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【専門家が解説】犬が甘噛みする理由と「間違ったしつけ」「成功するしつけ」

歯の生え替わりや遊びの延長などで、何かを噛みたい欲求が高まって起こる、犬の甘噛み。しつけの方法を誤ると、将来的に頑固な噛みグセがついてしまうことも。今回は犬が甘噛みをする原因やしつけ方法、噛みグセを悪化させる飼い主さんのNG行動を解説します。

犬の甘噛みとは?

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本気で噛むのではなく加減して噛む行為のこと

犬の甘噛みは、じゃれるように人や物に対して噛みつく行為のことです。本気ではなく加減して噛むので、噛まれても痛みなどは感じません。犬は歯が抜けて生え替わる3週齢ごろから6~8か月齢ごろまでは、噛みつき欲求が強くなるといわれます。さまざまなものに対して噛みつきたいという犬の本能であり、この時期に何かを噛むと、その後も同じようなものを噛む習慣がつきやすくなります。

反対に、この時期に噛んだことがないものに関しては、噛みつき欲求が働かないため、噛もうとしなくなります。甘噛みをさせないためには、噛んでも問題ないもの以外は噛ませないようにすることが肝要です。

甘噛みしやすい犬種

本来噛む行為は、どんな犬にとっても自然なことで習性です。そのため、どんな犬種でも甘噛みをする可能性があります。チワワやポメラニアン、トイ・プードルやヨークシャー・テリアなど、室内で飼育されることの多い小型犬は、不安や恐怖から見知らぬ相手に甘噛みをする傾向が。

また飼い主との触れ合いを喜びとする小型犬は、愛情が不足していたり社会化が充分でなかったりすると、噛みグセが強まってしまう場合も。ほかにもラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、ダックスフンドやビーグルなどの狩猟犬も、甘噛みをする傾向があります。これは、狩猟犬として獲物を追いかけて回収していたときの名残。なのでとくに上記の犬種に当てはまる愛犬は、いたずらで甘噛みをしないようトレーニングを行うといいでしょう。

子犬の甘噛みはいつまでやるの? 放っておいて直る?

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子犬の甘噛みは成犬になれば自然となくなると思いがちですが、実際は放っておいても直るものではありません。子犬のうちの甘噛みくらい大目に見てあげようと考えていると、将来噛みグセがついて困ったことになるかもしれないのです。早い段階でしっかりと予防や対策をしていくことを心がけましょう。

子犬はどうして甘噛みするの? 7つの理由と心理

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遊ぶような感じで人の手や足に噛みついたり、家具を一心不乱に噛んでいたりと、子犬が甘噛みをするのには何らかの理由があります。ここでは犬が甘噛みする7つの理由を探っていきましょう。

①習性によるもの

子犬の甘噛みは、人の赤ちゃんが泣くのと同じように、本能や習性によるものです。この本能や習性による甘噛みには2種類あります。ひとつは何かに噛みつき、かじり倒したいという欲求によるもの。アゴの筋肉を鍛えたり、脳に刺激を与えて成長させたりする効果が期待できる「カジカジ噛み」です。

もうひとつは動くものを追いかけて噛みつきたい「興奮噛み」です。これらを無理にやめさせることはできませんが、本能だからとなんでも自由に噛ませるのもよくありません。

②遊び・好奇心から噛めそうなものならなんでも噛みたがる

好奇心旺盛な子犬の場合、噛めそうなものであればなんでも1回は噛みつく傾向があります。子犬は人と違って足を手のように使えないため、五感を駆使して興味の対象が一体何なのかを確認します。においをかぎ、食べられそうなものなら口に入れて確かめるなど、赤ちゃんと同じような行動をとります。

また、おもちゃとそうでないものの区別ができず、ソファやベッドなどの家具を甘噛みすることもあります。

③留守番中の暇を紛らわせるため

家の中に愛犬しかいない留守番中は、自由にさせてしまうと暇つぶしに部屋の中のさまざまなものを甘噛みすることも。とくに子犬のときから頻繁に留守番をさせている家庭は注意が必要です。甘噛みを繰り返すうちに犬は「噛むと退屈が紛れてうれしい」と感じ、やがてそれが頑固な噛みグセとなってしまいます。

④うれしい気持ちや楽しい気持ちが高まって噛む

人の手や足を引っ張るように噛む、おもちゃや物を口でくわえて近づいてくる、噛む前にしっぽを振るといったしぐさや行動が見られるときは、うれしい気持ちや楽しい気持ちが高ぶっている証拠です。とくに子犬は、うれしくなったり楽しくなったりして人の手を甘噛みしてしまいがちです。

犬は生まれて50日目くらいまでに、親犬やきょうだい犬と遊びながらお互いの体を噛み合い、“痛み”を学びます。子犬の時期に人と触れ合うなかでつい甘噛みをしてしまうのも、こうした遊びの延長といえるのです。

⑤相手をしてほしくて噛む

飼い主さんにかまってもらいたいときや、甘えたいときにも甘噛みをすることがあります。甘えん坊な性格の犬や飼い主さんとのスキンシップが大好きな犬は、自分の相手をしてほしくて甘噛みをします。しかし、ここで何らかの反応をすると、犬は「噛めばかまってもらえる」と勘違いするので気をつけましょう。

⑥乳歯がむずがゆい

子犬にとって、歯の生え替わり時期は歯がムズムズしてしまいがち。この時期は歯のむずがゆさが気になり、どうしても何かを噛まずにはいられなくなります。このタイプに見られる甘噛みの対象物は、人の手や足などの動くものというよりは、長い時間遊んでいられる家具などの動かないどっしりとしたものであることが多いです。

⑦ストレスによるもの

散歩や運動の時間が足りていない、住んでいる環境に不安がある、飼い主さんとのコミュニケーションに満足していないなど、犬が何らかのストレスを抱えていると、甘噛みをしやすくなります。とくに小型犬よりも運動量が多い大型犬は散歩に行く時間が減ると体力を持て余し、甘噛みをする傾向が。

噛むことによってストレスを発散させる行為は、噛みグセの原因にも。愛犬が頻繁に甘噛みをするときは、ストレスがたまっていないかどうか、日々のお世話を振り返るようにしましょう。

犬の噛みグセの成功するしつけ方法は?

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犬の甘噛みに関しては、噛まれてから対策をとるのではなく、いかに噛ませないようにするかが肝要です。本気噛みの予防にも役立つ、飼い主さんができる噛みグセのしつけ方法を8つ紹介します。

①噛めない環境を徹底的につくろう~犬が噛みたいものを届くところに置かない~

文房具やスリッパ、靴下、ハンドタオルなどは、飼い主さんのにおいがついているため、犬にとって魅惑のアイテム。これらのものが床に落ちていたり置いてあったりすると、犬は自由に噛んでしまい、噛みグセが悪化することに。

噛まれて困るものは、犬が届かない高い場所や扉付きの棚などに片づけることを徹底して。もしゴミ箱の中にあるものを出して噛んでしまう場合は、届かないような高い場所に置く、フタ付きのゴミ箱に変えるようにして。

②「チョウダイ」を犬に教える

ふだんから「チョウダイ」を教えておくと、物が落ちて犬がそれをくわえても飼い主さんに渡せるので、対応しやすくなります。

「チョウダイ」を教えるときは、おもちゃをくわえさせた犬の鼻に、おやつを握った手を近づけてにおいをかがせながら、「チョウダイ」と言います。続いて犬がおもちゃを口から離したタイミングでおやつを与え、「イイコ」と褒めます。離したおもちゃは背後に隠すのがポイントです
噛んでほしくないものを噛んでいるときだけこの方法を使おうとすると、おやつが欲しくてわざと物をくわえておねだりする行動が増えて困ることもあります。ふだんからおもちゃ遊びの中で、積極的に練習の機会を持ちましょう。

③安全で快適な愛犬の留守番環境を整えよう

愛犬に長時間の留守番をさせる場合は、犬が家具を噛めない、そして噛まなくてもいい環境をつくることが重要です。トイレや水入れ、噛み壊せないゴム製のおもちゃを入れた広めのサークルを用意し、安心して休める寝床を併設します。愛犬の留守番環境を安全で快適なものへと整えることが大切です。

④散歩で犬の噛みたいエネルギーを発散

何かを噛みたい欲求が強い子犬期には、散歩を通じてエネルギーをたくさん発散させると、噛みグセを軽減できます。天候の悪い日を除いて、子犬期には散歩の時間を毎日長めにとるのがよいでしょう。帰宅後に犬が疲れて寝てしまうくらいの散歩量を意識してみてください。ただし散歩デビューしてから間もない子犬に関しては、無理せず室内で遊んでエネルギーを発散させてあげましょう。

⑤犬の歯が当たったら無視して手を引っ込める

飼い主さんの手への甘噛みをそのままにしていると、「手は噛んでもいいもの」と犬が錯覚してしまいます。手を甘噛みされたら噛み続けられないよう、すぐに無言で後ろに隠してください。手をすぐに出すとまた甘噛みされることがありますので、犬が落ち着くまで手は引っ込めたままにしておきましょう。「噛んだらかまってもらえなくなる」ということが犬に伝わり、甘噛みをしなくなります。
人の足に噛みつく場合には足を椅子の上に上げる、無視がわかりやすいように部屋からいなくなるなども効果的です。

⑥犬が自発的にオスワリをしたら遊ぶ

噛めばかまってもらえると思っている愛犬には、自発的なオスワリを促すのも効果的です。飼い主さんのそばで犬が自然にオスワリをしたら、すぐおやつやおもちゃを与えて「イイコ」と褒めてあげましょう。これを繰り返すうちに、犬が「オスワリをしたらかまってもらえる」と認識して、相手をしてもらおうと噛むことが減ります。飼い主さんにかまってもらうにはどうしたらいいのかを、愛犬に教えるつもりで行って。

⑦飼い主さんから愛犬を遊びに誘うことを心がけて

愛犬に留守番をさせる前や留守番後は、愛犬に誘われるよりも先に飼い主さんから遊びに誘いましょう。飼い主さんひとりではかまってあげられる時間にも限りがありますので、そんなときは家族や親しい人に協力してもらい、かまってあげる時間を確保してみてください。引っ張りっこ遊びは飼い主さんが疲れにくいわりに、犬が全身を使って運動できるのでおすすめです。

⑧犬が遊べるグッズやおもちゃを活用

甘噛みを予防するには、家具の棚などに苦みスプレーを使用して、噛んでほしくないものを噛めないようにするといいでしょう。また、同時に愛犬の噛みつき欲求を満たしてあげられるグッズやおもちゃも活用してあげて。

木製の家具などを噛みがちな犬には、木製のおもちゃを与えて。噛み応えがあり、長い時間噛んでいられるガムやアキレスも効果的です。パッケージを見て、愛犬の月齢・年齢に合ったものを選んであげましょう。

たくさんカジカジしても壊れにくいゴム製のおもちゃも何かと役に立つ優れものです。興奮しがちな愛犬には、噛んで振り回したり、引っ張りっこしたりできるボア製のおもちゃやぬいぐるみ、ロープの素材でできたおもちゃを与えるようするといいでしょう。

噛み方によっては歯が割れてしまう事故が起きる恐れもあります。愛犬がどのように噛むのか、はじめて与えるときはよく観察して安全なおもちゃを選んであげましょう。

注意! 噛みグセを悪化させるNG行動8つ

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飼い主さんが間違ったしつけをしてしまったために、子犬期の甘噛みが頑固な噛みグセに変わってしまうことがあります。一体飼い主さんのどんなしつけや行動が噛みグセを悪化させてしまうのでしょうか。

①大声を出したり叫んだりする

噛んでほしくないものを噛んでいる犬の気をそらそうと、大声を出したり叫んだり、叱ったりして注意をひくのはNG。最初は効き目があったとしても、続けていくうちに犬が慣れて効果が薄くなりがちです。

大声を出してからハウスに入れると、犬が「見つかる前に早く噛もう」と思い、噛みグセが悪化することも。また体を噛まれた際に叫ぶと、飼い主さんの反応が面白いと、さらに甘噛みをする場合があります。

②留守中に部屋で自由にさせている

留守番中に愛犬を広すぎる場所で過ごさせたり、自由にさせすぎたりすると、落ち着かず不安になることがあります。そうした留守番スタイルを続けると、愛犬は気持ちを落ち着かせるために壁などの目についたものを噛んでしまうことにもつながります。

③何度も噛ませ続ける

家具や壁などを何度も噛ませたままにしている場合、「これは噛んでもいいもの」と犬が錯覚してしまいがちです。その結果、一生噛みグセが続いたり、頑固な噛みグセにつながったりすることがあります。

④興奮するまで遊ばせる

スキンシップをしようと、愛犬が興奮しすぎるほど遊ばせるのも危険です。うれしい気持ちや楽しい気持ちが高まった犬がヒートアップすると、甘噛みが悪化してしまう原因に。興奮して噛む力が強くなると落ち着かせるのも難しくなります。
うなるなどの興奮が強く見られたら「オスワリ」をさせるなど短時間のクールダウンをし、興奮度をコントロールしながら遊びましょう。

⑤噛まれやすい手づかいをしている

犬の反応がいいからと人の手で遊ばせ続けると、噛みグセがひどくなってしまう場合があります。犬には動くものを追いかけて噛みつく本能があり、人の手の動きがこの本能を刺激して興奮させてしまうのです。かわいいからと手でからかうのはNGです。

⑥甘噛みしてきたらかまっている

飼い主さんにかまってもらいたい、相手をしてほしいという気持ちから甘噛みをする愛犬に対して「イタイ!」や「ダメ」などと声をかけることは、「噛めばかまってもらえる!」という勘違いにつながります。愛犬はただ声をかけられただけでもうれしくなるので、甘噛みを繰り返すのです。

⑦一貫性がない

甘噛みをしている犬に対して、その時々によって飼い主さんの反応が違ったり家族によって指示の仕方がバラバラだったりすると、一貫性がなくなり犬が混乱して指示がきちんと伝わりません。家族で犬を飼っている場合、家族のなかのひとりがしつけの方法を間違えることや気分でやり方を変えてしまうことで、甘噛み行動がさらに悪化するケースもあります。

⑧体罰や叱ること

子犬が甘噛みをしたときに、首を押さえ込むことや痛みを与えること、マズルなどを力任せにつかむのは絶対にNG。犬が体罰を恐れて一時的に甘噛みをやめたとしても、その後、恐怖心から飼い主さん以外の人の手を噛んでしまう危険性があります。

問題行動に発展しないよう子犬のころから予防を

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犬の甘噛みに対するしつけの方法を誤ると、将来的に頑固な噛みグセが残り、人を噛んで大ケガをさせるなど深刻な事態を引き起こす恐れがあります。もし甘噛み行動が問題化してきたり、しつけのみで対処できなかったりするときには、専門家に相談をするといいでしょう。ただの甘噛みだからと放っておかず、適切な対処を行い、子犬のころから徹底して噛みグセのない愛犬に育ててあげたいですね。
監修/石田陽子先生(石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長)
文/いぬのきもち編集室
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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