犬と暮らす
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愛犬の愛し方、偏っていませんか? 「愛犬依存」とは
獣医師で心理カウンセラーの先崎直子先生と、獣医師でペットドッグトレーナーの藤本聖香先生にお話を伺いました。
“愛犬依存”とは、飼い主さんが生きるために愛犬に頼りきってしまう状態
愛犬から片時も離れられなくなるなど、飼い主さんの通常の生活がままならなくなることも。「犬は愛情深い動物なので、とくに依存関係になりやすいかも」(先崎先生)。
心の中に愛犬のスペースはありますが、ほかのすべきこととのバランスが保たれている状態。これは愛犬に依存しすぎることなく、愛犬を愛している人の心の状態といえます。
生活をするうえで両立しなくてはいけないことのうち、愛犬への優先度や比重が大きくなりバランスが崩壊。愛犬のスペースがどんどんふくれ、心が愛犬でいっぱいになります。
飼い主さんが″愛犬依存″の状態になることで、愛犬も″飼い主依存″に
愛犬依存により、飼い主さんの生活が破綻することも
「愛犬といっしょにいたい」「離れるのはかわいそう」と、愛犬を留守番させることができなくなります。留守番させても、出先で愛犬のことを心配し用事がままなりません。葬儀など急で重要な用事に対応できなくなることも。
●ペットロスが深刻になりやすい
誰でもペットロスにはなりえます。しかし、愛犬依存により愛犬を自分の一部のように考えるため、長引くことも。「愛犬が生きているうちに死を考えて悲しくなる予期悲嘆も大きい傾向があると感じています」(先崎先生)。
常に愛犬のことを気にかけているので、ずっと気を張っている状態に。長く続くと体調を崩したりすることもあります。ほとんどの場合、その原因に自分で気づけず、慢性的な疲労につながります。
●家族との関係が悪くなる
常に愛犬のことを優先してしまうため、いっしょに住むほかの家族との仲がギクシャクします。愛犬も依存する飼い主さん以外の家族には攻撃的になることもあり、より溝が生まれやすくなります。
●吠えグセがつきご近所トラブルに
飼い主さんが愛犬の要求にすべて応えるので、どんどんわがままに。吠えや噛みなどの問題行動がエスカレートします。「とくに吠えは、ご近所トラブルになりやすく、最悪引っ越しというケースも」(藤本先生)。
愛犬依存の状態は、大切な愛犬の健康をも脅かします
飼い主さんに甘やかされ、要求するだけおやつや人の食べ物が与えられるので、万病のもととなる肥満に。「犬の体によくないものも、愛犬にねだられると食べさせてしまう人も」(先崎先生)。
●分離不安を起こすことも
愛犬依存は、愛犬の精神的な自立を妨げ、愛犬が不安定になりやすいです。飼い主さんと少し離れるだけで問題行動が出る分離不安などの問題行動につながる要因に。
●動物病院への入院ができない
飼い主さんの過剰な不安や、愛犬が飼い主さんから離れられないことによって入院ができず、治療の方法が制限されることも。また、診察室に入るだけでも大きなストレスを感じてしまうなど、通常の診察もままならない状況になることもあります。
飼い主さんに頼りがちになるので、社会性が身につきません。「社会性がない犬だと外を怖がってまったく歩けないことも多く、健康維持の基本である散歩ができなくなることも。足腰の機能も弱まります」(藤本先生)。
●ほかの人や犬を極度に怖がる
飼い主さんばかりとふれあうことになるので、ほかの人や犬に対しての〝免疫〞がつきません。そのため、外へ出かけてほかの人や犬に会うたびストレスを受けることになり、健康を害することも。
参考/「いぬのきもち」2023年4月号『愛犬依存にご用心!』
イラスト/ヤマグチカヨ
文/いぬのきもち編集室
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