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【ホントにあった犬の事件簿⑩】腫瘍の摘出手術後に愛犬が急死。動物病院を訴えた! 気になる判決は?

ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!

この連載では、過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。

今回ご紹介するのは、大阪地方裁判所で平成28年5月27日に判決が出た事例です。

※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。

お話してくれたのは……渋谷 寛先生

弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。

輸血のミスが原因だとして動物病院を訴えた!

退院させるために行った輸血の直後に、容態が急変

イラスト/macco
ある日、愛犬のパピヨンの食欲が減退し、おなかが張っていると感じたAさん。動物病院を受診すると、検査で膵臓(すいぞう)に巨大な腫瘍があることがわかり、摘出手術を受けます。獣医師からは手術後2~3日入院が必要との説明を受けましたが、Aさんは愛犬の12才という年齢や病状を考えると残された時間は長くないと考え、少しでも長く自宅で過ごさせるために早く退院させ、連れ帰りたいと要望。動物病院側は当初退院を認めませんでしたが、医学的な知識をもち合わせていたAさん夫婦は「貧血の状態を改善すれば連れて帰れるので、輸血をしてほしい」と頼みます。

これを受けて輸血が行われましたが、輸血が終わって約1時間後に容態が急変。そのまま回復せず、2時間ほどでAさんの愛犬は死亡してしまったのです。Aさん家族は、輸血の量や速度が不適切だったために愛犬は死亡したとして、動物病院を相手取り裁判を起こしました。

不適切な輸血によりAさんの愛犬は死亡したと判断された

裁判では、輸血とAさんの愛犬の死亡との因果関係が問われました。審議の結果、Aさんの愛犬は、量、速度ともに基準値を上回る輸血がされたため呼吸不全になり死に至ったと判断されました。裁判所は、容態に適した輸血をすべき注意義務に違反したとされる動物病院側に、AさんとAさんの夫、娘の計3名にそれぞれ11万円の損害賠償などを支払うよう命じました。

判決は……損害賠償など計33万円を飼い主さん家族に支払うよう、動物病院側に命じた

イラスト/macco
愛犬の最期を自宅で看取りたいとの願いから、退院させるために行った輸血のミスが原因で愛犬が命を落とすという、最悪の結末を迎えてしまった今回の事例。ふだんの通院時もそうですが、愛犬の終末医療では、納得がいくまで説明を受け、後悔しない治療が受けられるよう獣医師さんとの関係をしっかりと築いておきたいものです。

参考/『いぬのきもち』2017年8月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco
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