愛犬がなめる姿を見て疑問に思ったことはありませんか? 毛布にスリッパ、飼い主さんの顔や自分の足先……。今回は、そのなかから自分の体をなめる理由を、犬の行動学にくわしい獣医師の荒田明香先生に教えていただきました。
かゆみや違和感、痛みで自分の体をペロペロ
「なんだかムズムズする……」
散歩中に肉球を傷つけてしまい痛みがある、爪が床に当たって歩きづらいなど、体に感じたなんらかの違和感に対して、その部分を気にしてなめるのはよくあること。なめることで炎症がひどくなることも多いので、すぐにおさまらない場合は獣医さんに相談を。
●どう対処したらいいの?
愛犬の様子を観察して、同じ部位ばかりをなめたりゴハンや散歩などほかのことをしていても気にしていないかチェック。いつもと違うと感じたら、皮膚炎や関節炎などの病的な原因を探ってみましょう。
オシッコのあと陰部をなめるのはグルーミングのため
「キレイにしよう」
犬が自分の体を丁寧にペロペロなめるのは、毛づくろいのひとつで、キレイ好きな犬によく見られます。体についた水分やオシッコをしたあとの陰部、被毛の汚れなどを舌でなめとって清潔を保っています。
●どう対処したらいいの?
気になる汚れやオシッコが取れたらやめるなら問題ありません。頻繁になめ続ける場合は、泌尿器系の病気が隠れていることもあるので、オシッコの回数や量、血尿や膿などが出ていないか注意して。
寝る前や寝起きになめるのはただのクセ
「ぼぉーーっ」
人が眠いときになんとなく目をこするに、犬も眠る前や寝起きに無意識のうちに足や体をなめることがあります。子犬が母犬になめられてうっとりして眠るように、眠る前に自分の足や肉球などの体をペロペロなめると安心するのでしょう。
●どう対処したらいいの?
眠る前だけなめるのならとくに心配ありません。なめたあとや、なめながら眠ってしまうようなら、単なる習慣やゆったりした気持ちでなめているので、無理にやめさせようとせず、そっとしておいてあげて。
不安や緊張、退屈などストレスを感じてペロペロ
「大丈夫、落ち着け……」
苦手な犬に会って緊張しているときや初めての場所で不安を感じているとき、動物病院やドッグカフェなど苦手な場所から去りたいけど出られないという葛藤を感じたときなどにも、一見無関係に見える「なめる」しぐさをすることで、犬は自分自身の気持ちをほぐそうとしています。
●どう対処したらいいの?
イライラして数秒なめる、退屈でずっとなめるなどなめ方もさまざま。愛犬のストレスに気づいたら、苦手なものや場所からいったん離れて気分転換をさせたり、抱っこなどをして気持ちを紛らわせてあげましょう。
飼い主さんの気をひくためにペロペロ
「こっち見てよ~」
犬が部屋で退屈しているときなど、飼い主さんを横目で見ながらペロペロ。飼い主さんの前でばかりなめるのは、なめている姿を気にかけてかまってくれるのを待っています。同じく、飼い主さんへのアピールのために物や飼い主さんの手をなめることもあります。
●どう対処したらいいの?
「なめちゃダメよ」と飼い主さんが反応すると、ますますなめるように。ほかの部屋に行くなどして取り合わないようにしたり、愛犬がなめていないときにしっかり遊んだりかまってあげて満足させましょう。
いかがでしたか? 「言葉で体調を表すことができない犬は、体の不調や痛みからくるイライラやストレスが“なめるしぐさ”として表面化しているケースが多くあります。日ごろから愛犬のしぐさなどを観察し、定期的に健康診断やドッグドックなどを受けて愛犬の体調管理に努めましょう」(荒田先生)
お話を伺った先生/東京大学附属動物医療センター行動診療科特任教授、獣医行動診療科認定医 荒田明香先生
参考/「いぬのきもち」2017年10月号『犬はどんな気持ちでペロペロするの?』
写真/佐藤正之
文/ヨシノキヨミ