視覚や聴覚などが低下しがちなシニア犬に安心感を与えるのが「触れる」行動。ぬくもりが伝わり安心するだけでなく、マッサージで体をほぐすこともできます。
今回は、獣医師の佐々木彩子先生に、シニア犬にとって「触れる」ことの役割や触れ方、またおすすめのマッサージを教えていただきます。
シニア期は3つのことを意識して
犬は年をとると、視覚や聴覚、体の動きなどが鈍くなります。犬は、老化による変化が自分ではわからないので、今までできていたことができなくなり、不安や戸惑いを感じたり、ときにはいらだちを覚えたりすることもあります。
でもそんな不安や不調も、「見て話す」「触れる」という基本的なお世話と、犬の「立つ」行為についてそれぞれ見直せば、じつは解決できることが。いつまでも明るく元気な愛犬でいてもらえるように、さっそく今日から実践してみてください。
今回は「触れる」について詳しくお伝えします。
ぬくもりを伝えることで安心感がアップ
飼い主さんのぬくもりは、目や耳が悪くなりがちなシニア犬にとって何より確実な安心材料です。さらに年齢とともにこわばった関節や筋肉を、触れてマッサージすることでやわらげることが可能になります。「触れる」行為はシニア犬にとって必要不可欠です。
基本の「触れる」
突然触ったり上からおおいかぶさるように手を出したりすると、シニア犬は驚いたり怖がったりしがちです。まず声をかけてこちらの存在に気づかせてから、低い姿勢になり、やわらかな手つきでふんわり触れてください。
こんな「触れる」も取り入れて
お手入れ前に触れる
なでられても嫌がりにくい、肩や背中、胸などを、ほめ言葉や前向きな印象の言葉をかけながら、やさしくなでましょう。徐々に不安が消えて体の緊張もほぐれ、苦手なお手入れでも受け入れやすくなります。
ほめるときに触れる
シニア犬は声だけでほめても耳が遠いなどの理由で「ほめられた」とわからず困惑することがあります。ほめたらなでて、可能ならごほうびも与えましょう。年を重ねても「またほめられたい」と思わせてください。
マッサージ&ストレッチによる「触れる」テク
犬は年をとると自分でノビをして体をほぐす機会が減る傾向に。飼い主さんが触れていたわってあげましょう。
1. 足の抵抗運動を利用したストレッチ
引っ張られた足を愛犬自身の力で引き戻す、反動の動きを利用したストレッチ。寝起きや散歩前に行うのがおすすめです。前後各5回を目安に行ってください。
<後ろ足>
愛犬のひざに手を当てて、真後ろの方向に押してください。同時に後ろ足の先をやはり真後ろにそっと引っ張りましょう。後ろ足の先がお尻より後ろにきたら手をゆるめ、自分の力で後ろ足を引き戻させて。
<前足>
愛犬のひじに手を当てて、前方にそっと押します。同時に前足の先をやはり前方にやさしく引っ張ってください。前足がある程度前方に伸びたら手をゆるめ、自分の力で前足を引き戻させてください。
※手をゆるめても足を戻さない場合は、足先を軽くつつくなどして刺激し、自力で引き戻させましょう。
※関節痛などがある場合は、無理をさせず、ストレッチを控えましょう。
2. 背骨に沿って指でなみなみマッサージ
いっしょにくつろぐ際におすすめのマッサージ。愛犬の体をほぐし、リラックスさせる効果があります。また体温調整機能が乱れてのぼせやすくなったシニア犬の体質改善にもなるそうです。
首のつけ根からしっぽのつけ根に向けて、背骨に沿って指でなでてください。指先で波線を描くように、指を開いたり閉じたりしながら、しっぽ側に向けてなでていきます。
シニア犬に安心感を与える「触れる」行動は、とても重要で、マッサージやストレッチなら体を動かすこともできます。日常生活に取り入れて、愛犬の安心感をアップさせてあげてくださいね。
お話を伺った先生/佐々木彩子先生(キュティア老犬クリニック獣医師)
参考・写真/「いぬのきもち」21年1月号『愛犬の心をつかみ、アンチエイジングにも! 見て話す 触れる 立つ 3つのキーワードで考えるシニア犬との接し方』
文/宮田あゆみ