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シニア犬や疾患のある犬を積極的に保護し続ける保護犬支援団体「ケンの家」

ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。

今回は、シニア犬や疾患のある犬を積極的に保護し、譲渡が難しい犬たちは生涯シェルターでお世話をする保護犬支援団体「ケンの家」について紹介します。

活動開始から30年、保護した犬は700頭に上り、300頭の看取りを行ってきた

一般社団法人「ケンの家」代表・浅川晶枝さん。2002年に実妹とともに自宅で数頭の犬の保護活動を始める。その後、規模を少しずつ広げ、2011年には一般社団法人に。何度かの引っ越しを経て2014年に広いスペースを有する現在のシェルターを設立
一般社団法人「ケンの家」代表・浅川晶枝さん。2002年に実妹とともに自宅で数頭の犬の保護活動を始める。その後、規模を少しずつ広げ、2011年には一般社団法人に。何度かの引っ越しを経て2014年に広いスペースを有する現在のシェルターを設立
神奈川県横浜市の郊外にシェルターをもつ保護犬支援団体「ケンの家」は、シニア犬や障害のある保護犬たちを積極的に引き取ってお世話をしています。なかでも譲渡が難しい犬たちは、終生このシェルターで手厚いケアを受け、穏やかに暮らすことができます。
「ケンの家は、行き場のない不遇な状況に置かれた犬たちを保護して新しい飼い主さんに譲渡するほかに、ホスピスのような役割もするところなんです」と語る代表の浅川晶枝さん。

犬の保護活動を始めて約30年になりますが、その間救った犬の命は700頭に上り、そのうちケンの家で看取った犬たちは、約300頭になるそうです。
九州の動物愛護センターから来たるいくん(推定10才)は、重度のアレルギーがあるため、食事療法などで治療中
九州の動物愛護センターから来たるいくん(推定10才)は、重度のアレルギーがあるため、食事療法などで治療中

放浪していた犬との出会いが活動のきっかけに

関東の愛護センターから来た元野犬のココちゃん(推定3才)。まだ人を警戒しますが、高校生のスタッフにだけ心を許すそう
関東の愛護センターから来た元野犬のココちゃん(推定3才)。まだ人を警戒しますが、高校生のスタッフにだけ心を許すそう
浅川さんが、保護活動の道に進むきっかけとなったのが、今から約30年前、路上で放浪していた犬との出会いからでした。
「その犬を放っておけず保護することにしましたが、当時私はペット禁止の住居に住んでいたので、親類に一時的に預かってもらうことに。『ケン』と名づけたその犬は、ある日不注意から脱走してしまい、必死に捜し歩いて近隣の保健所にも確認をしに行ったんです。そのとき、保健所に収容されている犬の数の多さに衝撃を受けました。当時の人気犬種が多数収容されていて、みんな絶望した表情を浮かべていて……」
 
そのとき、浅川さんは「この犬たちをなんとか救ってあげたい」と強く思ったそうです。
その後、捜していたケンくんは残念なことに交通事故で亡くなったことがわかりました。

「ケンが命を落としてしまったことは一生の後悔になっています。でもケンのおかげで私は保護活動の道に進むことになった。それを忘れないためにシェルターの名前を『ケンの家』にしました」
 
そして、浅川さんは志を同じくする妹さんとともに、保健所などから一頭ずつ保護犬の引き取りを行うように。そのうちに、保健所にいるシニア犬や疾患のある犬たちには、引き取り手がどこにもなく、収容所に残っていることに気づきました。

「そんな犬たちは、収容所で孤独のうちに死を待つだけになります。それならうちで保護してあげよう、と最初は単純に考えたのですが、まわりからはかなり反対されました。シニア犬や疾患のある犬の保護には医療費など、通常以上にお金がかかるため、すぐに破産するよって……。

でも、躊躇していたら次の週には、その犬は亡くなってしまう。とにかくなんとかなる!という気持ちでやってみることにしたんです」
悪徳ブリーダーから保護したスピッツのそらくん(推定12才)。ガリガリで毛が抜け落ちていたのが、こんなにきれいに
悪徳ブリーダーから保護したというスピッツのそらくん(推定12才)。ガリガリで毛が抜け落ちていたのが、こんなにきれいに

姉妹で資金をなんとか捻出しながら犬たちを保護

浅川さんは妹さんとともに、なんとか無理のない範囲で犬たちの保護を行うことに。そして、シェルターの規模を少しずつ広げて、2014年には、現在の十分な広さのある住居兼シェルターに場所を移し、より多くの保護犬を迎えるようにしました。

「活動を始めて30年たった今、登録ボランティアさんの数は20名を超え、運営資金は月額の継続支援型クラウドファンディングなどで得るようにしています。シェルターにはいちばん多いときで40頭の保護犬たちがいましたが、現在は20〜25頭です。それでも健康状態がよく譲渡可能な保護犬は全体の2〜3割なので、資金面などのやりくりはいつも大変ですね」
毎日の散歩は1回に40分~1時間、犬の健康状態に合わせて数頭ずつ行い、すべての犬が終わるまで5時間くらい
毎日の散歩は1回に40分~1時間、犬の健康状態に合わせて数頭ずつ行い、すべての犬が終わるまで5時間くらいかかります
不定期で開催する譲渡会では、手作りの犬グッズなどを販売するマルシェも行い、活動資金の足しにしています
不定期で開催する譲渡会では、手作りの犬グッズなどを販売するマルシェも行い、活動資金の足しにしています
次回は、疾患がある犬やシニア犬のお世話、譲渡が難しい犬の看取りまでを責任をもって行う「ケンの家」の活動をレポートします。
※保護犬の情報は2022年10月6日現在のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年12月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/尾﨑たまき
写真提供/ケンの家
取材・文/袴 もな
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