ごはんやトイレ、睡眠など、犬が人間と一緒に暮らすためにはある程度のルールを教えることが必要です。「おすわり」もその一つ。しつけの基本であり、実はとても大切なコマンドです。今回は、愛犬が「おすわり」を覚えるために効果的な方法をご紹介します。
そもそも「おすわり」はなぜ必要?
飛びつきなどを防いで冷静にさせる
愛犬が飼い主さんめがけて飛びついてくるのは、可愛らしくてついそのままにしてしまいがちです。特に子犬のころであれば、なおさらではないでしょうか。体の小さい子犬のうちはまだ飼い主さんが制御できても、飛びつきがクセになったまま成長したら大変なことになるでしょう。
大型犬ならば押し倒してしまうかもしれませんし、小型犬で他の人の衣服を汚すこともあるでしょう。飛びつく相手が子供であれば、思わぬ事故につながりかねません。「おすわり」はこのような事故を未然に防ぐためにも重要なしつけなのです。
犬が飛びつく理由を知ろう
犬が人に飛びつく理由は主に3つあります。
①人の口をなめたい
子犬は離乳時、母犬の口のまわりをなめることで食べ物を催促し、母犬は食べ物を吐き出して子犬に与えていました。人の口をなめるのも、その名残と考えられます。
②動くものを噛みたい
犬は動くものを噛みたいという習性があります。噛まれるのが嫌だからと手や足を動かしていると、さらに飛びつきたい気持ちが刺激されてしまいます。
③飛びつくのが楽しい
①と②が習慣化して、飼い主さんが騒いだり叱ったりしていると、犬は「飼い主さんが反応してくれて楽しい!」と理解してしまいます。
飛びつきには相手をせず「おすわり」を
犬の飛びつきクセを直すのに有効なのは、反応しないことです。もし愛犬が飛びついてきても声を出さずに徹底的に無視をします。こうすることで犬は「どうすればいいのかな?」と考えるようになります。
このとき、「おすわり」のしつけが効果を発揮します。日ごろからおすわりのトレーニングができていれば、犬はおすわりの姿勢をすると「いいことがある」と知っているので、おすわりをします。ここでご褒美にフードをあげると「飛びついてもいいことはないけど、落ち着いておすわりをすればいいことがある」と理解し、飛びつきをやめるようになります。
おすわりなどのしつけ、成功のカギは「信頼関係」
「おすわり」を含むあらゆるしつけが成功するかどうかは、愛犬と飼い主さんの信頼関係がカギになります。ここでは、信頼される飼い主さんになるための、8つのポイントをご紹介します。
1. 犬が飼い主さんに注目する
犬は、信頼する飼い主さんに常に注目しています。愛犬の名前を呼んで振り向かせ、アイコンタクトをとるのは信頼関係を築くうえでの基本。愛犬と目が合った瞬間にほめてあげることで、名前を呼ばれて振り返ったらいいことがある!と愛犬に思わせましょう。
2. 食事をきちんと管理して与える
食べることへの欲求は、犬が生きていくうえで不可欠な本能です。飼い主さんといれば食の欲求が満たされると理解させることは、主従関係を教える方法として有効です。トイレトレーニングをしている期間は、必ず決まった時間に食事を出し、食べ残しがあっても一定時間が経ったら片付けるようにしましょう。
食事の順番は、出来れば飼い主さんが終えてからにしましょう。食事の主導権は飼い主さんにあるのだと伝わりやすくなります。食事の管理は飼い主さんがしているのだと伝えましょう。
3. 「ほめる」ことをしつけとする
愛犬に困った行動をさせないためには「ほめる」ことが大切です。犬はほめられればほめられるほど、その行動を繰り返すようになります。困った行動や間違った行動を叱りがちになってしまいますが、正しい行動をほめるようにしましょう。
4. 愛犬に道を譲らせる
信頼する飼い主さんには、道や場所を譲るのが基本。愛犬が廊下や部屋の真ん中で寝ていたら、避けたりまたいだりせず、犬を優しく促して道をあけさせるようにしましょう。
5. 玄関の出入りは飼い主さんが先に
お散歩などで外出する時は、常に飼い主さんが先に出るようにしましょう。これは食事同様、主導権が飼い主さんにあることを伝える手法であり、愛犬の安全を守ることにもつながります。犬が先に飛び出て事故にあうことのないよう、飼い主さんは愛犬をいったん待たせて先に玄関から出てください。その後安全を確認し、愛犬の名前を呼ぶようにしましょう。
6. しつけ方には一貫性を持たせる
信頼される飼い主さんは、しつけに一貫性があります。逆に飼い主さんの気分によってしつけを変えてしまうと、犬が混乱して信頼感が薄まってしまいます。家族内で一定のルールを定め、しつけにおいては常に同じ態度をとるようにしましょう。「まて」や「おすわり」など、指示する言葉も家族内で統一してください。
7. 一緒に遊んであげる
「楽しい飼い主さん」と印象付けるために、愛犬と一緒に遊びましょう。おもちゃの引っ張りっこ遊びなどが効果的ですよ。遊び終えるときは、最後に必ず飼い主さんの手におもちゃがくるようにします。犬に与えっぱなしにしたり、部屋に出しっぱなしにしたりしないようにしましょう。楽しいおもちゃは飼い主さんによって管理されており、それを管理している飼い主さんは特別な存在であることを犬に教えてあげてください。
8. スキンシップをする
信頼する飼い主さんになら、犬は体のどの部分でも触らせてくれますし、お腹を見せるようになります。さらに主導権を認めている相手からなら、口をふさがれる行為(マズルコントロール)も受け入れてくれます。
成犬になってからも抵抗なく触れさせてもらうためには、子犬の頃から充分なスキンシップをとりましょう。人に触られることは楽しくて気持ちが良いものだと、自然に学ぶようになりますよ。
実践編!「誘導→ほめる」でおすわりを学ぶ
犬をほめるということは、犬にいい思いをさせるということです。ある行動をした結果、いいことが起こる(ほめられる)と学ぶと、犬はその行動を繰り返すようになります。正しい行動をしたらほめて、ご褒美をあげましょう。最初から完璧を目指すのではなく、細かい誘導とご褒美のフードを使い、段階的に覚えさせることでトレーニングしていきます。おすわりのしつけは次のようにおこなうと覚えやすいでしょう。
①犬がおすわりをするように、手にフードを握って誘導します。フードにつられて犬は自然とお尻を床につけます。ここまでできたらほめて、次の段階へ。
②①ができるようになったら、今度はフードで犬を誘導する直前に「おすわり」と声をかけます。犬がおすわりをしたら、最後にほめてあげます。これを繰り返すことで、犬は「おすわり」という言葉と行動を関連付けるようになります。
③ここまでできたら今度は誘導せずに「おすわり」と声だけかけてみましょう。ここでおすわりができれば成功です。
「おすわり」は、愛犬の安全を守るためのしつけでもあるので、愛犬が幼いころからしっかりと覚えさせましょう。そしておすわりに限らず、あらゆるしつけを成功させるには、愛犬と飼い主さんの信頼関係が肝になってきます。愛犬の頼れるリーダーとなれるよう頑張りたいですね。
出典/「いぬのきもち」特別編集『子いぬと仲良くなる育て方 しつけ編』(監修:しつけスクールCan!Do代表 西川文二先生)
文/kate
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。