器を設置。ケージの背面には、ぶつかり防止のタイルカーペットを張るように。
大好きなおやつにくるんだ薬をゲームをしながら与える
試行錯誤の結果、タルトくんが好むおやつは3~4種類に絞られたため、毎回全種類を用意しておきます。とくに焼きいもが大好き
おやつにくるんだ薬を、楽しみながら食べてくれるよう、ゲームをしながら与えます。器の中に隠したおやつを「どこにある?」と探させてパッと開いてあげてみたり。
外出時、ケージ前には留守番カメラを置いて常に見守る
ケージの前に留守番カメラを設置
外出中でも、常にタルトくんを見守れるよう、留守番カメラは必須のアイテム。携帯に送られる画像をチェックします。
てんかん発作に影響を与えるという気圧の変化を、アプリでチェック
気圧の変化がわかるアプリ
てんかん発作は気圧の変化で起こるともいわれているので、アプリ「頭痛ーる」で気圧の変動をチェック。また月の満ち欠けの影響を受けるという説もあり、月齢も記録。
家族が交代で投薬などを行うため、常にボードにメモを残し、お世話ノートも共有
その日投薬に使うおやつをメモしたボード
お世話ノート
1日3回のタルトくんの投薬を家族が交代で担当するため、その日使うおやつなどをボードに書いて指示。また、相原さんはタルトくんがてんかん発作を起こしたときは、その症状を細かくノートに記録。
かかりつけ医の意見も聞いて、てんかん用の療法食をときどき与える
脳の働きによいとされる成分配合のてんかん用の療法食があるので、タルトくんの様子を見ながら与えています。
次回は、前向きな気持ちを取り戻し、タルトくんの病気と向き合う相原さんご一家の様子をレポートします。
※各情報は「いぬのきもち」2022年3月号発売時のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年3月号『困難と闘う!……その先のしあわせへ』
取材協力/どうぶつの森総合病院、犬の保育園プレセア
写真/犬丸美絵
文/袴 もな