犬にも喜怒哀楽があり、その豊かな感情を表情やしぐさ、鳴き声などを通じて表しています。犬の感情表現を知って愛犬の気持ちを正しく読み取れれば、困りごとの解決に役立ち、お互いの関係性も良好に。今回は喜怒哀楽のうち、なるべく早い対応が必要な「怒」について、犬の行動学にくわしい獣医師の菊池亜都子先生に教えていただきました。
嫌なもの・ことを拒否する気持ち
苦手なことや嫌いな相手に対して、それをやめてほしい、遠くに行ってほしいと強く思うと、犬は「怒」の感情をいだきます。相手に対して強気に怒りを示す場合と、不安や恐怖が募ることで「怖いからやめて!」と怒る場合とがあります。
【表情】鼻の頭にシワを寄せて、歯を見せる
鼻上を引きつらせて、口を開けて歯や歯ぐきを見せます。目つきが鋭くなり、眉間が寄るように見える犬も。「ケンカしてもいいぞ!」という強気な怒りだと耳は前を向き、「怖いからやめて!」という消極的な怒りだと、耳は後ろに倒れます。
【声】低いうなり声を上げるか、連続して吠え立てる
「ヴ~」といううなり声が「怒」のサイン。「ワワワワン!」と連続して吠え立てることも。マズルの小さい犬や短頭種は表情だけでは「怒」の感情を判断しにくいため、声や吠え方も確認しつつ気持ちを正しく読み取って。
【体の様子・しぐさ】全身に緊張感があり、背中の毛が逆立つことも
全身の筋肉がかたくなり、一つ一つの動作に緊張感が漂います。首筋から背中のあたりの筋肉が硬直して毛が逆立つ場合も。不安や恐怖から「こっちに来ないで!」「やめて!」と怒る場合は、腰が引きぎみになります。
【しっぽ】高く上げていたら、「本気でやるぞ!」と強気に怒っているサイン
怒ってしっぽを上げているときは、強気な怒りを示しています。このときしっぽの筋肉はこわばっているため、しっぽを振っていたとしても、しなやかさはあまり見られません。しっぽの先まで力が入っているような状態です。
怒っているときだけじゃない! ポジティブな感情のときにもうなります
犬は「怒」の感情をいだいているときに、うなって自分の気持ちを相手に伝えます。それ以外でも、遊んでいる最中など、楽しい気持ちが高ぶって興奮し、うなることも。遊びの途中でうなったら、いったん休憩し、興奮させすぎないようにすると◎。
菊池先生によると、「怒」の感情が見られたら、嫌な相手から離す、嫌なことをやめるなどの対処が必須。その上で、嫌いな相手に無理に会わせない・近づけない、お手入れであれば時間をかけて慣れさせるなど、「怒」をいだかせない生活を心がけることが大事なのだそう。
「怒」の感情を見逃すと、ケガや事故につながりかねないケースもあるので、飼い主さんが見逃さないように気をつけたいですね。
※犬の感情は刻一刻と変化します。今回ご紹介した感情やその表現方法はあくまで一例です。
お話を伺った先生/獣医師・菊池亜都子先生
参考/「いぬのきもち」2023年1月号『犬の喜怒哀楽ずかん』
写真/尾﨑たまき、佐藤正之、平林美紀
イラスト/くるみるか
文/いぬのきもち編集室