犬の痛みには「慢性」と「急性」があり、実は多くの犬が「隠れた慢性の痛み」を抱えていると考えられています。そこで今回は、犬の慢性痛の特徴や原因、見抜くポイントなどについて、獣医師の枝村一弥先生に解説していただきました。
犬の痛みは2種類「急性痛」と「慢性痛」の特徴とは
軽度から重度まで犬の痛みの程度はさまざまですが、一般的に痛みは「急性痛」と「慢性痛」に分けられます。
犬の急性痛の特徴
急性痛は、ケガや病気、手術などによる一時的な痛みで、治癒とともになくなるのが特徴です。炎症や傷といった目に見える症状が出るほか、患部を頻繁になめる、触ろうとすると怒るといった犬の様子も見られるため、痛みに気づきやすいケースが多いでしょう。
犬の慢性痛の特徴
痛みが長期間続く慢性痛は、関節や脊髄、神経など、体の見えない部分に生じる疾患が原因となることが多いです。気づかないうちに発症し、受診することがないまま痛みが慢性化することも。
実は「慢性痛」を抱えている犬が多いという報告も
犬全体の20~25%、つまりは5頭に1頭近くが継続的な痛みを伴う「関節炎」を抱えているという報告があります。また、日本大学動物病院の調査では、来院した犬のうち12才の犬の45%に、変形性関節症や変形性脊椎症が見られたいう報告も。
ことのことから、多くの犬が慢性痛を抱えていることがわかります。
犬の「慢性痛」の“元凶”である関節炎
犬の慢性痛の原因はさまざまですが、関節炎が犬の慢性痛を引き起こすケースが多いとされています。
関節炎の主な原因
年齢を重ねると、骨と骨をつなぐ関節部分の軟骨が徐々にすり減り、関節にこわばりや痛みなどの症状が。また年齢に関わらず、肥満の犬は重い体重を支えなければならないため、背骨や関節に過度な負担がかかりやすく、関節炎の発症リスクを高めるでしょう。
さらに、運動のしすぎ、ジャンプや段差による足腰への強い衝撃は、関節炎を引きおこす原因に。そのほか、ケガや脱臼、関節の病気にかかっていると、関節の軟骨に変化が起こり関節炎を招くことがあるでしょう。
こんな犬種も要注意!
犬種では、ポメラニアン、シェットランド・シープドッグ(シェルティ)、コーギー、柴、トイ・プードル、ラブラドール・レトリーバーなどが、関節炎になりやすいとされています。
とくに大型犬は関節炎になりやすい傾向があるので、心得ておくとよいでしょう。
犬の「慢性痛」を見抜く10のチェックポイント
犬の慢性痛は気づきにくいため、日ごろから愛犬の様子をよく観察してあげることが大切です。以下のような行動を愛犬が取っていたら慢性痛を抱えているサインかもしれません。まずは、かかりつけ医に相談してみましょう。
チェックポイント
- 散歩に行きたがらなくなった。散歩に行っても走らなくなりゆっくりと歩くようになった
- 階段の段差の上り下りを嫌がるようになったり、その際の動作がゆっくりになった
- 家の中や外であまり動かなくなった
- 高いところへの上り下りをしなくなった
- 立ち上がるのがゆっくりでつらそうに見える
- 元気がなくなったように見える
- 飼い主さんやほかの犬とあまり遊ばなくなった
- しっぽを下げていることが多くなった
- 足を引きずったりケンケンしながら歩いたりするようになった
- 寝ている時間が長くなった、もしくは短くなった
慢性痛は放置しておけばそのうちよくなるものではありません。痛みに早く気がついて適切に対処することは、愛犬の健康寿命を延ばすことにもつながるので、サインを見逃さないようにしましょう。
お話を伺った先生/枝村一弥先生(獣医師 博士(獣医学) 小動物外科専門医 日本大学生物資源科学部獣医学科獣医外科学研究室教授 「動物のいたみ研究会」代表)
参考/「いぬのきもち」2022年5月号『それは愛犬からのSOSかも!? 犬の“隠れ痛み”を見抜くヒント』
文/中島 萌乃
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。