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【獣医師監修】病院で?自宅で?犬の歯石除去の方法&グッズ
愛犬を抱っこしようとしたら、「うっ、口がにおう」。そういえば最近歯磨きをさぼっていたから、歯石がたまっているのかも?今回は、歯石ができる原因や対処法、家庭での歯石除去の方法やグッズの使い方、動物病院を受診した場合の費用をご紹介します。
この記事の監修

白畑 壮 先生
プリモ動物病院相模原中央院長
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
麻布大学腎泌尿器専科研修修了
●資格:獣医師/日本小動物歯科研究会 歯科認定レベル全過程修了
●所属:日本獣医腎泌尿器学会/日本小動物歯科研究会/日本獣医エキゾチック動物学会
●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/歯科・口腔外科/消化器科/腎泌尿器科/エキゾチック診療
歯石ってどんなもの?原因と除去したほうがいい理由

犬の歯石ができる原因
犬の歯石は、プラークや歯垢と呼ばれるものが放置され、それらが固まることにより発生します。歯石と聞くと食べかすが固まってできたものだと思いがちですが、実際には放置された歯垢とミネラルが結びついて、石のような状態になったものを指します。
歯石は、リン酸カルシウムが80%、食べかすが10%、水分が10%ほどの割合で構成されており、見た目は黄色味を帯びているのが特徴。中にはザラザラとしたものが付着していることもあり、これは糖分を多く摂取する犬によく見られる症状だといわれています。
歯石を除去したほうがいい理由
歯の表面や歯と歯の間についている“食べかす”や唾液、被毛など、口腔内の汚れを放置して不潔な状態にしていると、歯垢や歯石がたまっていきます。そして、その歯垢や歯石のなかで細菌が繁殖し、歯肉に炎症を起こすようになると、最終的には歯周病など歯の病気を発症する恐れがあります。それ以外にも、細菌が原因で内臓の病気になることもありますので注意が必要です。
歯周病の症状
歯周病の初期症状としてあげられるのが、強い口臭や歯肉からの出血です。その後病状が進むと、食事のときに痛がる素振りを見せたり、歯を気にして前足で顔をこすったりといった様子が見られます。そこからさらに歯周病が悪化すると、上あごの場合はすぐ上に鼻腔があるため、くしゃみや鼻水、鼻出血といった鼻腔炎の症状がおきたり、歯の深部の炎症が目の下まで広がって頬の腫れや目の下に膿が溜まったりします。下あごの歯周病が進行すると下あごの歯を支えている骨が溶けていき、最終的に下あごが骨折するなど、口腔内とは別の箇所に症状が現れるようになります。
歯垢と歯石の違いとは?歯垢・歯石がつきやすい犬種って?

セットで名前を聞くことも多い「歯垢」と「歯石」ですが、この2つの物質にはいったいどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を解説します。
歯垢
歯垢とは、歯に存在する細菌のこと。犬の歯に付着した食べかすそのものではなく「食べかすに細菌が集まってできるもの」のことを歯垢と呼びます。歯垢は唾液などによって歯に付着し、犬の口腔内で分解された糖分や食べ物から摂取できる糖分を糧にして、どんどん増殖していくのが特徴です。そして、3〜5日ほどで歯石へと変化してしまいます。
歯石
増殖していく歯垢をそのまま放置していると、やがてそれがミネラル物質とともに固まって歯石をつくります。一度歯石が付着した表面にさらに歯垢がつくと、これらがまた歯石を作って硬化していきます。
歯垢と歯石の最大の違いは、通常の歯磨きで落とせるか落とせないかということ。歯垢の段階では歯磨きによって除去できるものの、一度歯石として固まってしまうと、通常の歯磨きでは落とすことが難しくなってしまうのです。また、歯垢と歯石では、歯垢の方が細菌が多く含まれています。
歯垢・歯石がつきやすい犬種
一般的にはどの犬種でも歯垢・歯石はつきますが、なかでも小型犬やマズルが小さかったり細かったりする犬種、歯並びがアンダーショットの犬種はより付着しやすいといわれています。具体的な犬種としては、トイ・プードルやチワワ、パピヨン、ポメラニアン、ダックス・フンド、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどがあります。
家庭で歯石を除去する方法はある?

ゆっくりと時間をかけて除去するならスプレータイプもある
基本的には病院での歯石除去を先にしたほうがいいのが前提ではありますが、シュっと吹きかけるだけで歯石を除去できる歯石除去スプレーもあります。即効性はないものの、愛犬が痛みや恐怖を感じにくく、体に負担をかけずに除去できるのが最大のメリット。自宅で手軽にケアできるのも嬉しいです。
歯石除去スプレーの使い方
犬の歯石除去スプレーにはさまざまな種類がありますので、効果的に使うには用法を守りましょう。愛犬の口の中に直接スプレーしたり、歯ブラシを嫌がるようなら、液体をふきかけたおもちゃを与えたり、水やフードに混ぜて与えていいものを選んで使いましょう。
1日1回から2回ほど吹きかけることで液体が唾液と混ざり合い、口腔内の隅々まで歯石除去効果が浸透します。そして繰り返し使い続けることで、歯の表面に頑固にこびりついた歯石を浮かしていく効果が期待できます。
スプレータイプのほかにジェルタイプも
犬の歯石を除去する商品には、ジェルタイプのものもあります。これは歯の表面にあるエナメル質をなめらかにして歯石を浮かすとともに、口腔内に浮遊する細菌を除去することで口臭を予防する効果も期待できます。ジェルタイプもスプレータイプと同様に、愛犬の口内に液体をたらすところから始めましょう。
ブラシも歯ブラシタイプ、指サックブラシ、指に巻きつけるシート状のものなどがあります。
動物病院を受診した場合の費用は?全身麻酔はするの?

動物病院で歯石を除去する際、使用されているのが「スケーラー」と呼ばれる器具です。スケーラーは歯科用の器具として認知されており、先端に尖った形をした金属がついています。家庭で行う場合は犬の口周りや目をケガさせてしまう可能性が高く、また、犬の歯を傷つけるリスクも伴います。
意図せず犬の歯を傷つけてしまうと、そのときは歯石を除去できたとしても、のちに細菌が繁殖してしまう危険性もありますので、家庭でのスケーラーはオススメできません。
動物病院を受診した場合の治療方法
歯石が付着していると気づいたら、動物病院を受診して適切な治療をしてもらうのがよいでしょう。動物病院で歯石除去を行う際は、全身麻酔をして実施すると、安全かつ犬に恐怖心を与えずに行えます。
しかし、体の弱い犬や持病をもった犬が全身麻酔を行うと、合併症や麻酔死などを引き起こす恐れがあります。一方で無麻酔で施術を行ったとしても、犬が暴れてすべて除去できないこともあり、精神的・肉体的な苦痛を受ける可能性があります。
歯周ポケットなど痛みを伴う箇所の歯石除去では、麻酔は必要不可欠な存在です。動物病院を受診した際は、そのときの症状の進行具合や犬の健康状態によって、最善な治療方法と麻酔の可否を決めていくことになります。
動物病院を受診した場合の費用は?
歯石を除去する際の費用は、麻酔の費用や歯石除去の費用以外にもさまざまな費用がかかります。血液検査やレントゲンの費用などを含め、2〜5万円ほどを目安と考えるのがよいでしょう。
日常的な歯磨きで歯石を予防しよう

歯垢はおよそ3〜5日ほどで歯石に変わってしまいます。歯石が原因で発症するさまざまな病気から愛犬の口腔内を守るためには、子犬のころから歯磨きの習慣づけが最も大切です。歯磨きで落とせないほどの歯石ができてしまう前に、できれば毎日、少なくとも3日に1回は歯磨きをして、愛犬の歯をしっかりと労わってあげてくださいね。
参考/『いぬのきもち』2016年2月号「病気・ケガから守るお手入れ厳選10」(監修:藤田桂一先生)
監修/白畑壮先生(プリモ動物病院相模原中央院長)
文/子狸ぼん
※費用はあくまで目安のため、必ず獣医師にお問い合わせください。
※写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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