留守番に慣れていない犬は、問題行動を起こしたり、不安から自分の体をなめたり噛んだりするようになってしまうことも……。そこで、犬も飼い主さんもストレスを感じてしまわないために、「犬を不安にさせない留守番術」をドッグトレーナーの西川文二先生に教えていただきました。
いつもと同じ環境で留守番させよう
【ねらい】ふだんと同じ環境を心がけ、犬を安心させる
犬は「いつもと違う」ことにとても敏感で、その異変をすぐに察知して、不安になります。とくに留守番前は、飼い主さんの行動や環境の変化によって、〝ひとり〞になる不安を感じやすいもの。できるだけ「いつもと同じ」環境で留守番させることが、犬の安心感につながります。
いつもと同じ環境のまま外出しよう
留守番時も部屋をふだんと同じ明るさにする
昼も部屋の照明をつけている家は、愛犬にとってそれがいつもの明るさです。外出時に照明を消してしまうと、愛犬は不安になるので、ふだんの明るさのまま留守番をさせましょう。
いつもと同様にテレビやラジオをつけておく
犬は聴覚による刺激にも敏感なので、音も「ふだんと同じ」を心がけて。テレビやラジオをつけていることが多い家は、留守番中もそのままに。ほかの物音をカモフラージュしてくれるので、警戒吠えの予防にもなります。
ふだんと同じ場所で留守番をさせる
ふだんからクレートを置く場所を決めておき、留守番をさせるときも同じ場所で行います。窓の近くは、外を気にして吠えたり、日差しが暑かったりしやすいので、窓から離れた快適な場所に設置しましょう。
【これはNG!】留守番のときだけ静かな場所に移動しない
留守番のときだけクレートの場所を動かすと、犬は異変に気づき、落ち着いて留守番できません。布をかけて安心させ、いつもと同じ場所で留守番させて。
留守番の気配をつくらずに出かけよう
【ねらい】犬の留守番への不安に対策する
留守番前に、犬がソワソワする原因のひとつが飼い主さんの行動です。なにげなく行っている、「鍵を持つ」「化粧をする」などの行為が、嫌なこと(留守番)が起きる前触れだと、犬は今までの経験から学習し、事前に察知しています。前触れを消せば、スムーズに外出できるはず!
留守番のサインとなる刺激をなくそう
まずは犬が留守番に気づくサインが何か観察する
外出前に、犬がソワソワしはじめる前触れがいったい何か、まずは愛犬の様子を観察してみましょう。たとえば、犬は視覚や聴覚によって異変に気づくことが多いので、愛犬の前で外出前に毎回行っている、決まった行動がないか調べてみて。
“鍵の音”に反応して飼い主さんが出かけることを察知した場合
たとえば、飼い主さんが鍵を持つ「チャリ」という音に反応して、留守番の前触れだと察知し、嫌なことを回避しようと吠えるケースも。この流れに気づいたら、鍵の音に反応させないための対策を考えます。
【対策1】犬から見えない別室で出かける準備をする
犬のいない部屋で出かける準備をして、犬の前で外出する気配をつくらないこと。準備をしているときから愛犬をクレートに入れ、飼い主さんの姿を見せずに、そっと出ていくのも有効です。
【対策2】外出準備をしてもあえて出かけず、“パターン化”を回避
「鍵の音=留守番」と犬が感じている場合、外出しない日にもあえて犬の前で鍵の音をさせ、ソファに座る、テレビを見るなど、「出かける」以外の行動をとることで、犬は鍵の音が外出の前触れと思わなくなります。
ほかにもこんな行為が留守番の合図に
外出前にメイクをする、掃除をするなど決まった行動を毎回している
→【対策】犬のいない別室で準備する、犬をクレートに入れて布をかけ、見えない状態にして準備するなど、きっかけを悟られないよう心がけて。
犬の前で外出用のコートを着る、バッグを持つ
→【対策】外出用のコートを着ても家にいるなど、出かける前の行動をパターン化しないことで、犬は外出のサインを察知しにくくなります。
出かける前に「行ってくるね」と声をかける
→【対策】なかには声をかけて落ち着く犬もいますが、それが逆に前触れとなって不安になる犬も。その場合は、声をかけずに外出しましょう。
「犬にとっての留守番は、大好きな飼い主さんと離れて不安な状況に置かれること。ですから、できるだけ不安にさせず、スムーズに留守番へと導く方法を工夫することが大切です。また、「必ず帰ってくる」という信頼関係を深めておくと、犬は安心して留守番できます」(西川先生)
飼い主さんが外出前にNG行動をとっていないか、この機会に見直してみるといいですね。
お話を伺った先生/Can ! Do ! Pet Dog School代表 西川文二先生
参考/「いぬのきもち」2021年12月号『はじめてしつけ コンプリートドリル vol.10 留守番のさせ方』
写真/佐藤正之
文/岸 綾香