ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、シニア犬や疾患のある犬を積極的に保護し、譲渡が難しい犬たちは生涯シェルターでお世話をする保護犬支援団体「ケンの家」について紹介します。
シニア犬や疾患があり、譲渡が難しい犬は、シェルターで穏やかな余生を過ごしてもらいたい
神奈川県横浜市の「ケンの家」を訪れてみると、小型犬から中型犬までの保護犬たち約25頭が元気に出迎えてくれました。シニア犬や疾患のある犬が多いと聞いていましたが、どの犬たちも表情が明るく、状態がとてもいいのが印象的。
代表の浅川晶枝さんは、ボランティアスタッフとともに、医療面をはじめ、日ごろのケアをきめ細かく行うことで、犬たちの健康を保つよう努めています。
とくに犬たちの食生活には気をつけていると浅川さん。
「体は毎日食べるフードと飲む水によってつくられるので、そこをおろそかにすると、どんなに医療をかけてもダメなんです。そのため、犬たちに与えているフードは獣医師監修の無添加の冷蔵保存が必要なドライフードを基本にして、飲み水は、高性能の浄水器を通したものにしています」
良質な食生活と、東洋医学などを取り入れたケアで、たとえばアレルギーがひどかった犬の症状が改善されたことも。また、体の健康とともにメンタル面のケアも欠かしません。
ケンの家では、悪徳な繁殖業者からレスキューされた犬、多頭飼育崩壊や飼い主さんによる飼育放棄か
ら保護された犬などが多いため、最初はなかなか心を開けない犬もいます。
「なかでもシニアになるまで飼い主さんとともに暮らしていた犬が、経済的に苦しくなったからなどの理由で飼育放棄されてしまうケースが本当に不憫なんです。犬は最後まで飼い主さんを信じて、迎えに来ることを待っていますから」と語る浅川さん。
ボランティアスタッフとともに、そうした犬たちに心からの愛情をかけた結果、再び笑顔を取り戻してくれたときが、いちばんうれしい瞬間だそう。
浅川さんは、保護活動のみならず、保護犬を少しでも減らすための啓蒙活動も行っています。2022年5月には、浅川さんの活動に賛同された女優で愛護活動家の浅田美代子さんが、ケンの家のトークイベントに協力。終生飼育の徹底についてなど、お話しされました。
「ケンの家」で、最期は幸せに虹の橋を渡る犬も
最後に浅川さんは、「今までケンの家で看取った犬たちは約300頭になりますが、毎回そのお別れはとてもつらく、どのコも決して忘れることはできません。どんな犬も最期には手厚いケアが必要になります。犬と暮らすなら、最後は看取ってあげる覚悟をしっかりもってもらいたい。そして、みんな最期は、大好きな家族のもとで虹の橋を渡ってもらえれば」と強く語ります。
次回は、「ケンの家」を卒業して幸せになった犬たちをレポートします。
※保護犬の情報は2022年10月6日現在のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年12月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/尾﨑たまき
写真提供/ケンの家
取材・文/袴 もな