ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成24年9月6日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
自宅の前の丁字路に小型の貨物自動車が進入してきた
幅たった3.7mの狭い道路で起きた事故
事故が起きたのは、民家にはさまれた狭い道。幅3.7mしかない丁字路に、貨物用自動車が進入してきました。愛犬の散歩をしようと自宅を出たAさんは、車がやってくるのに気づき、2頭の愛犬のリードを引いて自宅の駐車場まで下がります。しかし、自動車が通過したあと、道路には、愛犬のうち1頭のポメラニアンが倒れていました。急いで愛犬を病院に連れていったAさんですが、愛犬は腹部の大きな傷がもとで、亡くなってしまいます。Aさんは、慰謝料100万円を含めた135万円あまりを求め、裁判を起こしました。
飼い主さんが犬のリードをたぐり寄せるべきだったと判決
犬がひかれた現場を飼い主さんが目撃していなかったことから、訴えられた運転手のBさんは当初、犬をひいたこと自体を否定していました。しかし、車が通った直後に犬が倒れていたことや、動物病院で、犬の腹部のケガは自動車にひかれたものと診断されたことなどから、裁判所はAさんの愛犬はBさんの車にひかれて亡くなったと認定。ただし、犬が道路に飛び出さないように、リードをたぐり寄せなかったのは飼い主のAさんの過失だったとし、Aさんに事故全体の80%もの責任があると結論づけました。結局Aさんには、裁判所が認定した損害金の32万円あまりのうち、Bさんの過失割合とされる20%分にあたる、約7万円のみが支払われるべきとされました。
判決は……賠償金が約7万円に減額された!
まわりを十分に注意していなかったり、リードで愛犬の動きをコントロールできなかったりして、大切な愛犬が事故にあうのはとても悲しいことです。とくに狭い道や車通りの多い場所を散歩するときは、愛犬のリードを短めに持つように心がけましょう。また、日ごろから散歩中には「ツイテ」の練習もして、愛犬の安全を守りましょう。
参考/『いぬのきもち』2015年7月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣