しつけインストラクターとしてふだん飼い主さんたちの相談を受けている岡田敏宏先生に、最近相談が増えている犬の病気・ケガを教えていただきました。とくに深刻度が高いと思われるものから順番にご紹介します。イマドキの意外な原因や背景に要注目!
【糖尿病】トイ・プードルは好発犬種。甘~いおやつを与えすぎ!?
人では「国民病」とまでいわれる糖尿病。これは、膵臓でつくられるホルモン(インスリン)の不足などによって、血液中の糖の濃度(血糖値)が上昇。それによって引き起こされるさまざまな病態の総称です。「トイ・プードルはもともと糖尿病の好発犬種ですが、最近の飼い主さんを見ていると、それに輪をかけるように、砂糖の量を気にせずおやつを与えすぎているのも心配です」
※アニコム「家庭どうぶつ白書2022」2-2-2「他犬種に比べ罹りやすい疾患」より
●考えられる原因は
・おやつの与えすぎ
・トッピングが多すぎ
・他人の基準に合わせすぎ など
【歯周病】歯みがきは重要だとわかりつつ、練習不足の飼い主さんが多い!?
「歯みがきの重要性はわかっていながらも、多忙で練習の時間がとれず、つい歯みがきを後回しにして、愛犬を歯周病にする飼い主さんが増えていると感じます。歯石除去してもらえば大丈夫、と勘違いしているケースも。歯みがきガムを与えていても、左右をバランスよく噛めていなければ歯石の原因に」
●小さすぎる犬が増えて麻酔のリスクも増加!?
小型犬ブームに伴い、体が小さすぎる犬が増えています。体重が2㎏を下回ると麻酔をかける際に体に負担がかかる場合も。避妊・去勢手術や歯石除去の際は獣医師と相談を。
【誤飲・誤食】家の中での時間が増えて遊びの延長で食べる犬も
「コロナ禍を境に室内で遊ぶ時間が増えて、今まで口にしなかったものを遊びの延長で誤飲・誤食するケースが増えています。愛犬が食べてはならないものをかじり、飼い主さんがあわてて取り上げようとすることで、『取り返したい』という犬の本能を刺激してしまい、クセになって誤飲事故が増加する場合も」
●相談事例が多いもの
・フロアマット
・おもちゃ
・マスク
・植物 など
【骨折・脱臼】飼い主さんが気をつけていても、家族や他人が落とす場合が
「ソファから落ちるなど、生活環境が原因のほか、じつは飼い主さんではなく、子どもやふだん愛犬の世話をしていない家族などが愛犬を高所から落として骨折・脱臼させるケースが増えているようです。コロナ禍以来、久しぶりに会った家族なども要注意」
●正しい抱っこができない飼い主さんも多い!?
「抱っこの仕方を間違って覚えている飼い主さんも多い」と岡田先生。愛犬の前足だけを腕に引っかける、いわゆる「縦抱っこ」は犬の腰に負担がかかるうえに、嫌がって暴れがちなので要注意です。
【膀胱炎】外でしかトイレができず、我慢させすぎて膀胱炎に
「室内トイレのしつけができず、外でしかトイレができない愛犬の相談が増えてきています。雨の日でも台風の日でも散歩に行く、という解決法をとる飼い主さんが多いですが、行きたいときにトイレに行けないという環境から、排泄を我慢しすぎて膀胱炎になる犬もいるようです」
【皮膚トラブル】正しいブラッシングのやり方を知らない飼い主さんが多い
「しつけや健康への意識が高い飼い主さんは多いですが、お手入れについては正しい知識がなく、なんとなくで行っているケースが目立ちます。とくにブラッシングはブラシの持ち方から間違っているなどで、ブラッシングするたびに愛犬に痛みを与えたり、毛を傷ませることも」
●ロングコートの犬はドライボックスに注意を
愛犬を中に入れておくだけで、被毛を乾かせるドライボックスが人気です。正しく使えば便利なアイテムですが、ロングコートの犬の場合は、ブラッシングをしながら乾燥させないと毛玉が増える原因に。愛犬の毛のタイプに合った使い方を心がけるとよいでしょう。
【腎臓病】寒さによる飲水量の減少やミネラルウォーターが結石の原因に
「冬になると寒さから飲水量が減り、腎臓病を悪化させてしまう犬は以前から多いですが、昨今では『おいしいお水を飲ませたいから』と、ミネラルウォーターを好んで与える飼い主さんが見受けられます。しかし、ミネラルウォーターの種類によっては結石の原因になることがあります。ミネラル成分が多く含まれる硬水には要注意です」
近年の環境変化に合わせて、愛犬の病気やケガのきっかけとなるものは多種多様に変わります。常に「イマドキ」の情報をチェックしておきましょう。
お話を伺った先生/「Pet Life Consulting シンビオーシス」代表。岡田敏宏先生
参考/「いぬのきもち」2023年12月号『飼い主さんが気づきにくいイマドキの病気・ケガ』
イラスト/坂本 彩
文/いぬのきもち編集室