寒い冬は犬の腎臓病が増えやすい季節。“沈黙の臓器”と呼ばれる腎臓は、知らないうちに病気が進行しやすいといわれています。今回は冬に気をつけたい犬の腎臓病について、獣医師の室卓志先生にお話を伺いました。
どうして冬は腎臓のトラブルが起きやすいの?
そもそも、どうして冬は犬の腎臓病が増えるのでしょうか。
尿をつくったり、体の水分量を調節したりする腎臓の働きには、適度な水分が必要。しかし冬は水を飲む量が減る傾向にあるため、腎臓のトラブルが起きやすくなるのです。
犬がなりやすい腎臓病とは?
慢性腎臓病
慢性腎臓病は、3ヶ月以上続くあらゆる腎臓の病気の総称です。犬の場合は、糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)、腎嚢胞(じんのうほう)、腎結石、腎盂腎炎(じんうじんえん)などがよく見られます。このうち糸球体腎炎は尿検査でたんぱく尿が検出されることが多く、比較的早い段階で発見しやすいのが特徴です。
腎臓病は早期発見が難しいといわれていますが、血液検査で異常が出る前にあらわれる多飲多尿の症状に気をつけてあげましょう。腎機能が低下した状態が3ヶ月以上続くと、慢性腎不全といわれます。
急性腎障害
何らかの理由で、腎臓機能が急激に低下した状態です。腎臓そのものの病気だけでなく、レーズンやエチレングリコール(自動車用不凍液)、薬物による中毒、尿道閉塞(にょうどうへいそく)で尿が出ない、心臓病で血圧が下がるなどの結果、腎臓機能が低下した場合も含まれます。
とくに腎臓病に気をつけたい犬種って?
血統的に腎臓病を発症しやすいのは、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、サモエドなど。またバセンジーはファンコーニ症候群、ヨークシャー・テリアは蛋白漏出性腎症(たんぱくろうしゅつせいじんしょう)が見られます。
腎機能が低下するとあらわれる症状
腎臓の働きが低下すると以下のような症状があらわれることがあります。
- 水を飲む量が増える
- オシッコの量が増える
- 嘔吐する、食欲が落ちる
- 便秘気味になる
- 脱水症状が出る
- 下痢が続く
特に、1と2は血液検査で異常が出る前にあらわれやすい症状です。
犬の腎臓病を防ぐために心がけたいこと
先述のとおり、飲水量が減ると腎臓のトラブルが起きやすくなります。散歩中を含め、冬でもこまめに水分を摂らせてあげましょう。
また、余分な塩分を排出するのも腎臓の役目。塩分が増えると腎臓に負担がかかってしまうため、人の食べ物など塩分量の多いものは日頃から与えないようにしましょう。
少しでもいつもと違う様子が見られたら、すぐに獣医師に相談してくださいね。
お話を伺った先生/室卓志先生(JASMINEどうぶつ総合医療センター腎泌尿器科および消化器科の担当獣医師)
参考/「いぬのきもち」2022年1月号『知らないうちに重症化する“沈黙の臓器”だから気をつけたい! 腎臓・肝臓・膵臓の病気』
文/柏田ゆき
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。