尿石症は、オシッコの通り道に石のような結石が存在し、トラブルを起こす病気です。人の尿石症と犬の尿石症はどのような違いがあるのでしょうか。今回は、犬の尿石症ならではの原因と予防法について、獣医師の宮川優一先生に教えていただきました。
尿石症とは
尿石症とは、尿中のミネラル分などが結合し、石のように固まった固形物(結石)が、腎臓や尿管、膀胱、尿道という尿の通り道(尿道)にある病気で、血尿や排尿困難、腎不全などを引き起こすこともあります。
結石がつくられるのは腎臓と膀胱で、そこから移動した結石が、尿管や尿道で見つかるケースもあるでしょう。飲水量が減る冬に多い病気ですが、最近は冷房の効いた部屋で過ごすことで飲水量が減るため、夏場にも多くなっています。
結石が見える大きさになるには時間がかかる
結石の大きさは、砂状のものから数cmのものまでとさまざまです。結石がつくられるのにかかる時間については正確なデータはありませんが、小さな結石で約1週間、目に見える大きさになるには約1カ月かかるのではないかと考えられています。
尿石症が「怖い」といわれる2つの理由
腎臓病を起こすことがある
腎臓や尿管は2つあるため、片方がダメージを受けても症状があらわれにくく、気づかないうちに結石が腎臓や尿管の粘膜を傷つけたり、詰まったりして腎臓病を発症させてしまいます。
膀胱炎に進行してしまうことも
膀胱結石を放置すると、結石が膀胱の粘膜を傷つけて機能が低下します。すると、膀胱にたまったオシッコを全部出しきれなくなることで、膀胱内にはいつもオシッコが残っている状態に。そして、尿道から侵入した細菌が残尿内で増殖すると、治りにくい膀胱炎のきっかけになってしまうのです。
尿石症の予防法とは
十分な水分摂取
水分をしっかりと摂り、オシッコをたくさん出すことが尿石症の予防と再発防止にいちばん大切。尿石症は再発が多いですが、飼い主さんが愛犬に十分な水分を摂らせることで、再発する可能性が低くなります。
脂肪分の少ない肉のゆで汁を水に加えて風味をつける、愛犬が日頃よくいる場所の近くに水飲みボウルを置いて、水を飲みやすい環境を整えてあげるなど、少しでも水分摂取量を増やせるようにしましょう。
オシッコは1日3~4回することを目標に
尿石症のリスクを減らすためには、1日3~4回オシッコをすることが理想です。膀胱にためる時間を短くし回数を増やすためには、室内トイレを教えておくのがよいでしょう。
また、散歩などで体を動かすことも大切です。排尿が促されるほか、代謝が活発になることで体内生成される水が増え、尿量がアップにつながります。
尿石症の予防と再発防止には「水」がとても大切です。愛犬が好む水分の摂取法を見つけて、飲水量を増やす工夫をしましょう。
お話を伺った先生/宮川優一先生(日本獣医生命科学大学獣医内科学研究室第二・准教授 博士(獣医学) 獣医師)
参考/「いぬのきもち」2024年5月号『予防のカギは「水」です!いぬの尿石症』
文/山村晴美
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。