犬と暮らす
UP DATE
【専門家が解説】おしゃれだけじゃない?犬のトリミングの役割や方法、費用について
トリミングとは
被毛が自然に抜け落ちない犬の場合は、定期的にトリミングを行うことにより毛玉になるのを防ぐことができ、健康面では皮膚病予防のためにも必要です。衛生面でも清潔に保てるので、犬も気持ちよく過ごせることでしょう。
また、余分な被毛を取り除くことにより、犬本来の美しさを引き立たせる、いわば犬の美容室としての役割も持っています。
トリミングとグルーミングの違い
具体的なお手入れはブラッシング、コーミング、耳そうじ、シャンプー、ドライヤー、爪切り、足周りカット、足裏・お腹・肛門周りなどのバリカン、肛門腺搾りです。トリミング(被毛のカット)はこれらグルーミングの1つとして行われます。被毛が一定以上に伸びない犬種にとっては、トリミングは必要がなくても、グルーミングは全ての犬に必要です。
ところで、トリミングを行う人を「トリマー」、グルーミングを行う人を「グルーマー」と呼びます。日本では一般的にグルーマーであっても「トリマー」と呼ぶことの方が多く、海外ではその逆で「グルーマー」の呼び名の方が定着しています。日本ではサロン名もグルーミングサロンよりもトリミングサロンという呼び名の方がなじみ深いようです。
トリミングの役割・必要性
トリミングが本当に必要なのか?疑問に思う飼い主さんもいらっしゃると思いますので、トリミングを行った場合のメリットと必要性を見ていきましょう。
体を清潔に保つため
くと、雑菌が繁殖してしまいます。雑菌が繁殖すると臭いのもとになるだけではなく、怪我をしていた場合などは傷口に感染する可能性もあります。
犬の毛は足の裏の肉球の間からも生えてきます。犬の肉球は足の骨や関節を地面の衝撃から守るクッションの役割と滑りやすい場所や急な坂道ではブレーキの役割もあります。毛が伸びてしまうと本来の役割が機能しなくなり、滑って転んでしまい、怪我や骨折をする危険もあります。
トリミングを行うことによって、体を清潔に保てる他、目の周りや足、肛門腺搾り等のお手入れもしやすいと言うメリットがあります。
病気予防のため
また、夏の暑い時期になると心配なのは熱中症です。犬は、体全体が毛で覆われているため体温がたまりやすくなります。サマーカットなどで被毛を短くすることにより、毛の中の空気が循環しやすくなり熱がこもるのを防いで熱中症のリスクが下がります。また、見た目も涼し気ですね。
ただ、犬の毛には、皮膚を守る役割がありますので、短くカットしすぎてしまうと、場合によっては気温や直射日光が直接当たってしまい、犬が更に暑く感じてしまうデメリットもあります。皮膚が見えてしまう程極端に短くしてしまわないように気をつけてくださいね。
その他、目の周りの毛をカットすることも大切です。毛が目に入り、目を傷つけるのを防ぎ、涙やけの原因の予防にもなります。
さらに、トリミングの際に犬の全身に触れたり、毛をしっかりとかき分けたりして皮膚もチェックするので、皮膚の病気や腫瘍を早期発見できる可能性もあります。普段、飼い主さんだけでは目が届きにくい箇所もあるので、信頼できるトリマーさんに見てもらえれば安心ですね。
社会化のため
種の保存のため
犬それぞれの顔立ちによって似合うスタイルも違ってくるので、ぜひカットスタイルの相談に乗ってくれる親切なサロンを見つけて下さいね。
トリミングの方法
サロンでやってくれること
それでは、お手入れの順番に細かく見ていきましょう。
まずは、耳そうじから始めます。爪切りですが、この段階で行う場合がありますが、入浴後の少し柔らかくなった頃が理想的です。その後、ブラッシングでブラシを使って毛をとかします。もつれや毛玉があると洗いにくいので、先にブラッシングで取り除いておきます。次にコーミング。コームというくしを使って毛並みを整え、引っかかりがないかの確認をします。それから、肛門腺搾りをします。こちらは、肛門嚢という袋から分泌液が出て匂いもするのでシャンプー前に行います。その後、シャンプー、トリミング、ドライヤーと続いて終わりです。
自宅で行う場合
自宅で行う場合に気を付けることは、必ず犬用のシャンプーを使って下さい。シャンプーの時は、ぬるめのシャワーで水圧も出来るだけ低くして洗ってあげてください。シャワーヘッドを体に近づけてかけて下さい。遠くからかけた場合、音や水しぶきが出るため、怖がってシャンプー嫌いになったら可哀想ですよね。また、顔にシャワーがかかるのが嫌いな子には、スポンジにぬるま湯を含ませて濡らしてあげてください。洗い終わったら、シャンプー剤が残らないようによくすすいで下さい。中和剤の役目をするコンディショナーも忘れずに。
入浴後は、タオルドライしドライヤーで乾かしますが、完全に乾かさないと湿ったところが毛玉になったり、皮膚病の原因になったりするので、気を付けて下さい。
自宅で行う場合は、犬がトリミング嫌いにならないように短時間で何回かに分けて行ったり、おやつをあげながら行ったりしながら、様子を見ながらにして下さいね。また、必ずハサミやバリカンで犬を傷つけないように細心の注意をはらうようにして下さい。注意することが多いので、自宅で行う場合は、トリミングが1番の難関かもしれませんね。
トリミングは元気な子であっても犬に負荷がかかる作業ですので、体調不良の時や皮膚に病気がある時、ヒート中、妊娠中は控えるようにしてあげて下さいね。
トリミングの費用
サイズ別の料金の目安としては、チワワなどの小型犬は3,000円から、中型犬のビーグルなどは5,000円から、大型犬のゴールデンレトリバーは10,000円を超す場合もあります。
ただ、小型犬と言ってもトイ・プードルやミニチュア・シュナウザーの場合は
8000円前後します。また、体が大きく、さらにカットする場所が多いほど費用はあがり、スタンダードプードルなどは2~3万かかることも少なくありません。
ちなみに、テリア種やMシュナウザーなどの犬種に多く行われるプラッキング技法(トリミングナイフなどで毛を抜く技術)などは他のスタイルと比べると技術的にも難しく、更に高くなります。害獣を狩る為に作出されたテリアやシュナウザーなどは、天候や害獣から体を守る為に毛を硬くするプラッキング技法が誕生しましたが、現在では施術者が少なく、プラッキングの専門店があるほどです。
その他、オプションとして、薬用シャンプーやオゾンミスト、炭酸スパ・マイクロバブル、送迎(依頼する場合)、カラーリングを追加する場合にも別途料金がかかります。また、毛玉があったりする場合の毛玉取り、バリカンではなく全てハサミで仕上げる場合も追加料金がかかる場合があります。
また、性格、年齢、頻度によっても個々に料金が異なることがあります。噛み癖があったり暴れてしまう犬の場合、追加で料金が発生したり、サロンからお断りされることもあるかもしれません。パピー料金(成犬より安い)や、最終来店日を基準に割引を設定しているサロンもあるので、まずは気になるサロンを探して相談してみるのがいいでしょう。
トリミングの頻度
トイ・プードルなどトリミングが必要な毛の伸びるトリミング犬種は月に一度程度を目安にしましょう。チワワのように毛が一定以上は伸びないグルーミング犬種はトリミングの必要は特にありませんが、季節に応じてスタイルの変化を楽しんでもいいかもしれませんね。
その他、毛が伸びてきて絡まりそうな場合や、目に毛がかぶさっている場合、多少匂う時などは、早めにサロンへ連れて行ってあげるといいでしょう。
また、シャンプーについては、月に1~2回を目安にしましょう。匂いや汚れが気になる場合は濡れタオルやブラッシングスプレーで体を拭いたり、ウォーターレスシャンプーで洗ってあげたりしましょう。
老犬のトリミングについて
10歳を過ぎると、トリミングサロンに断られる場合もあります。長く通っていたところ、病院併設なところなどであれば受け入れてくれるところもあるので、確認してみてください。
人気のトリミングカットスタイル
最近だと、ベビーフェイスにするため横楕円形にしたり、パーツを真ん中にしたりする、かわいい印象のカットスタイルが人気です。
サロンでお願いする場合には犬の可愛さを引き出してくれる技術だけではなく、犬に対する愛情を持った信頼できるトリマーさんが見つかると安心ですね。
定期的にケアをしてあげて、犬が快適に健康に過ごせるようにしてあげてくださいね。
文/大原絵理香
監修/鈴木雅実(SJDドッグ グルーミングスクール代表・中央ケネル事業協同組合連合会 会長)
UP DATE