犬と暮らす
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シニア犬や疾患のある犬を積極的に保護し続ける保護犬支援団体「ケンの家」
今回は、シニア犬や疾患のある犬を積極的に保護し、譲渡が難しい犬たちは生涯シェルターでお世話をする保護犬支援団体「ケンの家」について紹介します。
活動開始から30年、保護した犬は700頭に上り、300頭の看取りを行ってきた
「ケンの家は、行き場のない不遇な状況に置かれた犬たちを保護して新しい飼い主さんに譲渡するほかに、ホスピスのような役割もするところなんです」と語る代表の浅川晶枝さん。
犬の保護活動を始めて約30年になりますが、その間救った犬の命は700頭に上り、そのうちケンの家で看取った犬たちは、約300頭になるそうです。
放浪していた犬との出会いが活動のきっかけに
「その犬を放っておけず保護することにしましたが、当時私はペット禁止の住居に住んでいたので、親類に一時的に預かってもらうことに。『ケン』と名づけたその犬は、ある日不注意から脱走してしまい、必死に捜し歩いて近隣の保健所にも確認をしに行ったんです。そのとき、保健所に収容されている犬の数の多さに衝撃を受けました。当時の人気犬種が多数収容されていて、みんな絶望した表情を浮かべていて……」
そのとき、浅川さんは「この犬たちをなんとか救ってあげたい」と強く思ったそうです。
その後、捜していたケンくんは残念なことに交通事故で亡くなったことがわかりました。
「ケンが命を落としてしまったことは一生の後悔になっています。でもケンのおかげで私は保護活動の道に進むことになった。それを忘れないためにシェルターの名前を『ケンの家』にしました」
そして、浅川さんは志を同じくする妹さんとともに、保健所などから一頭ずつ保護犬の引き取りを行うように。そのうちに、保健所にいるシニア犬や疾患のある犬たちには、引き取り手がどこにもなく、収容所に残っていることに気づきました。
「そんな犬たちは、収容所で孤独のうちに死を待つだけになります。それならうちで保護してあげよう、と最初は単純に考えたのですが、まわりからはかなり反対されました。シニア犬や疾患のある犬の保護には医療費など、通常以上にお金がかかるため、すぐに破産するよって……。
でも、躊躇していたら次の週には、その犬は亡くなってしまう。とにかくなんとかなる!という気持ちでやってみることにしたんです」
姉妹で資金をなんとか捻出しながら犬たちを保護
「活動を始めて30年たった今、登録ボランティアさんの数は20名を超え、運営資金は月額の継続支援型クラウドファンディングなどで得るようにしています。シェルターにはいちばん多いときで40頭の保護犬たちがいましたが、現在は20〜25頭です。それでも健康状態がよく譲渡可能な保護犬は全体の2〜3割なので、資金面などのやりくりはいつも大変ですね」
写真/尾﨑たまき
写真提供/ケンの家
取材・文/袴 もな
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