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【獣医師監修】犬にチョコレートは絶対にNG。致死量、食べてしまったときの症状と対処方法
犬にチョコレートを与えてはいけません。犬がチョコレートを食べて死亡した例も報告されています。一命を取り留めても後遺症をもたらす可能性もあるので、犬がチョコレートを誤食しないよう細心の注意が必要です。チョコレートで中毒を起こした場合の症状、致死量、対処法について紹介します。

佐野 忠士 先生
酪農学園大学獣医学群獣医学類准教授
酪農学園大学附属動物医療センター 集中治療科診療科長
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了
北里大学獣医畜産学部および同大学獣医学部勤務
日本大学生物資源科学部獣医学科勤務
●資格:獣医師/博士(獣医学)/世界的獣医心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER インストラクター)/CCRP
●所属:日本獣医麻酔外科学会/日本獣医学会/日本獣医師会/日本動物リハビリテーション学会/動物臨床医学研究所/日本麻酔科学会/日本臨床モニター学会
●主な診療科目:麻酔科/集中治療科
●書籍:『asBOOKS チームで取り組む獣医師動物看護師のためのICU管理超入門』/『as BOOKS チームで取り組む獣医師・動物看護師のための輸液超入門』/『動物看護師のための麻酔超入門・改訂版』 など多数
犬はチョコレートを食べてはいけない。命の危険あり
犬にとってチョコレートは中毒症状を引き起こす危険な食べ物なので、絶対に与えてはいけません。
チョコレートには犬に重篤な中毒症状を引き起こす「テオブロミン」という成分が含まれています。チョコレートの甘さや脂肪分は、犬にとって「たまらない」口触りのようですから、愛犬の目に触れるようなところにチョコレートを置いておいておかないよう、くれぐれも注意が必要です。
チョコレートだけでなく、チョコレートが入っているケーキやクッキー、ココアなども同様に犬の口に入らないよう注意してください。
犬がチョコを食べてはいけない理由|重篤な中毒を引き起こし、最悪な場合は死亡例も
犬は「テオブロミン」を分解する能力が低い
テオブロミンは、心臓の働きを促進して血管を広げ、一部の筋肉エネルギーをアップさせる作用があるといわれています。しかし多量に摂取すると、嘔吐や痙攣、発熱、心臓発作を引き起こす原因にも。これらの悪影響は、人間だけでなく犬や猫を含む動物にもあてはまり、最悪の場合は死亡する可能性もあります。
人間の場合はテオブロミンを体内で素早く処理できるため、それほど心配はありませんが、犬はテオブロミンを処理するのが苦手です。そのため体内に長く留まって、中毒症状を引き起こす可能性が高いのです。
世の中には、さまざまなチョコレートやカカオの加工商品があるので、代表的なものについての危険性を紹介しておきます。
2008年に独立行政法人国民センターの調査結果「高カカオをうたったチョコレート(結果報告)」によると、一般的に市販されているミルクチョコレートには、100gあたり220mg〜270mgのテオブロミンが含まれていて、ビターチョコレートやブラックチョコレートの場合は、当然、それよりもっと多いテオブロミンが含まれています。健康効果をうたった高カカオチョコレートのなかには1000mg以上のものもあります。
また、カカオ豆の胚乳部を「カカオニブ」、カカオニブをすりつぶしてペースト状にしたものを「カカオマス」といいますが、どちらにもテオブロミンが含まれているので注意してください。
ちなみにホワイトチョコレートは、カカオの脂肪分だけ使用されているのでテオブロミンは含まれていません。とはいえ原料のココアバターは油脂なので、過剰摂取は禁物です。
チョコアイス、チョコチップが含まれたパンやクッキーなどチョコの加工品は、使用しているチョコの種類や量を明記していないことが多いですが、原材料に「チョコレート」「カカオ」「カカオマス」などの表示があったら与えないようにしましょう。
危険な量の目安
チョコレートの種類によってテオブロミンの含有量は異なります。一般的なミルクチョコレート(1枚70g)を例に、犬がチョコレート誤食した場合の危険量目安を下記に示しておきます。
犬の体重目安 | 1日あたりの摂取可能目安 |
---|---|
小型(2~5kg) | 16g~40g(1/5枚~1/2枚) |
中型(6~15kg) | 48g~120g(3/4枚~2枚) |
大型(20~50kg) | 160g~1000mg(2.5枚~15枚) |
中毒・アレルギーが考えられる症状|嘔吐、下痢、動悸、興奮、昏睡、痙攣など
◆初期症状
- 口が渇き、水を欲しがる
- 嘔吐、下痢
- 尿を失禁する
- 落ち着きがなくなる
◆神経障害を含む重篤な症状
- 胸を触るとバクバクしている
- 喘ぎ呼吸をする
- 頻尿、多尿になる
- 脈の異常(頻脈、不整脈、徐脈)
- ふらつく
◆危険な症状
- 高熱が出る
- 痙攣する、硬直する
- 失神する
- 昏睡状態になる
症状が出るまでの時間
先述した危険な量の目安はあくまでも一つの目安です。少量でも食べてしまった(食べたことが疑われる)場合には、必ずかかりつけの獣医師に連絡してすぐに対応してください。
犬がチョコを食べてしまった場合の対処方法
自己流の対処は禁物。すぐ病院へ
なお、病院に行く際には、以下の内容をメモしていくと診察及び処置がスムーズに進みます。
愛犬が食べたチョコレートの種類と量
食べてからの経過時間
現在の症状
なんらかの症状が見られる場合は、その様子を動画に収めて医師に見せることをおすすめします。
病院での治療方法
◆聴診、血液検査、心電図
心拍数や脈の状態、内臓にダメージを与えていないかをチェックします。
◆催吐処置
チョコレートを食べて1時間以内なら、胃の中身を吐かせる「催吐処置」を行う場合があります。犬が嘔吐を催しやすい薬剤を使い、犬の体に負担をかけないよう注意しながら行われます。
なお、大量のチョコレートを食べてしまった場合などの緊急事態では、全身麻酔をかけて胃洗浄を行うこともあります。
◆点滴・投薬
症状を改善するために、点滴や経口での投薬が必要になるケースもあります。
犬のチョコレート中毒、後遺症は残る?
犬のチョコの誤食を防ぐ方法
飼い主が与えなくても、テーブルの上など犬の手が届きそうなところに置いてあれば、飼い主が目を離した隙に愛犬が口にしてしまうかもしれません。
愛犬の目に触れる場所、匂いがわかる場所にチョコレートを置かないよう、くれぐれも注意しましょう。チョコレートが材料に入っているケーキやクッキー、アイスクリーム、カカオが原料のココアにも同様の注意が必要です。
犬にチョコレートは絶対にダメ。チョコレートケーキやココアもNG!
文/村田典子
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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