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【獣医師監修】犬の歯石除去の方法は?麻酔のリスクや自宅ケアを解説

犬の歯石をそのままにすると歯周病や全身の病気に繋がる可能性があるため、放置せず動物病院で歯石除去を行うことが大切です。

歯垢や歯石、歯の黄ばみの原因は、歯磨きなどのデンタルケア不足が考えられます。家庭で歯石を取る方法やグッズの使い方、動物病院を受診した場合の費用をご紹介します。

白畑 壮 先生

 獣医師
 プリモ動物病院相模原中央院長

 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
 麻布大学腎泌尿器専科研修修了

●資格:獣医師/日本小動物歯科研究会 歯科認定レベル全過程修了

●所属:日本獣医腎泌尿器学会日本小動物歯科研究会日本獣医エキゾチック動物学会

●主な診療科目:一般診療(外科・内科)/歯科・口腔外科/消化器科/腎泌尿器科/エキゾチック診療

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犬の歯石ってどんなもの?歯垢とは違うの?

【獣医師監修】犬の歯石除去の方法は?麻酔のリスクや自宅ケアを解説 いぬのきもち
歯石が付き始めた犬の歯の様子
画像提供:プリモ動物病院
まず最初に、犬の歯垢と歯石の違いと特徴をみていきましょう。

歯垢とは

歯垢とは、歯に存在する細菌のことで、犬の歯に付着した「食べかすに細菌が集まってできるもの」のことをいいます。歯垢は唾液などによって歯に付着し、食べ物や犬の口腔内で分解された糖分を糧にどんどん増殖していき、3〜5日ほどで歯石となります。

歯石とは

歯石とは、増殖していく歯垢を放置することで、ミネラル物質とともに固まって作られたものです。一度歯石が付着した表面に歯垢がつくと、さらに歯石が作られて硬化していきます。

歯垢と歯石の異なる点は、通常の歯磨き(デンタルシートや歯ブラシ)で落とせるか落とせないかの違いです。歯垢の段階ではまだ柔らかく、歯磨きで除去できますが、一度歯石として固まると、通常の歯磨きでは落とすことが難しくなってしまいます。

また、歯垢と歯石では、歯垢の方が細菌を多く含んでいます。

歯垢・歯石がつきやすい犬

コーギー犬の笑顔幸せな夏の晴れた日、
Tatomm/gettyimages
一般的にはどの犬種でも歯垢や歯石はつきますが、顎が小さい犬や細い犬種、小型犬、歯並びが悪い犬は、より付着しやすいといわれています。また、歯と歯の距離が狭く重なるように生えている子ほど、歯垢がその隙間にたまりやすくなる傾向があります。

犬種としては、トイ・プードル、チワワ、パピヨン、ポメラニアン、ダックス・フンド、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどが挙げられます。

犬の歯石ができる原因と歯石を除去する理由

緑の草の上に座って英語ビーグルの美しいトリコロール子犬。犬の笑顔
bruev/gettyimages
ではここからは、なぜ歯石を除去するべきなのかについてみていきましょう。

犬の歯石ができる原因

犬の歯石は、食べかすが固まってできたものだと思われがちですが、実際には歯垢とミネラルが結びつき、石のような状態で固まることにより発生します。

歯石は、リン酸カルシウムが80%、食べかすが10%、水分が10%ほどの割合で構成されており、見た目は黄色味を帯びているのが特徴です。

中にはザラザラとしたものが付着していることもありますが、これは糖分を多く摂取する犬によくみられる症状だといわれています。

歯石を除去する理由

歯の表面や歯と歯の間についた食べかす、唾液、被毛など、口腔内の汚れを放置すると、歯垢や歯石が溜まっていきます。

そして、その歯垢や歯石の中の細菌が繁殖し、歯肉炎を起こすようになると、歯周病だけでなく、細菌(歯周病菌)が原因で心臓病や内臓の病気を発症することもあるため、歯石除去(スケーリング)を行う必要があります。

歯周病とは?

犬用の骨
Chalabala/gettyimages
犬の歯垢や歯石が原因で大きな問題となるのが歯周病です。

歯周病の初期症状には、強い口臭や歯肉からの出血があり、病状が進むと、食事のときに痛がったり、歯を気にして前足で顔を擦るといった様子がみられます。

さらに歯周病が悪化すると、上あごの場合はすぐ上に鼻腔があるため、くしゃみや鼻水、鼻出血といった鼻腔炎の症状がおきたり、歯の深部の炎症(歯周炎)が目の下まで広がって、頬の腫れや目の下に膿が溜まったりします。

下あごの場合は、下あごの歯を支えている骨が溶けていき、下あごが骨折するなど、口腔内とは別の箇所に症状がみられるようになります。

動物病院を受診した場合の費用は?全身麻酔はするの?

動物病院を受診した場合の治療方法

愛犬の歯石に気がついたら、動物病院を受診して適切な治療を受けましょう。動物病院で歯石除去を行う場合、超音波スケーラーやペンチなどの器具を使用します。

麻酔をかけて処置を行う場合は、まず口腔内の歯肉の炎症や歯肉に腫瘍がないかなどのチェックを行い、超音波スケーラーやハンドスケーラーを使って細かい歯垢・歯石を除去します。

その後、研磨剤をつけたポリッシングブラシやラバーカップで歯の表面を研磨します。

研磨が終わった際に、細菌や研磨剤、歯石のかけらなどが残っていると、傷の治りが遅くなって不快感の原因にもなるため、最後に口の中をきれいに洗い流して歯石除去の処置は終了です。
【獣医師監修】犬の歯石除去の方法は?麻酔のリスクや自宅ケアを解説 いぬのきもち
スケーリング前:茶色くなっている部分が歯石で、奥歯では歯全体に歯石が付着している状態
画像提供:プリモ動物病院
【獣医師監修】犬の歯石除去の方法は?麻酔のリスクや自宅ケアを解説 いぬのきもち
スケーリング後:付着していた歯石を除去した後の状態
画像提供:プリモ動物病院

動物病院を受診した場合の費用は?

歯石を除去する際の費用は、麻酔の費用や歯石除去の費用以外にもさまざまな費用がかかります。血液検査やレントゲンの費用などを含め、2〜5万円ほどを目安と考えるとよいでしょう。

<歯石除去にかかる費用の例>
※スケーリングと麻酔料、術前検査にかかる費用(税別(
~5kg 34000円
5~10kg 36000円
10~20kg 44000円

などのように犬の体重によって料金が変わります。また持病がある場合は血液検査なども術前に実施するため、料金はそれぞれ変わってきます。

また、上記はスケーリングと麻酔料、術前検査費用のセット価格になっているため、抜歯を行うような重度の歯周病への処置は別途費用がかかります。

歯石除去と全身麻酔のリスクは?

動物病院で歯石除去を行う際は、安全かつ犬に恐怖心を与えないために、全身麻酔を使用することがあります。歯周ポケットなど痛みを伴う箇所の歯石除去を行う際には、麻酔は必要不可欠な存在です。重度の歯周病の場合は、麻酔下で抜歯や縫合などの手術が必要なケースもあります。

しかし、年齢の重ねた高齢犬(老犬)などの体の弱い犬や持病のある犬が全身麻酔を行うと、合併症や麻酔死などを引き起こすリスクがあることも理解しておかなければなりません。

歯石除去は、年1回実施することが理想的ですが、年に1回全身麻酔をかけることは現実的ではないと感じる飼い主さんも多いと思います。2〜3年に1回の実施で良好な口腔内環境を維持できるように、日々のデンタルケアを行うことがとても重要です。

無麻酔で行う歯石除去のリスクは?

基本的には、無麻酔での歯石除去は推奨されません。無麻酔で歯石除去の施術を行ったとしても、犬が暴れてきれいに除去できないことや、犬に精神的・肉体的な苦痛を与える可能性があります。

また、剥がれ落ちた歯石を誤嚥してしまうと誤嚥性肺炎を起こす可能性もあるため、無麻酔での歯石除去は危険です。

動物病院での歯石除去は、症状の進行具合や犬の健康状態によって、最善な治療方法と麻酔の可否を決めて行われます。

自宅で行う歯石除去の危険性

歯石除去について、麻酔のリスクから麻酔なしでのケアを希望されたり、ご自身で歯石を取りたいという飼い主さんもいるようです。

しかし、スケーラーは金属製で先端が尖っているため、家庭での歯石取りで犬の歯や歯肉、口周り、目などを傷つけて出血する、強い力が加わって顎を骨折する、犬が恐怖からデンタルケアを嫌がるようになるなどのリスクも伴います。

もし、スケーラーで歯石が取れたとしても、犬の歯を傷つけてしまうと細菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまう危険性もあるので、自宅でのケアとしてスケーラーの使用はおすすめできません。

また、インターネットの口コミランキングなどの情報では、歯石が簡単にポロッと取れる、すごく取れる、自然に取れる、歯石を溶かすといった歯石除去グッズの情報もありますが、情報を鵜呑みにせず、まずは動物病院に相談することが一番安全です。

自宅で歯石除去を行う際の正しいペット用デンタルケア用品の使い方

【獣医師監修】犬の歯石除去の方法は?麻酔のリスクや自宅ケアを解説 いぬのきもち
犬のデンタルケアをする上で大事なことは、歯石を形成する前の歯垢がついている段階で除去をすることです。(画像は、歯垢が付着している様子)
画像提供:プリモ動物病院
基本的に犬の歯に付着した歯石を自宅で除去することは難しいですが、歯垢除去グッズを活用して、歯石の形成を予防をすることは可能です。

歯垢除去スプレー

自宅で手軽にケアできるデンタルケアグッズの1つに歯垢除去スプレーがあります。即効性はありませんが、愛犬が痛みや恐怖を感じにくいので、体に負担をかけずに除去できるメリットがあります。

1日1回から2回ほど歯・歯肉に吹きかけることで液体が唾液と混ざり合い、口腔内の隅々まで歯垢除去効果が浸透することで、歯の表面にこびりついた頑固な歯石を浮かす効果が期待できます。

犬の歯垢除去スプレーを効果的に使うには、繰り返し使い続けることと用法を守ることが大切です。愛犬の口の中に直接スプレーしたり、歯ブラシを嫌がる場合は液体を吹きかけたおもちゃを与えたり、水やフードに混ぜて与えてよいものを選んで使うとよいでしょう。

歯垢除去ジェル

犬の歯垢を除去する商品にはジェルタイプもあります。塗るだけで歯の表面にあるエナメル質を滑らかにして歯石を浮かし、口腔内に浮遊する細菌を除去することで口臭予防の効果も期待できます。

ジェルタイプもスプレーと同様に、愛犬の口内に液体をたらすところからはじめましょう。

日常的な歯磨きで歯垢・歯石の予防ケアをしよう

子犬と歯ブラシ
Debra Porter/gettyimages
犬の歯垢は、およそ3〜5日ほどで歯石に変わってしまいます。歯垢・歯石が原因で発症するさまざまな病気から愛犬の口腔内を守るためには、日々の被毛のブラッシングと一緒に軽く歯磨きをするなど、予防歯科として子犬の頃から歯みがき習慣をつけることが大切です。

歯ブラシや指サックブラシ、指に巻きつける歯みがきシートなどを使って、理想は毎日、少なくとも3日に1回は歯磨きを行いましょう。

どうしても歯磨きが難しい場合は焦らずに、まずは口周りや歯茎に触れることからゆっくりと慣らしていき、歯磨きガムやロープなどのデンタルトイで一緒に遊びながら行う方法もあります。

日々のデンタルケアで愛犬の口内環境と歯の健康を守りましょう。
参考/『いぬのきもち』2016年2月号「病気・ケガから守るお手入れ厳選10」
監修/白畑壮先生(プリモ動物病院相模原中央院長)
文/maki
※費用はあくまで目安です。
※一部の写真はスマホアプリ「まいにちのいぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※症例写真以外、記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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